63 【閑話 女神視点】完全に私のことを僕(しもべ)と思っている!
まさか本当に、『女神召喚』という言葉で呼び出されるとは思わなかった。
どこで何を言われても、さすがに無視できると思ったのに。
……不覚。
まさか反応してしまうとは。
私とあの人間とは余程強い絆で結ばれているらしい。
でも、なぜ……?
あぁ、いやいや。もう考えたくない。
本当に怖かった。
どうして神に対してあんな風に恫喝するように話ができるのだろう?
あの人間は、ただただひたすらに要求を突きつけてきた……。
神に対してそんなまねをする人間がいるなんて、聞いたことがない。
相手が私だからなのかな……。
私が未熟者だから?
四大元素の神様たちは、同じ神である私から見ても神々しくて近づくのが躊躇われるほどだけど、私ときたら、見窄らしくて、いつもひとりぼっちで、どうしてあの方たちと同じところにいるのかもよく思い出せないくらい――とにかくひどい落ちこぼれだものね。
生まれ落ちた時――神でも生まれると言うのかな? ――すぐには私の意識は浮上しなかった。
創造神様のお声が聞こえた気がしたけれど、それは私に対してではなく、光を司る神様に対してだった。
あぁ……恥ずかしい……情けない……確か、そんなことを考えながら、重い何かの中を揺蕩っていた。
どれくらい時間が経ったのか、気が付けば私は狭間の世界に身を置いていた。
ずっと隠れていられるところを無意識に探していたのかもしれない。
それでも私は神だった。
自分が神であることを知っていた。
よく思い出せないけれど、やっぱり、生まれ落ちてすぐに創造神様とお話ししていたような気がする……?
いや……それはやっぱり他人の会話を聞いていただけなのかもしれない。
何に対しても自信が持てない……。
他の神様たちが人間に加護を与える様子をずっと見てきた。
私とは縁のないことだと思っていた。
それが――。
「アレに、そなたの属性をやってはくれぬか?」
まさか、光を司る女神様に、そんなことを依頼される日が来るなんて!
想像したこともなかった。
光を司る女神様に話しかけてもらえて嬉しくて、仲間と思ってもらえたようで、それはそれは張り切って出向いたのだ。
……あの日。
あの人間が呼ぶ声を耳にした時、ぞくりと悪寒が走った。
今まで見てきたどの人間とも違っていた。
最初から最後まで自分の欲求をぶつけてきた。
私を手足のように使うことに畏れを全く感じていない。
神を神とも思わない図太い神経の持ち主。
加護を与えればもう関わることはないと思っていたのに。
油断していたからだろうか?
呼び出されてしまうとは。
あの人間が勝手に決めた、『女神召喚』という言葉――そんな恥ずかしい言葉で呼び出されたと知られたら、他の神様たちに軽蔑されるかもしれない。
神の名を貶めたと蔑まれるかもしれない。
うぅぅ。どうしよう。
おまけに、用が済んだから帰っていいと、まるで許可するような言い草で、『終了』などという言葉を使われてしまった。
……情けない。
もう二度と呼ばないように言いたかったのに、怖すぎて何も言わずに去ってしまった。
後は自分で熟練度を上げて精進するようにと言うだけだったのに。
それにしても不思議だ。
落ちこぼれの私が授けた力で、どうしてあそこまで力を使えるのだろう?
まるで創造神様から加護をもらったような多彩な魔法を使いこなしている。
そんなこと――あるはずがないのに。




