62 地下通路④
「おーい! 女神召かーん‼︎」
……?
来ているの?
見えないだけで、会話はできる状態?
「ねえ、女神! いたら返事して!」
「……」
「あんのヤロー」
「ひぃっ。い、います」
「おっそーい! どうしてすぐに返事しないの!」
「ひぃぃっ」
「何よ、その返事。ムカつくんだけど。ふん。それよりもね。私の魔法のことなんだけど。マンション縛りを外してくれない? 作りたいものを作れるようにしてちょうだい」
「……」
「聞いてる!」
「……っ! えぇっと。そのう……」
「できるの? できないの?」
「あのう……何でも作れるとは……まるで創造神様と同じ……そんな大それた力が私にあるはずが……そ、そもそも、創造神様がお力を授けることなどないはずで……そ、そんな、そんな……」
あー、もぉぉ!
できるかどうか聞いただけなのに!
「外せるの? 外せないの? っていうか、外せるように、ちょっと頑張ってみなさいよ!」
「……う。そ、その――マンション――という縛りは外します。ただ――だからといって何でも作れるようになるかどうかは――熟練度が上がれば少しは……」
「何をモゴモゴ言ってんの?! 縛りを外してくれたのね! オッケー! じゃあ、あとは私の頑張り次第ってことね! りょーかーい!」
やれることやってくれたらそれでいいんだから、さっさとやりなさいよね。
「あ。用が済んだら何か言ったほうがいい? 『帰れ』的な? うーん。じゃあ普通に『終了』にするわ。はい、今日のところはこれで終了!」
「……!」
帰って行ったのかどうか分からないけれど、あとは小人と話せばいいから問題ない。
じゃあ、いっちょ試してみますか。
あ! 忘れてた! も一回!
「女神召かーん‼︎」
「……」
またか。もういいや。いちいち確かめるのも面倒くさいわ。
「あのね。小人なんだけど。『寝ている間に』っていう縛りも外してね。いちいち寝たふりができるかっつーの! 私が呼べばいつでも小人が出て来られるようにしておいてね! 以上! 終了!」
よっし。
これでいいはず。
「おーい! 小人ぉー!」
ぽすん。
出て来た!
「お前。呼べばそのまま出て来れるようになったんだね。上等、上等。コホン。早速だけど、私のこの髪の毛を一時的に茶色に変えてちょうだい。数日で元に戻っていいから」
「……」
こいつも返事しない時があるよなぁ。
女神の躾のせい?
「あのさー。会話って分かるよね? 片方だけがしゃべるものじゃないんだよ? 私がこうしてって言ったら、ちゃんと、『はい』って返事してよね!」
「はい」
……コイツ。
脊髄反射で返事したな。
いいけどさ。
……あ! 消えた!
できたってこと?
鏡――鏡がなーい!
「メイスン! ねえ、メイスン!」
私が呼ぶと、バスの方にいたメイスンが走ってきた。
「はい! うわっ!」
お! 私を見て驚いたってことは、髪色が変わったってことかな?
「メイスン。どう? 私の髪の毛、色が変わっているでしょう?」
「はっ、はい! え? いつの間に?」
「ま、そういう魔法もあるんだって覚えておきなさい」
「はい」
「その確認だけよ。仕事を続けてちょうだい」
「はい」
よぉーっし。
これでいつでも行けるわ。
そうなると待つのがダルい。
あいつら早く来ないかなー。
◇◇◇ ◇◇◇
メイスンが片付け終わって、幌馬車に変形させて待つこと十分か二十分。
ようやくアルフレッドとキースが到着した。
「やっとなの?」
「お嬢?! えぇっ!?」
あ、そっか。
「ちょっと髪の色を変えてみたの。気にしないで」
「気にするなって……まあ……はい」
何よ。
「それより遅かったわね」
「えぇぇ……。これでも頑張ったんですよ? 言うことを聞かないコイツを無理やり引っ張って」
ん? 馬車用の馬を引っ張っているのはキースだよね?
アンタはちっとも苦労していないでしょ!
「それよりも急ぎましょう。ここで時間を食っていると、あっという間にお昼になっちゃうわ」
「え? 少しくらい休憩させてくださいよ」
ちょっと馬を走らせたくらいでヘロヘロになってんじゃないわよ。
「アルフレッドは休みたければ休んでいいわよ。行商人の一行にあなたはいないから。こっちはキースが動ければいいの」
キースがゲンナリした顔で私を見つめているけれど、優しさを期待しないで。
「ええと、お嬢? 『こっち』とは? まるでメイスンとキースと同じ側みたいに聞こえたんですけど?」
「そうよ。もちろん私も一緒に行くわ」
「はあ?! 何を言ってるんですか! ……! それで髪を……うわっ。無鉄砲にも程があります。世間知らずの弊害ですね」
うっさいなー。
「野菜満載で行くから、門を通る時には荷物の間に隠れているわ。いちいち調べたりしないでしょ?」
「……本気ですか?」
「本気も何も、私が行かないと始まらないわ。いくら私でも、どこに通路を繋げていいか分かんなかったら造りようがないもの。メイスンが店を広げたところの下に穴を掘って、この通路に繋げるつもりよ」
「……は? ……へ?」
「門の出入りが面倒でしょう? だから減った在庫の補充は地下通路を使おうと思ってね。さすがに目立たないように人が通れるくらいの穴になっちゃうけどね」
「『なっちゃうけどね』って――。他領に侵入できる地下通路を造るって――いや、そんな呑気に――」
ちょっと。変な誤解しないでよね!
「あのね。アルフレッド。何も侵略するための秘密の通路を造る訳じゃないのよ? 野菜を二、三日売るだけなんだから。売り終わったら地上の出口は塞いでおくし」
「……」
「何よ」
「……」
無言で睨むのはなしでしょ。
無言での抗議は受け付けないからね!




