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第135話 凶悪な科学者、コボル郷戦

 敵を掻い潜りながら進み、以前到達した広場までやってくる。前はここでニクスと戦ったのだ。

 広場には兵士らしい人物がいない。チャンスだと思って前進するが――。


兵士「ここまでだっ」

ニクス「待ち伏せか」

リーヴェ「このまま進むぞ」


 物陰に隠れていた大群が道を塞ぐ。これ程の数がどうやって隠れていたのだろう。道端には身を隠すのに使ったらしい道具も散らばっている。

 敵「コボル郷配下の兵士」×4、「コボル郷配下の学者」×2、「コボル郷配下の銃士」×1が出現。


セレーネ「はあぁぁぁっ」

リジェネ「颯針槍」

クローデリア「大地のマーチ」

敵「ぎゃあぁぁぁぁっ!」


 第1波を即行で撃破。続いて第2波との戦闘が始まる。敵は兵士×3、銃士×3だ。

 銃士の攻撃は威力が高かった。しかし、数ではこちらが有利。ゲスト参戦しているアルラートの協力もあって何とか撃破する。


 だが、まだ終わらない。休む暇を与えず第3波が一行を襲う。

 敵は兵士×3、銃士×2、学者×2とまたもや数が互角。しかもこちらは連戦だ。若干疲れが見え始めた一行に容赦ない攻撃が及ぶ。上手く連携して攻撃を防ぐ。

 疲れがこちらのミスを誘う。


ニクス「くっ……」


 息が上がり僅かに動きが鈍るニクス。弓を構えるも、腕が小さく震え狙いを定められない。そこを敵の兵士が狙った。

 咄嗟にリーヴェがフォローに入り、攻撃を受けている隙にニクスが退避する。


ラソン「はぁ、はぁ、やっぱ連戦はきついぜ」

リーヴェ「だが負ける訳にはいかない」

ラソン「もちろんだ。……精風刃」


 1人ずつ的確に倒していき、残り2人にまで追い詰めた。

 戦闘参加人数が減った事である程度戦いやすくなる。一行は、ここぞとばかりに攻めた。


セレーネ「炎撃拳、突牙」

ニクス(ベットキル・スフェラ)

クローデリア「オルムアクス」

リジェネ「乱啄迅」

ラソン「翼閃斬」

リーヴェ「エトワール・ピラー」

敵「ぎゃあぁぁぁっ!」


 こちらの集中攻撃を食らい敵が悲鳴を上げる。残る敵も撃破。

 リーヴェ達は最後の敵勢を見事に突破したのであった。



 敵陣を突破し最奥へ続く道を駆け抜ける。

 左右に篝火が灯された台座が等間隔に並び明るい。分かれ道の類もなく迷う心配はなかった。


 次第に前方の様子が明らかになり、奥に何か大きなモノがあるのが伺える。周囲も明るく照らされているから、人の姿も確認できた。あの人物はもしや――。


リーヴェ「そこまでだ! 大人しく降伏しろ」

コボル郷「ふぉっふぉっふぉ。とうとう来よったか」


 言うまでもなくコボル郷だった。周りに人がいない所為か、コボル郷は最初から獣人種の姿を露にしている。

 深緑色の体毛には白毛が入り混じり、浅葱色の瞳を持つ。白衣を身に纏い口元が白い髭で覆われていた。パッと見た限りだとアレが髭でいいのかわからないが。


ニクス「コボル郷、まさかこんな物まで製造していたとはな」

コボル郷「そんなに驚く事か? ああ、お主はここ最近の会議に出てなかったからのぅ」


 まぁ、それでなくても裏切る可能性のある人物に情報は漏らさないが。そうコボル郷はつけ加えた。例え独自に調べていても関係ないと言いたげだ。

 

 神殿内の最奥には巨大な石舞台があった。黒い石でできた舞台の上には同じ石で作れらた祭壇がある。黒き祭壇、少し前までここはそう呼ばれていた。

 その名の由来は簡単だ。昔、干ばつや貧困に喘いだ民が黒き翼の神に生贄を捧げた地だったから。祭壇の石が黒いのは生贄となった者の血を吸っているから、などという迷信まである。実際の所は最初から黒い石を用いただけとされていた。


 今はそこに巨大な装置が設置されている。そう、これこそ以前コボル郷が実験していた代物だ。

 人々を負の活力にして回収する、それが彼らの目的だったのである。コボル郷は手製にかけた玩具を自慢する子供の如く、丁寧に作戦の内容を暴露した。ここまで来たら隠す必要もない。

 あまりにも場違いな態度で熱弁する彼に、リーヴェ達は憤慨した。こんな奴に人々は消されたと言うのか。跡形もなく、何も残さず消えた人々を思い出す。


リーヴェ「こんな事、許される訳がない! その機械は破壊させて貰うぞ」

セレーネ「もちろん。あんなのがあっちゃいけないわ」

アルラート「及ばずながら、私も手を貸そう」


 皆の心はひとつだ。胸を張って言い切る。

 はっきりと言い放った言葉に、コボル郷が怒りを露にして叫ぶ。


コボル郷「そんな事はさせんぞ。お主等には散々世話になったからな。たっぷりと礼をしてやるわい」

ラソン「上等だ。やってやるぜ」



 敵「コボル郷・モアクコフ」が出現した。

 開始早々、奴は懐から薬瓶を複数種取り出して服用する。奴のバフスキルだ。攻撃力と防御力がアップ。

 また、彼の種族特性「潤活力」が発揮。これはバフ効果の恩恵を強く受ける事ができ、且つ同じスキルでも重複効果が得られる。


コボル郷「はっはっはっ! 蹴散らし、粉砕してくれるわ」


 跳躍し、勢いよく地面もろともに両腕を叩きつける。ただでさえ強靭な肉体を誇る獣人種なのに、強化が加わり初手からえげつない威力だ。


ラソン「ちっ、あんなのまともに食らってられねー」


 最も耐久力のあるラソンが思わず舌打ちする。最初のほうこそまだ堪えられても、後半になると厳しくなるのは必至だ。回避できる者は可能な限り攻撃を躱して戦う。

 セレーネとニクスがデバフを付与していく。しかし、負けじと敵が更にドーピングを行った。これはキリがない。

 敵の武器はメイス。状況に応じて武器を使う。


コボル郷「ぬんっ」

セレーネ「っ、炎撃拳」


 辛うじて攻撃を躱し、横っ腹に拳を叩き込む。

 だが敵はこちらの攻撃をものともしない。本当に学者か、と疑いたくなる戦い方とタフさだった。更に奴はフラスコを投げてこちらを弱体化させ始めた。強烈な打撃攻撃とデバフの嵐だ。

 おまけに状態異常をかけても自前の薬で解除されてしまう。しかし、こちらも負けない。


クローデリア「アコール・メドレー」


 クローデリアがこまめにデバフを解除しつつ、流れるようにバフを付与していく。バフ・デバフともに魔法曲なので繋ぎ目が滑らかだ。最初からそういう曲だったみたいに自然な演奏である。


リジェネ「カナフ、炎龍陣」

カナフ「ピィー」

リーヴェ「クロ―デリアは弱体の解除と強化に専念してくれ。治癒は私が請け負う」

クローデリア「は~い」


 リーヴェが順次、治癒魔法をかけていく。いつもだったらもっと攻撃にも参加するが、今回は治癒優先で戦う事にした。敵の攻撃が強過ぎて気を抜くと味方が倒れる。

 クローデリアは既に忙しそうにしているので、自分が治癒を担当するしかなかった。幸いだったのは、この戦いで魔法攻撃ができるメンバーが他にいる事だ。


アルラート「人相手に使うのは気が引けるけど。……ニヒリティブレス!」


 空中から敵の頭上まで迫り魔法を放つ。黒炎の如き波動が、術者の周囲にいる敵を容赦なく焼き尽くす。中範囲攻撃の闇属性。また中確率で敵に即死を付与する。

 呪文は、「冷たき虚無の黒炎よ。我が刃に宿りて、仇なす全てに等しき終焉をもたらせ」だ。


 確率高めの追加効果に気が引けて、人相手には心が痛む。できればあまり使いたくはない。

 しかし、コボル郷には即死は効かなかった。さすが医者といえよう。なので普通にダメージだけが入る。


ラソン「一気に攻めるぞ」

セレーネ「オッケー」

リジェネ「はい」


 敵の攻撃を見切り、各々の判断で接近を試みた。正面、横、背後から一斉に飛びかかる。


セレーネ「火十連撃」

リジェネ「雷針槍」

ラソン「風刃牙」

セレーネ「続けて、突牙!」


 途切れさせる事なく攻撃を叩き込む。ニクスも離れた所から援護射撃を行う。タイミングを見て後方部隊の支援が入った。


アルラート「天空の裁き、赤き光の乱舞。灼熱に燃ゆる劫火(ごうか)は渦を巻き、柱となりて雄々しく大地を駆け巡る」


 再び詠唱に入っているアルラートが魔法を放つ。


アルラート「フィアンマ・ピラーダンツァ」


 空から降りた炎が柱となり、ランダムに場全体を踊り狂う。彼が使う魔法の中でも特に詠唱の長い魔法だ。炎属性の攻撃。

 本来はランダムヒットする攻撃だが、今回敵はコボル郷ただ1人。よって攻撃の全てが奴に向かう。間髪入れずに彼は次の魔法を放った。


アルラート「まだまだ行くよ。コズミック・メテオ」


 術者から解き放たれたマナの光が、束なり、螺旋を描いて天へ飛翔していく。次の瞬間、星空を纏いし隕石が降り注ぎ敵全体を襲う。連続使用はできない代わりに、かなりの高威力だ。炎と闇属性持ち。


 この魔法は、彼が魔導書を装備している時にのみ使用できる大技である。魔法陣は、二重円の中に流星群が中心に向かって渦を巻く図。円の額縁に星とルーン文字が刻まれている。

 攻撃後、術者の魔法攻撃力を大幅に上げ、敵の俊敏力を下げた。


 大技を放った後、彼は「ふぅ」と一息ついて一時休憩する。コズミック・メテオは極めて燃費が悪い。しばらくセーブしないとすぐにMPが底をついてしまう。

 洞窟などではないので、爆発する系の魔法も心置きなく使えるのはいい。


セレーネ「なにあれ、こっわ!!」

リーヴェ「まさに地獄絵図だな」

リジェネ「ルー兄、張り切ってますねー」

ニクス「お前ら集中しろ」


 怒涛の魔法攻撃に思わず攻撃の手が止まっていた。叱咤を受けて戦闘に戻る。

 彼がMPの補給を行っている間、全員で敵に攻め込んだ。非常に心強いが彼にばかり頼る訳にいかない。気を引き締め直して敵と対峙する。

 敵が何度目かの自己バフを行使した。その瞬間、奴に変化が起きる。


コボル郷「ぐぐっ……うふぉっははは!!」

ラソン「今度は何だよ」

セレーネ「なんか様子が……」

コボル郷「ひぎゃははははっ」


 急に様子を変えた奴が突っ込んできた。とてつもない猛攻撃を始める。

 しかし、先程とは打って変わり攻撃が単調な気がしてならない。まさか――。


ニクス「奴め、混乱してるようだな」

リジェネ「混乱って……つまり暴走してるって事ですかっ」


 大方薬を使い過ぎたのだろう。

 彼の種族特性にはデメリットが存在した。それはバフの重複数の合計が10回を超えると混乱状態になるというモノだ。

 どんな良薬も使い過ぎれば毒。ましてや彼が戦闘で使っているのは結構な劇薬だ。至極当然な結果であった。

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