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エピローグ
蒼海が彼方まで続いていた。波間では水面が太陽の光を反射して眩くきらめいていた。海上には、時折、魚の群れが飛び跳ねるように泳いでおり、空には渡り鳥が翼を広げていた。
蒼海の一点で、中型の帆船が白波を引いていた。そして、その揺れる船の船室に一人の男が横たえられていた。
横たえられた男は非常に優れた体格をしていた。男の短く刈り込まれた黒髪と、下あごを覆う無精ひげが粗野な印象を与える。そして、その足には大きな足かせが付けられていた。
奴隷だろうか。
彼の肩口には包帯が巻かれており、体の何処に目を向けても治療の後が生々しかった。
深く繰り返される呼吸だけが、彼が生きていることを示していた。
意識は無いのだろうか。しかし、彼の目からは不意に一筋の涙が頬を伝っていった。いったいなにが彼を悲しませているのだろうか。
彼は深い眠りの中、最後に語りかけられた言葉を思い出そうとしていた。
とても大事な言葉だったはずなのに、その言葉は彼の記憶に溶けて、そして、どこかに消えていった。
彼は深い後悔を抱いたまま、優しい波に抱かれて、遥かな海を渡っていった。




