外伝・幕間 新たな具現化と不安
扉の間に戻ってきた一行は、見てきた物語に思いを募らせつつ仲間の帰りを待った。
しばらくすると各扉を潜って留守番組が戻ってくる。遊戯の晩餐からはクローデリアとアネルセリア、シャムス、アルラート。他は激闘の迷宮から出てきた。
各々に見てきた事を報告し合う。全員分を聞いたのでかなりの長話になった。
セレーネ「へぇ、そんな風になってたんだ」
シャムス「はい。とっても楽しかったです」
アネルセリア「ああ、楽しかった。シャムスは頭脳戦が強いな」
シャムス「いいえ。アネルセリアさんも手強かったですよ」
大満足な様子で話している。随分と楽しんできた様子だ。
一方でラソンは迷宮組の話に興味を引いていた。扉の向こうにはとても広大な空間が広がっていたという。方法は違えど、どちらの扉からも交換アイテムが獲得できたらしい。
集めてきたソレを確かめて思う。具現化するにはちょっと足りないか。
セレーネ「これは周回ね。面倒だけど」
ラソン「周回? なんだそれ」
いったい何処の言葉だ?
怪訝に眉を潜めた面々に彼女は得意げな顔を浮かべる。
セレーネ「コンピューターゲームの中の言葉だって。暗黒界で流行ってるらしいの」
ラソン「ソレ、誰情報だよ」
セレーネ「前に言った町で見つけた時にニクスが」
ニクス「聞かれたから答えただけだ」
リジェネ「へえ。ゲームって事は遊んだんですか?」
セレーネ「うん。お試しプレイってのをやったわ」
いつの間にかゲームコーナーを堪能したらしい。
ちなみにゲーム用語は近くにいた子供達が話していたものだ。それをニクスに尋ねたという。聞けば丁寧に教えてくれるからすぐに理解できた。
それでお試しプレイとやらはどうだったのか、と聞くと――。
セレーネ「超難しかった。全然思うようにできなかったの」
ルシフェルス「うむ。あれらは機械に触り慣れていないと難しいだろうな」
リジェネ「そういう物なんですか?」
ルシフェルス「ああ」
リーヴェ「それで、周回というのはこういう時に使う言葉なのか」
セレーネ「うん。そうみたい」
とりあえずの納得を示し、一行は新たな物語を覗くのを控えて素材収集に行く。
迷宮組と遊戯組で分かれて必要な量の記憶の結晶片を集める事になった。……と、その前にと泉の精が彼らを引き留める。何か伝え忘れた事があるようだ。
泉の精「まずこれをお渡ししておきます」
リーヴェ「これは商品の資料みたいだ」
泉の精「カタログです。具現化以外にもショップを運営していますので」
クローデリア「ふーん。結晶片って具現化以外にも使うのですねぇ」
フェラーノ「ほう。どんなのがあるんだ?」
ペラペラとページを捲ってみた。皆も集まって覗き込む。
そこに記載されていたのは武器のようだ。記憶キャラ達の物っぽいな。詳細までしっかりと紹介されている。おかげで誰が装備できそうかの想像がつく。
そして、とある武器のページを見たアルマが声を上げて反応した。
アルマ「これはまさかっ」
ラソン「この盾、知ってるんですか?」
アルマ「うん。前に私が使ってた物と同じ」
リジェネ「えっ……でも、今は装備してないですよね」
改めて彼女の装備に目を向ける。装備している武器は決して珍しい物じゃない。それなりに値の張るものだが普通に店で売っている代物だ。
一方でカタログに載っている盾は、見るからに一品ものといった感じである。
アルマ「そうなの。実は以前の旅の後使い物にならなくなっちゃって……」
ラソン「そうだったんですか」
惜しいものを失くしたと悔しそうにしていた。余程気に入っていたのだろう。
武器の詳細情報を見るに、これはアルマの専用武器と呼べそうだと判断できる。名称は「シャドーアーク」というらしい。
見た目は影や夜をモチーフにしたデザインで黒く、名前もそれっぽい感じだ。
食い入るように見ていると、察した泉の精が注意事項も含めて説明してくれる。
このカタログに載っている商品は特殊なアイテムだ。記憶キャラと同様に現実の世界に持ち出す事はできない。持って行ったらおそらく消滅するだろう。
だが、アルマの専用武器は例外である。交換アイテムとは別に現実世界での素材も必要と書かれていた。その代わりに現実の世界に持ち出す事ができるとも。
シャムス「記憶の結晶片が必要な理由は?」
泉の精「記憶世界から情報を得るためですわ。レシピというべきかしら」
特殊な能力を持った武器でもあったので、それらの情報を呼び出す必要があるという。つまり記憶の結晶片で能力も写し取るという訳か。
もともと世界に1つしかない逸品。泉の精の力でも利用しないと取り戻せない品だ。
そして泉の精の力を反映させるのに結晶片が必要なのかもしれない。どう見ても鍛冶師ではなさそうだし……。特殊な方法で生み出す故に必要だと言われればそんな気がする。
いつの時代に作られた物かもわからないから、今の職人に依頼して再現できるとも限らない。
ラソン「まあ、他の武器とかは別に持ち出せなくても問題ないよな」
セレーネ「うん。基本的に持つのはアネルセリアさん達だろうし……」
わざわざ一行が持ち歩かなくてもいいだろう。
カタログを見る限り、アルマの武器以外は特別持ち出す必要を感じなかった。しかしこれを手に入れるのは別に後でもいいだろう。必要な物も足りないし。
話が終わり、彼らは気を取り直して扉を潜る。必要な物を手に入れるために――。
数時間後、必死に素材を集めをして必要量を揃えた一行。
手にした記憶の結晶片を泉の精のもとに持っていく。何度か周回して集めた大量の結晶片。その山を見て満足げに笑う精は、注文を受けて具現化を行う。
万全を期して1人ずつ順番に具現化していった。まずはフランネルからだ。以前と同様に素材が人の形を成していく。
フランネル「おう。男・フランネル、此処に参上!」
続いてアナも眼前に具現化される。
アナ「同じくアナ、登場だよ」
フランネル「2人合わせて……」
2人「スターライトフェニックス!!」
全員「…………」
シャッキーンと決めポーズとともに名乗りを上げた2人。
まさかの展開に絶句する。なんと反応すればよいのか。フランネルはいつも通りだが、よもやアナまでノリノリで応じるなんて予想していなかったのだ。
こんな時でも息ぴったりな関係が凄い。そしていい笑顔だ。
セレーネ「なっ、なんなのよコレ」
フェラーノ「何って……多分決め台詞なんじゃねーの?」
ニクス「こいつらは役者か何かか」
リジェネ「おそらく違うと思います」
ラソン「ったく、お前が2人揃って具現化させたいなんて言うから」
セレーネ「だってぇ~。仲良し同士だから一緒のタイミングがいいかなって……」
妙なこだわりを持ってしまったがための展開。
素材集めにしたって、1人分だけならあと少しで足りたのだ。なのにどうせなら一緒にしようなどと言うから……。
さっさと1人具現化させて手伝わせればよかったとラソンは思ってしまう。
そんな後悔はさておき、無事に2人を仲間に加える事ができた。
これでとりあえずアネルセリアの暇は解消されるだろう。なのだが、ちょっとこの面子だと残していくのにいささか不安を覚える。
そこまで無茶はしないと思うが、なんとも危なっかしいような気がしないでもない。
アルラート「誰か手綱を引けそうな人が欲しいね。もう少し落ち着いた感じの」
リーヴェ「確かに彼らだけだとひたすら突っ走って行きそうだ」
リジェネ「よく考えたら、この3人の中で治癒魔法を使える人いないですよね」
激闘の迷宮とかは名前の通り戦う必要のある場所だ。
万が一にも彼らだけで行って帰ってこなかったら、と思うと不安になる。
仕方ない。もう1つくらい物語を見て仲間を増やすか。できるだけ落ち着いた仲間と出会えそうな世界を選んで。また素材集めが大変だな。
だが、それでも気持ちを切り替え人選をして扉に向かう。次なる物語はどんなものだろうか。
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