練習?鍛練?修行!?
遅くなり申し訳ございませんでした。
皆さんお元気ですか?私は元気です。
因みに、今私は帝国のすぐ近くにある、迷わせの森という森にいます。迷わせの森といっても、奥に入らなければ迷わないので大丈夫らしいです。なんでも、奥には精霊がたくさんいるために人間が入ってこないように結界が張ってあるので、それに触れると迷ってしまうのだとか。まあ迷うといっても、数時間も歩けば森の外に出られる親切設計らしいですが。そんな森で、俺はとっても簡単な薬草採取の依頼を受けてここにいます。危険な魔物とかもいないので、薬草採取のついでに魔力増強や無属性魔法の訓練をしていたのですが……………………
今、俺の身体にはところ狭しと精霊が引っ付き、寝息をたてています。胡座をかいていたのですが、そこには迷彩柄の犬?が気持ち良さそうにこちらも寝息をたてています。はい。全く動けません。
というか、
「どうしてこうなった……」
こうなった理由を話すために時間を少し戻そう。
倒れたあの日から一月程の時間が流れたぐらいだな。
ギルドからの依頼として異世界の料理を作り続けていたら、いつの間にか〈未知の料理人〉という二つ名がついていて驚いたもんだ。
「3番テーブル、オーダー入ったっすー!ラストオーダーっすよー!」
この娘は厨房を管理している人の内1人。スーちゃん。赤茶色の髪をした元気いっぱいな女の子だ。背は低くくて愛らしい。いい位置に頭があるのでついつい撫で回してしまう。
「あいよ!オーヴァン!トンカツの注文だ!そっちは頼んだよ!」
この人も厨房を管理している人だ。名前はソーさん。スーちゃんのお姉さんらしく、同じ赤茶色の髪をしている。因みに、俺は密かに姉御と呼んでいる。本人に言うと、少しむくれられるのだが。
「うっす!任されました!」
ささっとトンカツを揚げ、盛りつけをスーさんに任せる。
この一月、この二人に俺の料理を教えていた。二人共飲み込みが早く、あっという間に覚えてしまった。調味料各種は俺がいないといけないが。まあ、この辺でそろうものでも結構作れるものがあったので、大丈夫だろう。そっちは完全に二人に任せているし。
「うっし!できたよ!スー!持ってきな!」
「わかったっすー!」
スーちゃんが意気揚々とトンカツを持っていく。これがラストオーダーだったので、俺たちは厨房を片付ける。
「やー!ししょー!今日も1日、お疲れさまっすー!」
スーちゃんが元気よく俺を労ってくれる。ししょーとは俺の事だ。料理を教えていたら、いつの間にかししょーと呼ばれていた。
「今日も今日とてよく働いたね。オーヴァンが来てからというもの、忙しくてしょうがないよ」
ソーさんが皮肉ってくるが、その顔はどこか嬉しそうだ。ソーさんはいつもそんな感じで俺を弄ってくる。お陰で皮肉が皮肉に聞こえない毎日だ。
「いやいや。二人がもともと持っていた集客力を俺がちょっと後押ししただけですよ?」
そう言いつつスーちゃんの頭を撫でる。スーちゃんは気持ち良さそうに目を細めた。
ここ1ヶ月ほんとに忙しかった。客はひっきりなしに異世界の料理を欲しがるのだ。この二人がいたからなんとかやってこれたが、いなかったら後3回は倒れていた自信がある。
だがそのお陰か、このギルドに俺を知らない人はいなくなった。異世界から来たことは隠しているが、俺を思ってかいろいろと便宜を図ってくれる場面が多くなっていた。
俺が薬草関連の事を知りたいと言うと、料理を対価にいろいろ教えてもらった。中には調合できる人もいたのでそれも教えてもらったが、料理を作る気持ちで作っていたら、品質最低の薬草からなかなか品質のいいポーションを作り出したのは笑ったが。補正恐るべし。お陰かどうか知らんが、スキルに〈調合〉が増えていた。まあ、そのスキルも料理を作る方に駆使していたわけですが。
後、ギルドのなかだけでなく、外にも少しだけ名が知られていた。冒険者達が旨いメシが食べられるということで、依頼人を引き連れてギルド内で食事をとっていたからだ。商人にスカウトされた時は正直困ったもんだった。周りが反対したから引き抜かれなかったが、俺の料理も捨てたもんじゃないな。
ふふふ。このまま有名人になるのも悪くないかもしれないな。
スーちゃんの頭から手をはなし、さっさと片付けを終えさせる。片付けを終えたら皆で食事だ。いや~腹がへった。
専ら1日のほとんどをギルドで過ごすリースさんも呼んでくる。厨房の仕事が終わったらこの四人で食事をとるのが通例になり始めた。
このまま有名人になったら、どんなどこで仕事するんかね?王宮料理人?はあの第一王女に作りたくないから却下だな。ここで腕を磨いて、スカウトされた他の場所でやるってのもありだな。
そんな事を考えながら料理をテーブルの上に並べる。リースさんも来たので皆でいただきますと言ってから食べる。食事中はとりとめもない話で盛り上がった。
食事をとり終え、食器類を片付ける。食後は皆でホットミルクを飲みつつゆったりする。ゆったりしながら先ほどの考えが頭に浮かんでくる。
やっぱり、他の場所で料理をするのもありだな。そこでまた料理を教えて、また別の場所に行って、そこでも教えて。楽しいかもしれんな。
よし!決めた!やってやるぞ!料理王に俺はなる!!!
「じゃ……」
頭のバンダナをとり、振りかぶる。
「ねぇぇだろぉぉぉ!!」
そのままおもいっきりバンダナを叩きつける。周りは俺の奇行に驚きを隠せないようだ。たが、関係ない。
「違う。違うぞ。なんだ料理王って?海賊じゃねぇんだぞ!」
頭を抱えて悶絶する俺にリースさんが優しく声をかけてくる。
「ど、どうしたの~?いきなり叫びだして~?」
「リースさん、俺って冒険者ですよね!?ここにきて一月、一度たりとも冒険者らしい行動とれた覚えないんですが!?」
俺がすがりながらそう言うと、リースさんは乾いた笑いをこぼしながら目を反らす。あれ?なぜ反らされた?
俺はリースさんに詰め寄る。すると、リースさんは観念したように溢した。
「だ、だって、普通の冒険者と同じ事させてたらオーヴァン君どっか行っちゃうでしょ~?私達のオアシスがなくなっちゃうのは困るもの~」
うおい!?
「そんなこと言わずに俺にも冒険者らしい依頼を!このまま低ランクのままなのは嫌ですよ!」
「あっ!それなら大丈夫~。オーヴァン君なら十分依頼をこなしたからEランクには上げられるわよ~」
「依頼って料理作ってただけやないですかい!?俺は色んなとこに行きたいんですよ!!その為の知識は先輩方からいろいろ教えてもらいましたが、実戦できなきゃ意味ないんです!だから──ドウフッ」
さらにヒートアップしそうな俺の腰に衝撃が走り、言葉がつまる。
なんだと思いそちらを見ると、スーちゃんが俺の腰辺りにしがみついていた。
「ししょー…どっか行っちゃうの?」
スーちゃんは涙目で俺を見上げ、しがみついてくる手にも力が入る。まるで、俺を逃さないようにしているようだ。
卑怯だろこれ。可愛い妹みたいな子にこんなことされたらたままったもんじゃない。
俺はそんなスーちゃんの頭を撫でながら諭すように答える。
「ごめんよ。でも、俺にもやりたい事ってのがあるんだ」
スーちゃんを腰からはがし、目線を合わせるようにしゃがむ。
「だから、ごめん」
目線を反らさず真っ直ぐ向ける。スーちゃんはそんな俺に困った様な顔を向ける。言いたい事はあるはずなのにそれを飲み込んでいるのだろう。幼いのに凄い子だ。
俺はそんなスーちゃんの頭を撫でる。
「まあ、出ていくと言っても、まだまだ先の話ですがね。スーちゃんやソーさんにおしえなきゃならない料理はありますし。俺自身の腕っぷしも鍛えなきゃですし」
それを聞いたスーちゃんは顔を綻ばせる。ソーさんやリースさんもそれを聞いて安心したようだった。
「だったら、早速明日からやってみる~?近くに迷わせの森ってのがあるんだけど、そこで薬草の採取依頼があるの~」
「迷わせの森っすか・・・」
なんか名称からヤバイ雰囲気がするんだが。しかし、聞いて見るとなんとも親切な森だった。ちゃんと返してくれる上に、魔物もほとんどいなくて安全。さらに高品質な薬草が取れるとか。そういや、先輩方の話の中にそういう森の話があったな。成る程、それだけ安全なら初級冒険者向けの依頼になるわけだ。二人もそこなら大丈夫と安心していた。
俺は早速その依頼を受ける事にした。これでやっと冒険者らしいことができるな。
そして、俺は件の森に早速いる。
昨日の晩はわくわくしてなかなか寝付けなかった。どんな冒険が待っているのだろうと思っていたのだが、本当な簡単に薬草を見つけてしまった。何の面白みもなかったのでカット。
早々に依頼を終えてしまって時間に余裕ができたので、身体能力強化の練習をすることに。
何度か試すが、やはり魔力の通りが悪い様な気がする。単に俺が慣れてないだけか、それとも素質が無いのか。
まあ、結論を出すには早いな。こういうのはじっくりゆっくりやった方がいいって先輩方も言っていたし。
俺はその場に胡座をかいて座り込み、目を閉じる。そして、自分の身体に流れる魔力の流れに集中する。どの辺が通りが悪いのか、どの辺が流れが滞っているのかを意識する。最初はまるでわからなかったが、徐々にだが違和感を感じるところを見つけることがで来はじめた。
それでもやはり流れを自力でどうこうすることは今の俺には無理そうだ。なので、ダメ元で固有スキル:回転乃力の力を使ってみた。身体の中の魔力を循環、つまり“回す”訳だからできないかな?という軽い気持ちで使ってみた。結果は驚きの成功。魔力は簡単に俺の身体中を回り始める。簡単過ぎて逆に心配になるレベルだ。
まあ、俺の能力だし大丈夫、だよな?
そう思い目を開けると、すでに空は茜色になり始めていた。どうやら思ったより集中していたらしい。かなり時間が経っている事に気づけなかったのだから。
俺は急いで帰ろうと立ち上がろうとするのだが、身体中に違和感がはしる。なんか、重い。
自分の身体を見てみると、俺の身体の至るところに精霊がしがみつき、寝息をたてているのを発見した。組んだ足の中には迷彩柄の子犬?までいる始末。そいつも寝ているが。
ドイツもこいつも幸せそうに寝ているので起こすのが忍びなくてしょうがない。お陰で俺は動けないでいる。
「どうしてこうなった………」
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誠にありがとうございます!




