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三等分


 ある平日の夕方。何年も変わっていない道を、二人で歩いていた。


「ねえ、パパ。今日は、肉まん、買う?」


「そうだな。買おうか。病院の中のコンビニに売ってたから、そこで買おう」


「うん」


 僕はうなずく娘の手を握り、駅の南口のバス停に並んだ。


 バスはちょうど来て、乗ったのは僕たち二人だけ。


「パパ。お母さんは、今日で入院はおしまい?」


「おしまいだよ。良くなったからな」


「やったね」


「うん。よかった」


 バスは平らな道を遅めの加速で走る。


 小さな手で、席の前の手すりにつかまる娘の手は、小さかった。





 病院に入って、少し椅子に座って待つ。


「ママの準備はいつできるの?」


「もうそろそろだ。肉まん買いいくか?」


「うん。いつものおっきい肉まんがいい」


「うん、そうしような」


 僕と娘は、コンビニに行った。


 そしていつも買っている、大きな肉まんを買う。


 ちょうど、僕が高校生のころに発売された、超特大肉まんだ。


 それを、娘と半分こするのが、いつもだった。


 小さな手で超特大の肉まんを持っている娘は、僕に言った。


「今日は半分こじゃなくて、三つにわけたいよ」


「そうだな。あ、ママが来たぞ」


「ママ!」


 娘が肉まんを僕に渡して、由愛のところへと走った。


 肉まんよりママだよな。


 でも肉まんを三等分するのも、きっと娘がやりたがるはず。


 なので僕は肉まんをそのまま抱えて、娘と由愛のところに、少し遅れていった。


「肉まんちぎる!」


「はいはい」


 僕は肉まんを娘に渡す。


 娘は大体肉まんを三等分にして、そして由愛と僕に渡した。


 ちぎり方は雑だけど、たしかにちょうどいい大きさだ。中の肉が落ちそうだけど。


 この超特大肉まんが発売された頃、たしか、由愛と、半分でも大きくて、半分の半分だと小さくて、三分の一くらいがちょうどいいという話をした。


 だけど実際に、三分の一にしたのは、初めてだった。


「ママおいしい?」


「うんおいしいよ」


「パパおいしい?」


「うんおいしいな」


 そんな会話をしながら食べた肉まんは、高校生の時と変わってない味だった。


お読みいただきありがとうございます。

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