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リスタート2日目

別作品経由で読んでくださる方が増えたので、続きを書いてみました。

執筆中なので更新はゆっくりになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。


感想はありがたく拝見しています。ですが返信にすごく時間をかけてしまうので、執筆優先にしております。一段落しましたら書きますのでしばしお待ちくださいませ…!

次の日。

貴族院へ向かう馬車に揺られながら考える。


(昨日は全く眠れなかった……)


シリル様の言葉。誰によってここに戻されたのか。 

同じ行動、違う結果。

何よりシリル様のあの愛しさに溢れんばかりの眼差し——

あんな眼は見たことがない。いや、見たことはあるが自分に向けられたことがない。ああいう眼差しは、全てエリーゼ様が独占していた。


何が起こっているのだろう。

何が起こったのだろう。


堂々巡りの疑問が頭を占める。


大きくため息を一つ。あれこれ考えていても分からない。とりあえず、前を向いて進まなければ。

前の人生と今。違うところはあれど、生きるしかないのだ。

貴族院に入学するタイミングに戻ってきたことにも意味があるだろうし。


貴族院は週に一回登校の一年制。

貴族はマナーを含めた勉学を家庭教師で全て履修しているので、貴族院は基本的に勉学ではなく社交の場である。

授業らしい授業は、女性は家政で男性は園芸だけだ。女性はお茶会用のお菓子や飲み物の準備、男性はお茶会に飾ったり恋人に贈ったりする花を育てるのである。どちらも専門の職人がお膳立てをしてくれているので形式的なものに変わりはないが、それでも自分のために相手が手をかけてくれたという事実は嬉しい。もちろん、もらったことはないけれど。

前回、エリーゼ様は2か月後に入学されたはず。昨日もお名前を聞くことがなかったから、多分ここは変わらないだろう。前はほとんど関わりがなかったけれど、今回は関わっていくほうが良いのかしら?でも、そうなると必然的にシリル様と関わることになるわけで……。 

シリル様への愛情は正直枯れている。エリーゼ様とまた恋に落ちるなら距離をとって、今度こそ自分の幸せを考えたい。

でも、昨日のシリル様のあの態度を見ていると、つき離せる自信がない自分の中途半端さに嫌になる。

もう一度、大きく息を吐く。今度はため息ではなく、深呼吸だ。


よし、と自分に気合を入れた時、御者より到着の合図が入った。

御者の手を取り馬車から降りると、笑顔のシリル様が立っていらっしゃった。




「今のリリスの好きな花を教えてくれる?」

「今日のお茶会楽しみだなぁ。もっと一緒の時間が取れるといいのに」

「帰りの馬車までエスコートさせてね」

「次に会えるのは来週か……。執務がんばるから、ちょっとでいいから会いに来てもらえないかな?あ!もちろん無理にとか命令とかではないから!ただ、私が会いたいだけなんだ」


朝のエスコートから始まり、ドレスとアクセサリー選び、ダンスのパートナーなど男女で動くものはずっとついてくる。

 ドレスやアクセサリー選びは審美眼や価値が分かるかのテストも兼ねているので、イミテーションから高価なものまで取り揃えているのだが、シリル様が選んだのは最高級のものばかりで講師陣が褒めたたえていた。しかも、シリル様の目の色だったりするのものだから生暖かい視線を周りからもらってしまった。

 私もできるだけ良いものを、と思って選んでいたのですが、「リリスの色がいいな、私にとってはそれが何より価値が高い」と言うのでそこそこのものを選ぶことに……。周りの砂糖を吐きそうな顔にいたたまれない気持ちになりました。


 誰ですかこの人?

 え?何か乗り移りました?

 あ、中身違いましたね。シリル様であってシリル様でない……。なんだかもうよく分かりませんわ!


 帰りの馬車ではぐったりしてしまった。なんというか、落差がすごい。

 私の一言一言に嬉しそうに微笑むシリル様。

 一度は本気で好きになった方なので、好意を向けられて嫌な気持ちにはなりません。でも同時に虚しく、とてもみじめになるのです。

 私があなたの愛を欲しかったのは、今じゃない、あの時なのです……。


 でも、シリル様にとってはあの状態が通常なのだろう。

 私が戸惑うたびに、寂しそうに笑ったり「気持ちを押し付けて申し訳ない」としょんぼりされたりすると申し訳なくなる。


 いや、私は悪くないのだけれども!

 駄目だわ、本当に情緒が不安定。

 次にお会いするのは来週だけど、お誘いいただいた王宮には遊びに行きたい。

 アンリやレイにも会いたい。たとえ共にいた記憶がないとしても、顔を見るだけで元気がもらえるだろう。

 アンリもレイも使用人としてのラインをきっちり引いてくるタイプなので、最初はとても慇懃だった。孤独感に耐えかねて、泣きながらアンリとレイに「家族のように接して」とお願いしてからやっと距離が縮まったのが懐かしい。シリル様の訪れのない部屋でも、穏やかに過ごせるようになったのは彼らのおかげ。幼馴染だという二人は会話のテンポが非常に良くいつも聞いていて笑ってしまった。ある時、うっかり私にツッコミを入れた時のレイの顔といったら!いつもクールな分、焦ったあの表情が今でも印象に残っている。

 思い出せば思い出すほど、あの時私が自死を選ばずにいられたのは、2人のおかげなのだと痛感する。


 今度王宮に行こう。シリル様のところに行けば、2人も必ずいるはず。

 ふふ、シリル様をついで扱いするなんて、前の私じゃ考えられないことね……。


 馬車の窓の外。流れる景色のように、これからの未来が変わることを強く願った。

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