72 『進○の巨○』もどきの製作
……さてと。
フィッツジェラルド公爵家の騎士団は追い払ったけれど、防御は万全とはいえないことが分かった。
正直、公爵家の騎士たちを舐めていた。
兎ゾーンまで到達できる人はいないと思っていたのにな。
もしも鍛え抜かれた王国の正規軍だったなら、かなりの人数が塀まで到達していたかもしれない。
私の、「まあ、こんなもんかな」という想定が甘甘だったせいで、村への侵入を許すところだった。
ちょっと気を引き締めて防御計画を練りなおさねば。
巨像の設置場所は、馬車が通れる広さを確保していたけれど、人間一人がギリギリ通れる狭さにしておこう。
おデブちゃんは通れないくらいでいいかも。
設置数をうーんと増やして密度を高める。
とはいえ、商売関連で馬車を通す時にいちいち移動させなくて済むように、門から続く路上にある巨像は、車の侵入防止のポールみたいに地中にしまえる仕様にしておこう。
そしてもしもの場合に備えて、本当に本当に最後の最後の手段として、攻撃力を致死レベルまでアップできるようにしておく……?
さすがにそれはものすごく嫌だけど。
でも嫌なのは前世の私であって、この世界で生き抜くためには必要なことだと私の中のシャーロッテちゃんは言っている。
まあ実装はするけれど、どこまでやるかはその時に決めることにしよう。
そうなると、物理的な攻撃だけでなく魔法による攻撃にも耐えることができて、なおかつ人間を圧倒的なパワーで蹂躙できる兵器を保有しておきたくなる。
ああいう場合はこうして、こうしたらこう! みたいに連想していくと、塀の外で、巨像の攻撃で転がっている人間とかを遠くへポイっとできるような巨人に行き着く。
火魔法を浴びても燃えにくい素材で、土魔法で足元を固められても、ぬかるみから「えいっ」と足を上げられるような巨体兵器。
元々塀は、中に巨人を格納するイメージで作った訳だし。
そんじゃ早速作りますか。
さすがに真っ裸の巨人を作るつもりはない。
そんなことをしたら私の常識とセンスが疑われる。というか正気じゃないと思われちゃう。
だからって騎士みたいな格好は嫌。
そこらの平民の格好をさせると敵にみくびられそうだしな。
…………。
……いっそ小人の姿にしちゃう?
……いいんじゃない? かえってシュールでいいかもしれない。
表情は笑顔で固定だね。その方が怖さが増すと思う。
小人たちには、自分の姿をそのまま巨大化するようオーダーすればいい。
おっとっと。
いきなり、ぼすんぼすんと巨人が村の中に現れたら村人たちが失神しちゃう。
どうしよっかなー。
人目に触れないように作らせて、最初から格納された状態にしておく?
でもなぁ。
いざという時には出動させるんだから、巨人が動き回る様子を見慣れておいてもらわないと困る。
巨人が壁のドアを開けて一斉に出てきた時、そこらじゅうで村人に倒れられても困る。踏んじゃって歩けないよ。
ああいうドデカいモノを受け入れてもらうには、どう説明したらいいんだろう?
神の使徒? ――には見えないよなぁ。属性も不明だし。
そもそも、ここの村人の信仰心はよく分からないし。
巨人て、この世界のおとぎ話にも登場していないんだよねぇ。
……うーん。
……うーん? じゃあ、いっそ新設する?
この村発祥ってことにすればいいかも!
何かのイベントの象徴的なモノにすればいい。
この村独自のお祭りを作っちゃおうか?
非常事態を除けば、一年に一回、そのお祭りの時だけ出てきて村人と触れ合う『聖なる巨人』たち。
ふっふっふっ。
そうと決まれば、アルフレッドに言って、ヒッチからみんなに周知させよう。
◇◇◇ ◇◇◇
「……は?」
アルフレッドめ! このヤロー。
私の壮大な計画を聞いた第一声がそれ?
しかもその顔! やれやれって書いてある!
「フィッツジェラルド公爵が本気で仕返しに来たらまずいでしょ? 備えは完璧にしておかないと!」
「はぁ」
「はぁ」じゃないよ!
「あなたも元同僚の実力くらい、よく知っているでしょ?」
「まあ、あの程度の編成で来たってことは、今回はご機嫌伺いくらいのつもりだったんでしょうね。さすがに見たこともない巨像が、聞いたこともない暴れっぷりで面食らったようですけど――。確実にお嬢は気が触れていると思ったでしょうね」
あぁん!?
「イカれた相手には基本戦術なんて意味がないですからねー。団長が不憫でしたよ」
ムキーッ!
「このっ、このっ」
「それでも命令されれば子ども相手といえども容赦せず攻め込んでくるでしょうね。いざとなれば公爵邸の護衛以外は全部こっちによこすかもしれませんよ?」
来るなら返り討ちにしてやるまで。
「だから望むところだって言ってるでしょ! 完膚なきまでに叩き潰してやる!」
「うわぁ」
気持ち悪そうに私のことを見るんじゃない。
「……ええと。それであの壁の高さくらいある人形を作るんでしたっけ?」
「そう! 村人たちはそんな大きな人形を見たことないでしょう?」
「村人どころか、世界中を探したってそんな人形を見た人間はいませんよ」
「もー、うっさいなー。とにかく一体作ってみるから、まあ見てみなさいよ」
「お嬢! まさか屋敷の側で作るんじゃないですよね?!」
「ん?」
あ、そっか。
そうだよね。事情を話す前だからね。
「じゃ、防護壁の外に作ることにするわ。壁の上で遊んでいる子がいたら降りるように言ってちょうだい」
「かしこまりました。キース!」
「はっ! 直ちに!」
アルフレッドに対しては聞き分けのいいキースが飛んで行った。
◇◇◇ ◇◇◇
スクーターで防護壁まで行き、階段を登る。
なんだかんだ言いつつ、アルフレッドもついてきた。
人払いは済んでいるみたいなので、早速巨人製作を開始する。
おーい! 小人どもー! 久々に大仕事だからねー!
あの巨人をまんまイメージすると、とんでもないことになるから、用心して可愛い小人ちゃんを脳内に思い描く。
でもって、身長は四メートルをちょっと超えるくらい。
三角帽子と先のとんがった木靴に、パステルカラーのカラフルな洋服。
ふっふっふー。
さてさて。どんな感じになるのかな?
うぉっ! うぉぉぉーっ‼︎
ちょっとキモい‼︎
小人デザインなのに巨大なところが、狙ったとはいえ、やっぱりこのアンバランスさはかなりキモい。
「お、お嬢‼︎」
「ひぃぃぃぃ‼︎」
……あ。門が開いたままだった。
卒倒しかかって固まっているのはキースだな。
お! どうせなら、ちょっと命令してみようか。
「巨人一号! そこの門をそうっと閉めてちょうだい」
純真無垢な表情が少しも変化せず動くのは人間味がなくて怖いな。
それにしても、本当にいつも見る小人そっくりだ。
巨人の小人が門を占めると、防護壁の外に締め出されたみたいに見えて、ちょっとだけ可哀想。
「アルフレッド。あれを急いで量産するつもりだから、今すぐ村人たちに周知して!」
「え? 周知って、え? いや、無理ですよ。聞いたところでアレを見たら卒倒しますって」
「あれは守護神だから。私に加護をくれた神様からの贈り物とか、とにかくなんでもいいから有難いものだって言い聞かせて!」
「えぇぇ……」
「そして、あの子たちのお家は防護壁の中だって、ちゃんと伝えなさいよ」
「いやぁ……」
「早く行きなさいよ!」
「……はぁ。はいはい。分かりましたよ」
本当に分かってんの?
まあとにかくキースを回収して屋敷の方に向かったから、何とかするわね。
じゃあ、このまま壁の外に作っていこうか。
説明が終わったら門を開けて中に入って顔見せすればいいよね。
国一番のノッポって身長何メートルくらいあるんだろ?
二メートルだとしても、さすがに自分の倍もあれば脅威に感じるよね。
巨人の足って靴が大きい分、七、八十センチくらいありそう。
生身の人間なら、あれで踏まれたらおしまいだよね。
でも武器に対してはどうだろう……?
この世界に戦車とか砲台とか、そういう物があるとしたら……?
うーん。
まあ、思い切り蹴飛ばせばいっか。壁と同じチタンで作るから、それくらいはできるよね。
でも、ただ踏み潰すとか蹴飛ばすとか薙ぎ払うとか叩き落とすとか、それだけじゃあ芸がないな。
巨○兵みたいに、一面火の海にできるくらいの火力が欲しいな。
本来のシャーロッテちゃんがやるはずだったことだしね。
なんか、段々とラスボス感が出てきたな。
でも私には人を殺める覚悟ができていないから、そういう力を保有していても、いざという時に行使できるかどうか……。
うーん。
…………。
この手で人の命を奪うというのはやっぱりなぁ……。
でも、話が通じる相手ならともかく、うちの父親みたいに、すぐ「やっちゃえー!」って命令するような人間が相手の時は悠長にやってられないからなぁ。
この世界の住人は、上の命令には絶対服従だもんね。
頭では無理と分かっていても、むざむざ命を捨てちゃうんだから……。
じゃあ一番上の人間を捕まえて命令を変更させる方法を考える?
隠密作戦が必要かもな。
「お嬢!」
「あれ? アルフレッド。早いわね。もう終わったの?」
「まあ、終わったといえば終わりましたけど。実際に見せてみないと分かりません」
「まあ、どんなに見慣れないものでも、ずっと見ていたら慣れるものよ。あ、そっか。一体だけ北の壁際にでも常設しておこうかな」
「もう好きになさってください。それよりも、作業は壁の上でないとできないものなのですか? コホン。お部屋で休み休みされてはどうでしょう。あれだけ大きな物を作られるのですから、万が一にでも倒れるようなことがあったら大変です」
お前がな。
壁から抱き抱えて私を下ろすのが面倒だって言いたいんでしょ!
まあ、確かに、万が一倒れたりしたら頭を強打するかもしれないし。
「分かったわ。続きは部屋戻ってからにするわ」
あ、そうだ。
いきなり四メートルの巨人を見せるから駄目なんじゃない?
二メートルと三メートルの巨人を順番に見せて慣れさせていけばいいんじゃない?
よしよし。そうしよう。
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領地入りしたマルティーヌが(公爵にあーだこーだ言われながらも)本格的に動き出します‼︎




