グロウアップ
チュンチュンという鳥の声と朝日を受け、目が覚める。目を開けると、そこは知らない部屋だった。
「知らないてn・・・いや、よそう。天丼じゃないんだから」
それにあれは異世界転生のテンプレセリフだ。異世界転移の俺のセリフではない。
そう思いながら辺りを見渡すと、質素な作りながら頑丈そうなベッドがいくつか見受けられた。
はて?ここはどこだろうか?こんなとこで寝た記憶はないんだが?
頭をひねり考えてみるが、俺の記憶にあるのは厨房にいたとこまでで終わっている。何度思い出して見ても調理しているとこしか思い出せない。
「あっ。気がついた~?よかった~」
頭を捻っていると、ドアを開けてこちらを見ているリースさんがいた。やっぱりポヤポヤとした雰囲気だ。
というか、気がついたとか言ってなかったか?なんだ?それにポヤポヤとした雰囲気は変わらないが、どこか不安そうな顔をしている。
「リースさん?気がついたとは?それに何かあったんですか?少し不安そうな表情をされていますが?」
心配になった俺は直接聞いてみることにした。すると、驚いたような表情をしたあと呆れたようにため息を溢した。
「もしかして覚えてない~?あなたどうしてか知らないけど、HPが一桁になって倒れたのよ?」
「えっ!?」
倒れた・・だと!?
「またやらかしたのか俺は」
「ちょっと待って!またってどういうことかしら~?」
リースさんが笑顔で迫ってくる。手は俺の肩をがっちり掴み、寒気が走る。リースさんは笑顔なのだが、ナニコレコワイ。
リースさんの笑顔にびびった俺は元の世界でも倒れたことを明かした。リースさんは俺が異世界人ってのを知っているから言っても問題ないだろう。
倒れた理由だが、上司からの仕事+自分のこなさなきゃならない仕事をやっていたら、いつのまにか3徹休憩なしというブラックも真っ青な仕事をしていた。まあ、無理が祟り5日目の朝に同期のやつが来た時に厨房で倒れている所を発見されたのだが。因みに病院には行かず、同期に起こされた後、こなさなきゃならない仕事だけやって帰った。目覚めて最初の一言が「しまった!仕事が!」だったのは、流石に自分でも引いたが。
「元の世界でも似たようなことしてたのね~。仕事しすぎよ~?」
仕方ないだろう。頼まれたら断れない優柔不断な男なのだから。日本人ならわかっていただけるはずだ!
えっ?わからない?
まあ、ワーカーホリックな気があるのは否定しないが。
「もう大丈夫だと思うけど、一応確認しておきましょうか~」
えっ?なにを?
「あなたの健康状態よ~。私は〈鑑定眼〉ってスキルで相手のステータスを見れるの~」
なんでも、人に使えばHPやMPの残量等や称号がわかるだけでなく、状態異常にかかってないかとかもわかるらしい。魔物に使えばアナライズみたいなことも出来るとか。
ほう。そんな便利スキルが存在するとは。ぜひ欲しいな。
「それでは御開帳~・・・えっ?」
リースさんは俺を見たまま固まってしまった。
どうしたのだろう?…まさか!?俺の低過ぎるステータスに絶句しているのではなかろうか!?
嫌~な感じがしたので、自分でもステータスを見ることに。
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名前:オーヴァン
HP:382/382
MP:400/400
称号:薄幸青年 異世界を渡る者 勇者(笑) 主神に土下座させた者 主神の友 異世界料理人 異常精神論者
固有スキル:異世界全言語習得 成長限界突破 回転乃力
スキル:HP変換
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なんじゃこりゃ?いくらなんでも成長し過ぎじゃなかろうか?つか、いろいろ聞きたいことがあるがその前に。称号の確認だ。
異世界料理人:異世界からきた料理人。つくる料理に補正が入る。
ほう。なかなかな称号ではないだろうか。料理に補正がはいるのもいいな。うまい食い物は人生で欠かすことの出来ないものだ。さて、次の称号だ。
異常精神論者:どんなに辛くとも、勇気(笑)と根性(本気)と気合い(迫真)の精神で乗り切る者。それ以外なにもいらない。精神系スキル無効
いやいるよ!!そこまで異常な精神論なんて持ってないよ!てか、なんで勇気だけ(笑)なんだよ!?確かに勇気なんて持ち合わせていませんけどね!!
・・・自虐は止めよう。言ってて虚しいだけだ。それに、多分だが効果はこちらもいいものなはずだ。精神系スキルといのが何かよくわからないが、多分読心術とかが無効になるんだろう。
というか、俺は固有スキル:成長限界突破の恐ろしさを今更になって実感した。このスキル、そういえば成長限界だけでなく、成長速度も限界突破させるのだ。
だからといって、成長し過ぎではなかろうか。前のステータスの倍以上あるぞこれ?なんでこんなに成長してんだ?
あれか?死にかけた所から復活したからか?俺はいつの間に野菜人的戦闘民族になったんだ?
「嘘。倒れた時に見たステータスより高い・・。どういうこと?」
ポヤポヤとした雰囲気がなくなり、俺を見る目がなんか怖い。畏敬というか殺気?寒気もする。
なんかリースさんにそういう目をしていて欲しくないなと思った俺は包み隠さずスキルのことを話す。この人は信頼できそうだし、大丈夫だろう。
「なるほど。神より与えられたスキルだったのね。道理で〈鑑定眼〉で見えなかったわけだわ~。それにまさか固有スキルが3つとはね~。将来性を考えたら破格の新人だわ~」
将来性については同意だ。そういう能力にしたからな。しかし、見えないってのはどういうことだろう?神様補正か?
「それより、あまり人にスキル事言っちゃダメよ~。ただのスキルと違って、固有スキルってのはかなり特殊なんだから~」
固有スキルが特殊?そういえば、たしかにスキルと固有スキルってのが別れているな。これのどこが特殊なんだろうか?
聞いてみると、人が持つ固有スキルってのはかなり特殊なスキルらしい。血によって受け継がれる血系、特殊な行動により神様や世界から与えられる享受系、の2つがある。
血系は王族なんかがいい例だ。その特殊な血筋であれば持つスキルだが、享受系は違う。神様や世界から認められなくてはならない。それがどれほど難しい事かはよくわかる。
だから、固有スキル持ちってのは妬み等の対象になりやすいのだとか。そして、固有スキルは個人で大抵一つ。それを3つも持つ俺が異常なのだ。
これは確かに黙っておくべき事柄だよなあ。それを教えてくれたリースさんには感謝しなきゃな。
その旨を伝える。
「別に構わないわよ~。ああー、でも交換条件って訳じゃないんだけど、お願いがあるのよ~?」
リースさんは物凄く申し訳なさそうにしている。表情からもそれが読み取れるということは相当な事柄なのでは?
「えっとね~。倒れさせる位働かせておいてあれなんだけど、あなたが暇だったり、やる気がある時で構わないのだけど、また料理を振る舞ってくれないかしら~?今回の件で皆自重するとは思うけど、私も含めてあなたの料理のファンになっちゃった皆が、またあなたの料理が食べたいって言ってるのよ~。お願いできないかしら?」
おおう。皆本当に竜田揚げ好きだな。つか、揚げ物系が無かったのかもな。これはトンカツとか天麩羅とか唐揚げも作った方がいいな。油さえなんとかできれば簡単に出来るし。
いや、待てよ。揚げ物でこれなら蒸し物とかも受けるか?肉まんとか片手で食べれるし、焼売なら十分つまみにもなるな。魚があれば蒲鉾とかもやってみたいな。
1人そう構想を練っていたら、リースさんが心配そうに俺を見ているのに気付いた。返事をしていないから心配させちゃったな。
「そ、それで、どうかしら~?本当に暇な時でいいんだけど~?報酬もきちんと払うし、売り上げからもあなたに分配するわ~?」
「ああ、すみません。次作る料理の構想を練っていたら返事するの忘れてました」
そう言うと、リースの表情がパアッと明るくなる。
「それじゃあ!」
「はい。報酬もきちんと払って頂けるならお受けしますよ。ただ、また倒れる位までは勘弁してもらいますが」
「もちろんよ~!それは私からきちんと“いいきかせ”たから~!」
うん。なんだろうかこの悪寒に近い気持ちは。本当に言い聞かせたのか?もしかして肉体言語だったりしないよな?まあ、そこは自業自得?っとことで。
俺はこの日から厨房に入り浸ることになる。
料理は称号のお陰でさらに旨くなった上に、誰も食べたことのない料理を次々と作り出す俺を、誰がつけたか知らないが〈未知の料理人〉なんて呼ばれることになっていた。
遅くなり申し訳ありませんでした。年末はさらに忙しくなるので、さらに遅くなるやもしれません




