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596.やられる前にやる

 そうとわかれば話は早い。

 このダンスホールの偽ルディアたちは一旦無視することに決めて、一度九十階まで戻ることにした一行。

 しかし九十階は制圧したはずだったのに、まだ見落としていた場所があったのだろうか?


(そもそも、ここに来るまで五十階から全部の階層を制圧したのを確認してから一階層ずつ上に上っているはずなんだが……)


 まさか自分たちの知らない隠し部屋などがあったりするのだろうか?

 そんな突拍子もないことを考えてしまったルギーレだったが、それはどうやら当たってしまっていたようである。


『……あれっ、ここの壁の向こうからものすごい魔力が感じられるよ!?』

「本当ですね。今まで立ち塞がってきた私の偽者たちを倒しながら進んできましたが、もしかしてこの壁は……」


 九十階の外れに存在している、一見何の変哲もない灰色の色褪せた石造りの壁。

 それがシュヴィリスとルディアにとっては違和感を覚える場所となっていた。


『ねえエルヴェダー、タリヴァル、この壁の向こうに何かあったっけ?』

『えー? 俺様はこんな壁自体知らねえけどなあ』

『我もだ。恐らくこれはニルスやディルクが造ったんじゃないのか?』


 そういえば最初にこの階に到達した時のことを思い出してみれば、この辺りはルギーレがエターナルソードとレイグラードで敵を一掃してくれていたので、壁の向こうから溢れ出てくる魔力を感じられなくて何も報告がなかったとしても別段不思議だったとは思わない。

 そして今、この階にも姿を見せてきているルディアの偽者たちがこの壁の向こうから出てきているのではないのかと予想した一行は、思い切って壁を破壊することにした。


『よぉーし、ここは俺様の出番だぜっ!!』

『頼んだぞ』


 七匹のドラゴンたちの中でもその力に関しては一、二を争うエルヴェダーが、自分の愛用している槍の先端に魔力を込められるだけ込める。

 するとその槍の先端がぐわりと一気に燃え上がり、炎を纏った状態で攻撃ができるようになった。


『ふうううううううう……はあああああっ!!』


 気合いの掛け声とともに、壁に向かって助走をつけたエルヴェダーはそのまま床を蹴って小さめに跳躍。

 槍を振りかぶったその上半身を大きく弓なりに反らせ、跳躍した頂点に辿り着いたところで全力でその槍を壁に向かって突き刺した。


「うっ……!?」

「くっ!!」


 近くでそのエルヴェダーの一連の動きを見ていたルギーレとルディアが、思わず腕で自分の顔を覆いながら後ずさりしてしまうのも無理はなかった。

 なぜなら槍が突き刺されたその壁の部分を中心にして、ブワッと灼熱の衝撃波が生み出されたからであった。

 そして衝撃波に続いて、槍が突き刺された場所を中心にピシピシと放射状に壁が割れていく光景が他のメンバーたちの目の前で展開される。


『うわー、さすがはエルヴェダーだねえ。力なら僕なんか全然敵わないもん』

「すげー……」


 シュヴィリスとルギーレが見守っているそんな目の前で、放射状にひび割れたその壁のヒビがある一定のところまで広がった次の瞬間、ガラガラバラバラと音を立てて壁が崩れ落ちた。

 焦げ臭い臭いも漂っていることから、いかにそのエルヴェダーの一撃が大きい衝撃を与えたのかが窺い知れるものだったが、その一撃よりも衝撃が大きな光景が壁の向こうには広がっていたのである。


『……げえっ!?』

「えっ、どうした……」

『逃げろっ!!』


 崩れた壁の向こうに「それ」を見てしまったエルヴェダーは、今までの動きとは一変して焦りの色を滲ませた声と表情でメンバーたちに指示を出す。

 それもそのはずで、崩れた壁の向こう側には大量のルディアの偽者たちが待機していたからであった……。


「よし、さっさと逃げるぞ!!」

『威勢のいいエルヴェダーだけど、さすがにあんなに焦った表情は僕は見たことはないなあ』

『我もだ』


 エルヴェダーは強い相手ほど燃える性格であり、並大抵の敵なら伝説のドラゴンというだけあって簡単に負けないほどの実力を有しているのも確かである。

 しかし壁の向こうにいたのは、今までダンスホールを皮切りに相手をしていたルディアの偽者の新たな増援たちだったのだから、さすがにこの状況で威勢のいいことを言ってはいられなかった。

 だからこそ、ここはタリヴァルの出番である。


『仕方がない……今が一番の好機だ。下がっていろ!!』

「タリヴァル、何を……?」

『メガ・フラッシュ!!』


 両手に魔力を集中させ、胸の前で重ね合わせたその両手の手のひらを壁の向こうから出てくる寸前のルディアの偽者たちに対して発動する。

 光の魔力を纏ったエネルギーボールがその両手から発射され、壁の向こうに吸い込まれたその瞬間、一気にエネルギーボールが破裂してまばゆい光に一瞬で包まれる周囲。

 そしてその光が三十秒ほど続いた後に消え去った壁の向こう側では、ルディアの偽者たちが全員何もできないまま溶けて消えてしまっていた……。

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