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第132話 次の一手

アルラート「気を引き締めろ! まだ終わっていないぞっ」


 呆然と立ち尽くすリーヴェ達の前に上から声が飛ぶ。アルラートの声だ。

 声に反応して視線を上に流すと、単騎で急降下してくる影が見えた。そのずっと後方には別の影がちらつく。天馬を駆り、迫力満点の形相で突っ込んでくる兄の姿。

 程なく、彼は一行の頭上近くまでやって来て声を張り上げた。


リーヴェ「兄上、私はっ」

アルラート「話は後だ。すぐに準備をしなさい、リジェネも」

リジェネ「え? あ、はい……って何を?」


 有無を言わせずリーヴェを自分の天馬に同乗させる。続いてリジェネにも声を投じ、上を示してこう言い放った。


アルラート「先程の光、次がくる。今度は我々で防ぐぞ」

ニクス「次がくるだと。不味いな」

ラソン「ああ。あんなのもう一発食らったら……」

セレーネ「冗談じゃないわよ。皆消えちゃうわ!」


 彼の言葉に驚愕し次々と声を上げる。

 動揺を隠せない。もしも彼の言っている事が真実ならば、ただ事ではなかった。止めないと、本当に全滅だ。


アルラート「そうだ。だから止める!」

ラソン「止めるって、できるのかよっ」

アルラート「確約はできない。だが、可能性はあるさ」


 今から全員を逃がすのは不可能である。時間が足りないだろう。

 不安の色を露にする面々にアルラートは告げた。我々、天空人の力をフルに使うと。残っている天空人全員の力を合わせれば、一発くらいは防げる筈だとも。

 彼の言葉に、リジェネは全身を小刻みに震わせた。膝が笑っている。


リジェネ「あれをやるんですか? 僕、資料でしか見た事ないです。やった事ないのに」

アルラート「安心しろ。私も初めての試みだ」

リジェネ「ええ!? むしろ不安ですよ」


 どこが安心なんですか、とリジェネが叫ぶ。

 その声を聞きながらリーヴェも不安を覚えていた。アレか。かなりの重労働だな。なんたって(かなめ)は御子である自分だ。

 近い事をやった経験はあるが今回は状況が違う。現状では天空人の人数が少ない。しかも今までと違って皆、神官ではなく騎士だ。力を合わせた事だって当然ない。

 なによりも一番の問題は……。


リーヴェ「兄上。防ぐと言っても、防御の魔法陣はどうするんですか」

リーヴェ(私は防御の魔法なんて使えないし、魔法陣の知識も怪しい)


 記憶にない訳ではないが実戦で使った事がない。規模も大きいし、別の作業と並行して展開できるかどうか。


アルラート「魔法陣は私が主導でやる。得意分野ではないが何とかするさ」


 時間が惜しい。上空へ移動しながら会話を続ける。

 不安そうに、けれど信頼を含んだ視線を受けながら上昇していく。リジェネも並走しており、同じく見上げてくる視線を浴びていた。


リーヴェ(やるしかない、か)


 こうなったら意地でもやり切ってやる。まだ疲れが残っているが関係ない。

 2騎の傍に、他の竜騎士達が集まってくる。遠方に数騎を残して全員集合だ。離れている数騎も合わせられるギリギリの射程内に入っている。

 近づいてこないのには何か理由があるようだ。今は保留しよう。


アルラート「皆、覚悟はいいか!」

竜騎士隊「おおっ」

竜騎士「神官に代わりきちんとお支えます」

竜騎士隊「我らの底力、見せてやるのだ!!」


 声を張り上げ、竜騎士隊が天馬を囲むように円を描く。リジェネもその中に加わる。

 呼吸を整え魔導書を準備するアルラート。彼はリーヴェに声をかけ魔法陣の展開を始める。大き過ぎる所為か、少しばかり時間がかかる。

 リーヴェもスタンバイし、竜騎士らが祈りを捧げ始めた。


 彼らの祈りに呼応して周囲のマナが澱めく。しばし揺らぎ、徐々に集まり始めた。集まってきたマナを意志の力で御子に送る。

 リーヴェはそれを受け取り、魔力=MPに変換して魔法陣に注いでいく。

 その様子を見上げ、この場にいるすべての人がかたずをのんで見守った。今、目の前で凄い事が起きようとしている。

 戦場を覆う程に巨大な魔法陣が描かれていく。


セレーネ「あっ、見て! 空」

ニクス「来たな」


 魔法陣の向こう、上空から例の光が迫っている。視認できる距離まできた。徐々に大きくなっていく。

 迫る危機感に焦りつつも、リーヴェは意識を集中させ着実に力を注ぐ。リジェネや竜騎士隊も恐怖と戦いながら祈り続けた。

 アルラートは全身全霊で最後の仕上げに入る。後少しだ。


 光が到達する直前、最後の部分が埋まり魔法陣が完成。発動者全員で渾身の気力を注いで衝撃を受け止める。全身に凄まじい負荷がかかった。

 魔法陣によって形成された結界が見事に光を無力化。ここまで数秒の出来事である。


兵士「た、助かったのか?」


 ぼんやりと呟く声。まだ少し放心しているようだ。

 全力で光線を防いだ天馬と竜騎士隊が降りてきた。蹄が地に着いた後、アルラートの手を借りて下馬する。ラソン達のもとへ歩み寄り口を開く。


リーヴェ「皆、無事か」

ラソン「ああ。おかげさまでな」

セレーネ「本気で死ぬかと思ったわ。ホントありがとう!」

クローデリア「よかったですぅ~」


 笑みを浮かべて駆け寄る仲間達。涙目で抱き着くクローデリア。

 一足遅れて手綱を引いたアルラートも歩み寄る。


アルラート「喜ぶのはまだ早いよ。敵が次の行動を起こす前に手を打たないといけない」

リーヴェ「そうだ。あの光がどこから来たか、わかる者はいるか?」


 リーヴェは一同を見回す。生憎自分は、目の前の事に意識が向いていたため覚えていない。

 それは他の面々も同じで直接見た者はおらず。辛うじてアルラートらが、南側から飛んで来たと証言するのみだ。そこから推測できるのは――。


ニクス「おそらく神殿跡だろうな」

リーヴェ「神殿跡……という事は例の作戦だったという事か」


 ニクスが静かに頷く。他に心当たりもないな。

 更に、アルラートがいくつか補足を加えた。先程の光線は暗黒人が作った兵器であり、一度に2発撃てるらしい。1発目は着弾、2発目は防いだという事になる。

 そこまで話した所で問題が起きた。話を聞いていた者ら騒ぎ出したのだ。


兵士A「お、おい。まだアレが来るのかっ」

兵士B「冗談じゃない。早く逃げねーと」

兵士C「そうだそうだ。こりゃ戦ってる場合じゃないよ!」


 言葉はあっという間に戦場全土に伝わり、動揺と混乱から人々が騒めきあいパニックを起こす。我先にと逃げ始める者まで現れてもみくちゃ状態に……。


セレーネ「ちょっと、皆落ち着いて」

兵士「落ち着いてなんかいられるかよっ」

ラソン「ヤベーな。完全に呑まれてる」


 一行の制止など何の力も持たない。騒動は大きくなるばかりだ。これでは逃げるどころではないだろう。互いにぶつかり合い、誰もが移動できない状態になっていた。

 一度落ち着かせないと事態が悪化する。しかし、リーヴェ達には成す術もない。どうすれば。


???「皆の者、気を鎮めよ!」

リーヴェ「っ、あれは」


 上空から残っていた数騎が舞い降りてくる。

 驚くべきは、彼らの龍に同乗している人物だった。小さな身体が戦場の地に下り立つ。その傍らにはたった今呼び出された獅子の妖精。燃えるような美しい鬣が映える。


 降り立った人影は手に持っていた鞭を大きく振り上げ、何もない砂上に叩きつけた。しなやかで力強い音が鳴り響き、同時に獅子も咆哮する。

 その音波に乗って戦場に彼のスキル効果がもたらされた。発動したスキル名は「軍師の采配(さいはい)」、全状態異常と暗闇、衰弱を予防する技だ。

 効果を受けた者から落ち着きを取り戻していく。全員の注目が現れた彼に集中する。


セレーネ「皇帝陛下! なんでっ」

リーヴェ「どうして皇帝陛下がこちらに?」

アルラート「彼は私達と一緒に来たんだよ」

リジェネ「ええっ」

皇帝「皆、遅くなってすまぬ」


 驚きを隠せない一行を前に、堂に入った体の皇帝は遅れた事を謝罪した。いやいや、そもそも来るなんて知らないぞ。

 戦場に皇帝が来るなんて、まさか帝国が動いたのか?

 不安を覚えるリーヴェらの様子に気づいた彼が先手を打つ。


皇帝「軍は動かしておらん。あれは国を守るためのものだ」

ラソン「ではお1人で来たのですか。さすがに危険すぎます」

皇帝「バカを言うでない。護衛くらいは連れておる。彼らにも要請してな」


 そう言って竜騎士隊を示す。確かに彼とは別に帝国の近衛衆がいた。竜騎士隊も護衛の一部らしい。

 話によれば、皇帝のもとを訪ねたアルラートはある依頼を求められた。彼が訪れた時には既に事情を把握しており、しばし検討の時間を要した後の決断であったという。


 臣下と軍に国の防衛を託し、護衛を連れて戦場に行く決断をしたのだ。本来であれば門を閉ざして引きこもっていればいい。

 しかしセレーネの存在と、アルラートの必死の交渉。情報から得た推測で自身の力が必要になるやもしれないと判断したのである。実際、彼の予防技のおかげて助けられた。


 だが、戦場に向かう上でひとつ困った事が起きる。

 それは移動手段だ。当然ながら陸路は不可能。門を開ける訳にはいかない。かといって水路は直接南に向かうものがなく、空路を使うほかはなかった。

 そこにアルラートが参上した次第である。竜騎士隊の存在を知っていた皇帝は彼らに護衛兼、移動を依頼したのだった。


セレーネ「そうだったんだ」

皇帝「ところで、ベリーニ殿を知らぬか?」

ニクス「奴も一緒だったと言うのか」

皇帝「うむ、条件つきで同行を許可したのだ。しかし先程反応が消えてしまって……」

リジェネ「反応、ですか」


 どうやら、彼の身体にはある種のマーキングが施されているらしい。牢に入れられていたのだから当然と言えば当然か。


 マーキングは対象者の状態に関わらず、存在していれば反応するというもの。それが消えたと言う事は、身体ごと何処かに消えてしまったのを意味する。あるいは受信できないような場所にいるか。

 ちなみにこのマーキングは皇帝の秘術である。一度つければ解除しない限り効果が続く優れモノだ。


リーヴェ「申し訳ありません。私達は彼に会ってないんです」

皇帝「そうか。無事だとよいのだが……」

近衛「それよりも陛下」


 近衛兵らがいつの間にか傍に控えていた。そっと先を促す。この言葉に応じて話題を切り替えた。


皇帝「ベリーニ殿の話では、次の充填まで相当の時間がかかるとの事。今の内に本体を打たねばならん」

アルラート「どうやら相当の射程を持っているようだからね。ここが済んだら次はどこに向けられるか」

リーヴェ「まさか奴ら、無作為に人を消すつもりなのかっ」

セレーネ「信じらんない。いくら何でもやり過ぎよ!」


 セレーネが溜まらずに憤慨する。この場にいる全員も同じ思いだった。


皇帝「ここは我らが引き受ける。其方達は大本を叩け」

リーヴェ「はい、わかりました。ここを頼みます」

皇帝「任せよ」

アルラート「私もリーヴェ達と行くよ。陛下よろしいですね?」

皇帝「許可する。其方も行けば確実であろう」

アルラート「ありがとうございます」


 今後の目的が決まる。アルラート(Lv45)がゲスト参戦した。

 一行はその後の対応を任せてアートルム神殿跡へ急ぐ。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

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