第133話 連続サブエピソード
【サブエピソード62 命を攫う光】
アートルム神殿跡を目指し、戦場を後にした一行。
移動の最中、戦場を襲った黒い光について意見を交わす。
リーヴェ「……あの光はなんだったんだろう」
ラソン「恐ろしい攻撃だったよな」
果たして攻撃で合っているのかは不明だが、大勢が消えてしまったのは事実だ。
リジェネ「彼らが持っていた武器の類はそのまま残されてました。見事に人だけが消えて……」
クローデリア「でも、砂漠にあったサボテンも一緒に消えているようでしたよ」
ニクス「あれは、おそらく生物を負の活力に変換する物だろう」
ラソン「本当かよ!?」
衝撃の事実を予測する彼に皆が注目する。
彼とて詳細を知っている訳ではないが、入手できている情報を整理すれば十分に考えられる事だ。負の活力を回収する任務があると聞く。やっていたのは殆どホレスト郷とその部下だが。
後、死体も一緒に消えているが、これは戦場という状況下だったからという可能性が高い。建物などは普通に無傷で残っている。少なからず活力の発生源になっていた所為で、一緒に引き込まれたかもしれなかった。アレで割とざっくりした照準なのかも。
兵器の開発者がコボル郷だろうと聞いた一行は、その人物について聞いてみる事にする。
ニクス「彼は生物を専門とする科学者で医者だ」
マッドな一面もあるコボル郷は、作戦内でも数々の合成生物を作り送り込んでいた。ニクスにとっての第一印象も「研究ばかりしている人」なのである。
また非協力的なハレスティアーノ郷に代わり、機械兵器方面の責任者も行っているようだ。
初老だが獣人種のため身体能力は高い。しかし彼が戦う所を殆ど見なかった。先代の時代ならばともかく、今の若い衆はほぼ知らないと言っていいだろう。
斯くいうニクスも彼の戦闘スタイルについてはよく知らないのであった。
ラソン「マジか……今まで戦ってきたアレらがコボル郷って奴の仕業だったのか」
セレーネ「あんなの連れこまないでって感じよね」
ジャイアント・ヴェルスモールや、プテリュクスオプスなどの話を聞いて気落ちする面々。今までに対峙したアレらすべてが奴の仕業だったなんて……。
話が脱線したが、今はそれよりも――。
リジェネ「とにかく、人を負の活力に変換するだなんて許せないです!」
リーヴェ「ああ。なんとしても止めよう」
全員「ああ」
揃って同意し先を急ぐのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【サブエピソード63 遠い存在】
アルラートと行動を共にする事になった一行。選んだルートによって若干異なるが、挨拶を交わし、彼は最後にニクスへ声をかける。
アルラート「初めまして。ニクス君」
ニクス「どうも」
相手が王子だろうと関係なく接するニクス。今は敬語を使う必要もないと判断したのだろう。まぁ、リーヴェやラソン達にも旅の間は普通に接している。それと同じだ。
彼が暗黒人である事に最初は驚きつつも普段通りに接する。むしろ興味がわくというものだ。彼が持っている武器や道具も天空界では殆ど使われない物ばかり。存在はしていても、満足に使える人が果たしてどれだけいる事か。それを難なく使いこなす彼に関心する。
アルラート「君の武器は扱いが難しそうだね」
ニクス「そうか」
アルラート「…………」
話が続かない。それでもめげずに話題を振った。けれど、淡白な返答が返ってくるばかり。第一印象通り寡黙な人物のようだ。
アルラート「そういえば、何度かリーヴェ達がお世話になったようだね」
ニクス「そんな事はない。助けられたのはこっちだ」
アルラート「そうなのかい?」
ニクス「ああ」
また話が止まってしまった。
どうしたものか、と困っていると彼のほうから呟くように声がかかる。
ニクス「……仲がいいんだな」
アルラート「ん?」
ニクス「兄弟なんだろ」
アルラート「ああ、なるほど」
そういう事か。先程の挨拶云々のやり取りを見て感じたのだろう。
確かに再会を喜び合ったり、現状報告をしたりした。個人的にも仲が悪いとは思っていない。妹や弟達は全員大好きだ。
ニクスには彼らのやり取りに、何か引っかかりを感じたのかもしれない。
でもここは素直に「自慢の兄弟達だよ」と答える。皆大切で大好きな存在だ、と。
けれど彼は、アルラートの言葉を受け表情を陰らせる。いや、そのように感じただけだ。はっきり顔が見えた訳じゃない。
なんだか少し寂しそうだ。憂いを帯びているようにも感じ取れる。
アルラート「その様子だと君は一人っ子かな。兄弟が羨ましい?」
ニクス「…………」
ますます表情が陰ってしまう。失言してしまったか。
アルラート「すまない。聞いては不味かったかな」
ニクス「いや、羨ましいよ。……俺にも兄がいたから」
アルラート「…………」
ニクスの言葉に、今度はこちらが沈黙する番だった。彼の様子から悲しい背景を察したからだ。咄嗟にかける言葉が浮かばない。ただ一言、謝罪する以外に。
沈黙する2人。その静寂を破ったのは1人の呼びかけだった。
ラソン「2人とも何の話してるんだ……って、どうしたんだよっ」
ニクス「…………」
アルラート「いや、彼に暗黒界の事をいろいろと教えて貰ってね。少し驚いてしまっただけだよ」
ラソン「へぇ、オレにも教えてくれよ」
ニクス「機会があったらな」
適当に話をごまかし、皆のもとへ戻っていくラソンを見送る。
2人も追うために歩き出した時、アルラートはニクスの背に声を投じた。
アルラート「ニクス君、これからよろしく。頼りにしてるよ」
ニクス「ああ、こちらこそな」
それだけを伝えて2人は仲間達のもとに戻るのである。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
未だ戦場の様子を眺めるホレスト郷。先程よりも十分警戒して見下ろしている。その表情は見事に冷めていた。
ホレスト郷「ふーん。そうなるか」
正直面白くない。期待外れだ。
本当にどいつもこいつも役立たずばかりで嫌になる。
ホレスト郷(アルフレド郷配下の軍が、頃合いをみて撤退してたのは想定内。けど例のアレが見つからないか……)
万が一に備えて手に入れておきたい所。目的を達成する上でも必要になる可能性が高い。問題点はあるが……。
ホレスト郷「おっと、いけない」
そろそろあちらの様子を見に行かないと。まさか彼がヘマするとは思いたくない。だが、絶対がない以上は確認しなければ。もしもの時はアレの事もあるし……。
ホレスト郷は意気揚々と次の目的地へ向かう。
首都近く、1人残されたデリス郷はまだそこにいた。彼が消えた場所を見つめ座り込んだまま。頭に浮かぶのは彼との思い出と後悔。
学生時代は交流していたのに、大人へなるにつれて会うのが恥ずかしくなっていった。もっとああしていればよかった、こうしていればよかったと考えてしまう。
デリス郷「ルーシル……」
もっと早くに言っておけばよかった。こうなると知っていれば素直になれたのに。
でも、もう遅いのだ。彼は消えてしまった。自分の目の前で。
ベリーニ郷(声)「アレイシア。この宝石に誓って、君は僕が守る」
脳裏に響く言葉。胸を締めつけられる思いだ。
デリス郷「こんな形で、約束を守って欲しくなかったわ」
本当にどうしてこんな事になってしまったの。
いいえ、わかっている。自分の所為だ。自分を庇ったから彼は――。
けれど思わずにはいられない。本当に誰の所為なのだ、と。本当に自分だけが悪いのかと。恨まずにはいられない。本当に彼を殺したのは――。
デリス郷「………………」
涙を拭い、静かに立ち上がる。やるべき事は決めた。例え許されないとわかっていても、もう止める事はできないだろう。
デリス郷は秘めた決意を胸に歩き出すのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アートルム神殿跡を目指し、道中にある首都を訪れた一行。
先を急ぐ中で互いに情報交換を行う。別れてからお互い進展があった。一行のほうは説明するまでもない事だが、アルラートは独自に調べてきた情報をリーヴェ達に伝える。
アルラート「さる人物から情報提供があってね。私は賢者の館に向かったんだ」
オウルの森の北かかる橋を渡って行ける賢者の館。
周囲をぐるりとヴァルハライヤ山脈に囲まれ、すぐ近くにはイ・グゥの仙岩郷がある険しい山中の窪地に建っている場所だ。手前にも森が広がっており、空でも飛ばない限り到着には時間がかかる。
あの辺りは霧がかかる事もあり、下手をしたら迷子になるような場所。
非常に広大な館内は、鍵がかかっているなどで入れない場所も多かった。時間がないのもあって隅々まで調べられた訳ではないと先に伝える。しかし、情報の裏づけは取れた。
アルラート「2人とも、我ら天空人に伝わる宝物については知っているね?」
リーヴェ「はい。神滅剣アスタリスクですね。他にもあったようだが……」
ラソン「おお、強そうな響きだな」
明らかに勇者が使う剣という印象にラソンが反応を示す。
しかしすぐに、苦笑いを浮かべたリジェネが補足を加えた。
リジェネ「それが全然そうでもないんですよ。儀礼用はでないらしいですが、普通の魔物に対して満足に傷を負わせられないと記録が残ってて」
セレーネ「ええ!? 話の感じからして国宝級っぽいのに」
リジェネ「はい」
2人「嘘~」
ラソンとセレーネが揃って声を上げる。まったく同じ反応だ。ちなみにその剣、ステータスが特別凄い訳ではなかったりする。
アルラートが咳払いをして本題に戻す。「まぁ、あの剣は特別な役割があるからね」と前置きして……。
アルラート「どうやら暗黒人側が彼の剣を探しているらしい。という事は……」
リーヴェ「彼らにとって、都合の悪い物の可能性が高い?」
ニクスも陛下が剣を求めているのを聞いた覚えがあるという。
アルラート「そう言う事だ。調べてみれば、あの剣には本来の使い方とは別に能力があるらしいんだ」
リーヴェ「能力? 私達でも知らない秘密があるなんて」
アルラート「今となっては使う機会もないし、剣自体も紛失してしまっているからね」
神滅剣アスタリスクは「宝物神殿 ダーアルト」に保管されていた筈だ。
しかし、とある騒動の前に紛失してしまった。リーヴェははっきり覚えていないが、他の2人はよく覚えている。
本来は大騒動になる所だった。だが、そうなるより早くとんでもない事態が起きたのである。騒動については今は語るまい。
今重要なのは、この剣が神々の力を行使する際に必要だという事実だ。
この事実にはリーヴェを始めとする全員が驚愕を示した。
セレーネ「神々の力って具体的にはどんな?」
アルラート「そこまでは調べきれなかった。だが、私達の力は……」
リーヴェ「そうかっ」
唐突に大声を上げるリーヴェにセレーネが更に驚く。
天空人の持つ「マナを操る力」は神々の力が大本になっている。彼らの遠い子孫だからこそ使える力なのだ。個人差はあれど、マナを基本に回るこの惑星でその力の影響力は計り知れない。
その延長線ともなれば――。
リジェネ「上手くすれば神樹を復活させられるかも」
うーん、なんだか所々怪しいような……。
書いている内に不安になってきてちょっと自信がないです。
ミスってても気づかない事が多いからなぁ。どうか変な所がありませんように。




