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シリル様に愛された記憶をどれだけ頭のなかで探しても、欠片すら見つからない。


更に時の石などという存在もにわかには信じられない。

一度だけとはいえ、未来を変えることに繋がるような力を持つものがこの国――いえ、人間の管理下にあるなんて。

状況は分からないけれど、王子が使おうと思えば私利私欲で使えるなんて!


もちろんそのような重大事項を、婚約者とはいえ侯爵令嬢が知らないのは当たり前。

だからシリル様の話を嘘だと断じることはできないけれど……。

シリル様の愛情をストレートに感じる度に、過去がフラッシュバックしてしまい、嘘くささを感じてしまう。

そんな凄い力を持つ石を、私と再び過ごすために使うなんて。

申し訳ないけれど、信じられない。


とりあえず、話を聞くことでしか情報を得られなさそうです。


「現状の確認をさせてください。シリル様の記憶では、この時点で私とはどういう関係でしたの?」

私の記憶では、入学式の時点で私たちの間には溝どころか谷ができていた。

さて?


「以前の私は、リリスに対して政略的な婚約者という意識しか持っていなかった」


あら、意外。


「しかし、リリスは私のために、慣れないお菓子作りを頑張ってくれた。茶会で食べる度に愛情を感じたものだ。何より、私と目があう度に嬉しそうに微笑む顔の美しさといったら!

そのような何気ない時間が積もり、これ以上ないほど愛しくなったのだ」


――成る程。


これだけではまた確定できないけれど、全く別の記憶というよりは、結果が違っているように感じる。


お菓子は家政の時間に作った。

授業後の婚約者がいる者同士が集まるお茶会で、シリル様に食べて貰いたくて心を込めたスコーン。

一口も食べられることなく、私の気持ちと共に残されていた。

衛生と危機管理上、作ったお菓子はその場で処分される。

シリル様が愛情を感じたというお菓子は、私にとって受け取られない愛情の象徴的な存在だった。


目が合う度に微笑む?

残念!目なんて全く合いませんでした。


シリル様が別の私との思い出を語る度に、私の心は冷え込んで行く。

愛しくなったのだ、と言われても、冷静に自分の中の記憶との齟齬を分析してしまう。


やはり、私とシリル様は過去を共有していない。

……自分が愛されていなかったのが何よりの証拠というのが悲しいところですが……。


伝えなくてはいけない。

シリル様が愛しているのは、私ではない私なのだと。


立ち上がり、ソファーの対面に座り直す。


私の急な行動に、戸惑い顔のシリル様。

そしてタイミングを見逃さず、美味しい紅茶をサーブしてくれるアンリ。


――タイミングって、本当に大切。

喉が乾いていると、どんなに冷めていても飲みたくなるし美味しくも感じる。

でも、そうでなければ、何の感慨もわかないの。


紅茶から視線を上げ、シリル様を見る。


「シリル様、私からもお話しすることがあります」


伝えなくてはいけない。


私が、あなたを愛することはないということを。

投稿文字数が安定せずに申し訳ありません。

今後の更新は、今回くらいの文字数になりそうです。


読んでくださりありがとうございました!

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