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外伝15‐2話 記憶の世界へ

 【サイドストーリー名 激流の奏者】

 サイドストーリーの解放条件

 条件1、水の印を所持。

 条件2、神樹編、水の精霊王を継承までやっている。



 今から約1500年前、精霊界・水の精域。

 豊かなマナの恵みに支えられた地を女は巡った。

 その身に楽器を携え、刺激的な衣装で、自由を求めて歩き続ける。



 リャウの森の東、青々と茂る草原の上で一行は目覚めた。

 柔らかい草の上に横たえていた身体を起こし辺りを確かめる。どうやら精霊界のようだ。


リーヴェ「皆、無事か」

ラソン「ああ。なんとか」

セレーネ「うん。……ここ何処?」

クローデリア「この空気……水の精域のようですわ」


 湿気の多い環境。肌に張りつくこの感覚は間違いない。

 でも何処か、違うような気もする。きっと勘違いだろう。確かめようにも近くに人里はない。なんとなく感じただけの感覚に過ぎなかった。


リジェネ「泉の場所じゃないんですね」

フェラーノ「移動しちまったか。……いや」

アルラート「飛ばされたのだろうね」

セレーネ「だよね。でも、知らない所じゃなくてよかったわ~」

ニクス「本当にそうか?」

セレーネ「えっ」


 それってどういう意味だ、と聞こうとしふと言葉を閉ざす。

 皆の脳裏に声が響いて来たからだ。聞き覚えのある声、これは泉の精だな。静かに耳を傾ける。


泉の精「皆さん、無事にたどり着けたようですね。今いるそこは記憶の世界です」

リーヴェ「記憶の世界?」

泉の精「はい。惑星(ほし)の記憶をもとに形成された世界です」


 泉の精は丁寧に説明してくれた。

 刻の泉を通してきたこの場所は実際の過去とは少し異なる。惑星の記憶をもとにして再現された過去の世界だ。

 つまり、この世界で一行が何か介入しても実際の過去や未来が変わる事はない。


 そして記憶の世界では、一行の姿は過去の人物達に正しく認識されないという。

 わかり辛いかもしれないが人として見えないという訳じゃない。現代の世界と同じ姿で見えないというだけだ。いうなれば「刻の旅人」状態である。

 そこまで怪しまれる心配もないらしいが、過去の人々の記憶にあまり強く残らないかもと言われた。


アルマ「つまり過去の世界だからと気にし過ぎなくていいって事ね」

セレーネ「普通にしてオッケーって意味?」

アルマ「ええ」

セレーネ「なーんだ。大した事ないじゃん」

ニクス「だが、帰りはどうする。そもそも帰れるのか?」

セレーネ「うっ……」


 言われてみればそうだ。無我夢中で飛び込んでしまったが帰り方がわからない。

 しかし、その答えはすぐに帰ってきた。泉の精がまた教えてくれる。この記憶の物語がひと段落すれば自然と帰れるのだと。

 リーヴェ達は揃って安堵した。ならば引き戻されるまで見て回ればいいのか。

 一行が精の話に耳を傾けていた最中、彼らを目掛けて飛びかからんとする影があった。魔物だ。魔物が隙だらけの一行を狙う。不意を突かれた皆は反応に遅れる。


 ――ギィィィィン!!

 今にも魔物の爪が、牙が届かんとした時。何処から高く鋭い音が響く。

 その直後、見えない振動にぶつかった魔物が吹き飛ぶ。強烈な衝撃を食らい、怯んだ魔物は怯えを成して脱兎の如く走り去っていった。

 間一髪の窮地を謎の音に助けられる。今の音はいったい何処から――。


???「ナニぼさっとしてんだい!」

リーヴェ「えっ」

クローデリア「あ、ああっ」


 一行の前に現れた人物。音を放った主は、ギターを携えた美女だった。

 女は楽器を背負い直してこちらを見つめる。そんな彼女の姿は少し前に泉を覗き込んでいた女性と瓜二つ。いいや、ここまで来たら同一人物としか思えない。


???「それにしても不思議な連中だねぇ」

全員「えっ」


 こちらを不思議そうに見つめる視線。不思議なとはどういう意味だろう。


???「見た所同胞じゃないみたいだけど……あんたらホントに人かい?」

リジェネ「人以外に見えるんですか」

???「そういうってんなら、一応人って事だね。へぇ~」

全員(いったいどんな風に見えてるんだ!?)


 たった今泉の精が言っていた言葉を思い出す。

 目の前の女性には、自分達がかなり特殊な風に見えているのだろう。気にはなるが聞くのはちょっと怖いな。相手から敵意や悪意は感じない。

 ならば、少なくとも危険を感じる程怪しまれてはいないという事だ。


クローデリア「あ、あのっ」

???「ん?」


 それまで落ち着きのない様子で硬直していたクローデリアが歩み寄る。瞳をうるうるとさせ、今にも泣きそうな顔をしていた。怪訝な面持ちで振り向く女性に何か言いたい様子だ。

 しかし、思うように言葉がでないのだろう。パクパクと唇を動かすだけで声にならない。その様子を見て女性は「変な奴だねぇ」と気のない風に言った。


リーヴェ「えっと、助けてくれてありがとうございます。それでその……名前は?」

???「ああ、自己紹介がまだだったね。あたしはアネルセリアさ」

4人「ええっ、アネルセリアさん!?」


 リーヴェ、リジェネ、ラソン、セレーネは声を揃えて驚く。

 あまりの驚きようと大声に思わず身を引く女性。向こうも驚愕の表情で一行を見ていた。


アネルセリア「なんだい大声出して。あたしを知ってるのか」

セレーネ「知ってるも何も精霊王じゃない!」

アネルセリア「精霊王? あたしが?」


 途端、彼女は「ぷっ」と吹き出し、盛大に声を上げて笑う。腹を抱えて目に涙が滲むくらいに爆笑していた。そこまで笑う事か。


ラソン「オレ達、そこまでおかしな事言ってねえーよ」

アネルセリア「バカ言うんじゃないよ。あたしはちょっと放浪癖があるだけの一般人さ」

セレーネ「え? ど、どういう事?」


 困惑を隠せない一行。ただ1人、いや2人を覗いて意味不明な状況に頭を悩ませる。


クローデリア「やっぱりアネルセリア様でしたのね」


 とうとう泣き出し、アネルセリアに抱き着いてしまう。

 そのまま涙で濡れた顔を思いっきり押しつけてしまった。抱き着かれたほうは困惑顔である。


アネルセリア「なんだい、なんだい。泣いたりして」

リーヴェ「本当にアネルセリアさんなのか?」

アルマ「うん、服装が違うし多分そういう事かな」

リーヴェ「何がそういう事なんだ?」

アルマ「えーっと。私も実際に見るのは初めてだけど……多分精霊王になる前の彼女だわ」


 なるほど、そういう事か。アルマも服装が違う所為でちょっと戸惑ってしまった。

 此処は過去の世界。当然ながらこのような事態も十分に起こり得る。この世界は彼女の若かりし頃を写し取った世界という事なのかもしれない。だとすると――。


リジェネ「それってどのくらい前の事なんですか?」

クローデリア「確か、アネルセリア様が精霊王になったのは1500年くらい前だったと思います。とても有名な伝説とともに……」


 泣き止んだクローデリアが教えてくれる。


セレーネ「へぇ……って伝説?」

ラソン「やっぱ凄い人だったんだな。雰囲気も大分違うし」


 一行は老婆の姿のアネルセリアしか知らない。

 今の彼女は何処となく雰囲気が違う。口調には面影も感じられるが、お祖母ちゃんの時よりもずっと――。


アネルセリア「さっきから何をベラベラと話してんだい」

リーヴェ「すみません」

アネルセリア「別に謝らなくていいよ。それより、さっきあたしの事を様づけしてたね?」

クローデリア「え、ええ」

アネルセリア「できれば止めてくれないか。なんかこう背中がムズムズするんだよ」


 若い姿の彼女は背中が気にかかる様子で肩を指で掻く。


クローデリア「ですが、アネルセリア様はアネルセリア様ですし……」

アネルセリア「ああっ! せめて『さん』にしとくれ!!」


 痒い痒いと身体を捻ってむずがった。

 だが、クローデリアもそう簡単に呼び方を変えられない。努力は見せるものの、どうしても様づけしてしまう。

 何度も試みているが上手くいかなかった。その度に身悶える女性。

 改めて見てみると、クローデリアと並んだ彼女は同じくらいの背丈だった。昔はこんなに背が高かったんだな。


フェラーノ「美女が並んでるぜ」

セレーネ「ちょっと。いきなり何言ってんのよ」

リーヴェ「見事に緩み切った顔だな」

アルラート「はぁ……我が弟ながらだらしのない」


 まだ議論の最中である2人を見ていたリーヴェ達。

 目の前にいる全盛期のアネルセリアはなかなかの美人だった。清楚系の魅力をもつクローデリアとはまた違う美しさ。なによりも体つきが……エロい。

 ゴクリと生唾を飲み込んだフェラーノを女性陣が冷めた視線で嗜める。


クローデリア「あのぅ、やっぱり……」

アネルセリア「ああっ、わかったよ。あんたはそれでいい」

クローデリア「はい!」

リジェネ「結論が出たみたいですね」


 ようやく様づけを許してくれた女性。

 彼女はスッと一行を流し見て腰に手を当てた。


アネルセリア「此処で会ったのも何かの縁。一緒に来ないかい?」

リーヴェ「何処に……」

アネルセリア「これから行く予定だった場所さ」


 彼女はニーファバオムのもとに向かう途中だったと告げる。

 何を思って一行を誘ったのかはわからない。だが、過去とは言え巡り合えた亡き人。仲間の事を思うともう少し一緒にいたいとリーヴェは思った。

 それにこの世界から出るためにも、此処で行動をともにするのはアリかもしれない。


リーヴェ「一緒に行きます」

アネルセリア「決まりだね。じゃあ、行こうか」


 こうして一行は彼女を仲間に加えて歩き出す。アネルセリア(Lv40)が一時参戦。

 すぐ近くにあるニーファバオム。この先にどのような出来事が待っているのだろうか。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 若かりし頃のアネルセリアを連れ、一行は精霊界の中心にある樹木・ニーファバオムを訪れる。

 現在とそう変わりない樹木。その根元に複数の人影があった。1人は守護者だとして、他にも2人いるみたいだ。

 なにやら話している様子の3人は、一行とともに現れた知人に顔を向ける。


炎精人・女「アリー、遅かったじゃない」

アネルセリア「よう。待たせたねぇ」

炎精人・女「いつにも増して時間にルーズなんだから」

アネルセリア「別にいいだろ。時間ならたっぷりあんだからさ」

炎精人・女「言葉遣い! また悪くなってない?」

アネルセリア「なってない。普通だよ」


 互いに歩み寄り、親し気に話す2人の姿に一行は戸惑うばかりだ。

 そんなのもお構いなしにもう1人が歩みってきた。その人物を見てリーヴェ達は更に驚く。なぜならば、よく知っている人物だったからだ。


ランパード「あんま気にすんな。こっちのほうがコイツらしいだろ」

炎精人・女「そうだけどっ」


 炎精人らしき女性が額に手を当てて息を吐く。

 この女性もかなりの美人だった。外見年齢は20代半ばくらい。毛先にかけて白くなっていく紅色の髪に白金色の瞳。背もアネルセリア程じゃないが高い。何処となくお淑やかな印象を受ける人である。

 楽しそうに話す3人を観察し、アルマがひとつ思い当たった様子で口を開く。


アルマ「この状況から察して、おそらくあの方はフランジュ様ね」

リジェネ「それって誰ですか?」

アルマ「先代の炎の精霊王よ」

ラソン「てことはフランネルの前の人だな」

アルマ「ええ。私も話に聞いただけで会うのは初めてだけど……」

ラソン「アルマさんでも会った事なかったのか」

アルマ「まあね。前の旅でも炎の試練の時は別行動だったから」


 それ以前ともなれば他の精域に行く事などそうはない。炎の試練を受けた仲間もいたから話には聞いていたが……。

 一行もまたいろいろと考察していると、話にひと段落がついた2人がこちらに意識を向ける。


炎精人・女「ところでそちらは?」

アネルセリア「ああ、忘れてた。今回の連れさ」

リーヴェ「初めまして。リーヴェです」


 他の皆も順に自己紹介していく。

 全員が挨拶をし終えると、次に2人もそれぞれ自己紹介をしてくれた。やっぱり女性はフランジュという名らしい。2人ともまだ精霊王ではないようである。

 さっきと同じように尋ねれば、彼らもまた同じように笑って答えた。間違いなく王になる前の2人だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最新お疲れ様です! [一言] 若かりし頃の水の精霊王さんと地の精霊王さん、さてどんなやんちゃを暴かれ・・・コホンッ!伝説を見せてくれるのでしょう、楽しみです! これからも応援してます…
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