空間魔法
「じゃあこうしよう! とりあえず今1つ決めるから!
気になるモノがあったら、即決するから! それでどうだ?」
「もご~、もごもごもご、もごもごもごもご?」
「何言ってるか、全然判らない! とりあえず布団から出てくれよ!」
そう言ったら、カメみたいに首だけ出してきた。
「え~、今日は1個だけなの?」
「パッと見て気になったのが1個だけだったんだよ。
本当は全部見てから気になるモノをピックアップして、バランス考えながら決めるつもりだった。
でも早い方がいいんだろ? だから1つづつの方が早いだろ?」
「う~ん、まぁしょうがないか。
パパパッと4つくらい選べば良いのに……優柔不断はモテないぞ……ヘタレだなぁ……」
まだブツブツ言ってるのが、腹立たしい。
良い案を思いついたので、実行してやろうと思う。
「まあ今は1つでいいや。で、何にしたの?」
「その前に確認。今から1つ選ぶけど、このリストに書いてあるモノならどれでもいいんだよな?」
「書いてないモノなんか無いけどね。書いてあるモノならどれでもOKだよ?」
「本当に?」
「本当に。だから早く決めてよ~」
「判った。決めたよ」
「本当? 何? どれ? 言ってみな?」
俺は魔法のリストにある一行を指差して言った。
「空間魔法をくれ」
「空間魔法ね。了解。4つあるけど全部? それともそれか一つ?」
そう、リストにはこう書いてあるのだ。
空間魔法
門を繋ぐ:コネクト
物入れ:アイテムボックス
手紙を送る:メール
壁や天井に張り付く:シール
俺は一番上の「空間魔法」と書いてある所を指差しながら言ってるのだ。
「一つだよ。空間魔法。これをくれ」
「? 何言ってるの? バカだから判らない?」
俺はリストを見せ、再度「空間魔法」という文字列を指差しながら言ってやった。
「これだよ。空間魔法。こ~れ」
「? これは『項目』と言うモノなの。空間魔法という分類には下記の魔法がありますっていう項目。判る?」
「さっき言ったよな?リストに“書いてある”モノならどれでもいいって。書いてあるぞ」
「いやいや、何言ってんの?!」
「書いてあるだろ?」
「たしかに書いてあるけど、だからこれは『項目』であって……」
「しかもさっき『空間魔法くれ』って言ったら『空間魔法ね。了解』と受諾されたぞ?」
「い・いやいやいやいやいや! そういう事じゃないから! おかしいから!!」
「しかも俺はリストを指差しながら言ったぞ?」
「見てないし!!」
「お前が布団の中に潜ってるからだろ? ちゃんとしてれば見たはずだ」
「へりくつ! それはへりくつ! しかも罠にハメた!! そんな横暴な事は許されません!!」
「へ~、じゃあ問い合わせる事にしよう。
イイクラさ~ん、閻魔様~、俺が悪いですか~? アサイさんが悪いですか~?」
天井を向いて叫ぶと、すぐにアサイさんの携帯電話が鳴り出した。
アサイさんは布団から飛び出して、ベッドの上で正座して電話に出た。
「はい、アサイです! 今のはダメですよね? ……えっ? ……しかし……そ・そうですけど。
はい、はい、はい……えっ! ちょっとそれは! ……いやっ! 許してください! 許しっ……」
また会話中に切れたようだ。
携帯電話をポトリと落として、放心状態のまま前に倒れていった。
結局どうなったんだろうか?
ちょっと声をかけにくいが、聞かなくては事態は前進しない。
「ど・どうだった?」
首だけをこちらにギギギと向けるアサイさん。ちょっと怖いぞ!
「あなたの言った事はへりくつだと。しかし私にも非があると。しかも元々はこちらに非がある話。
なので私の給料から天引きして、さきほどの要求を受けると。
でも今回だけ特別なので、次からはちゃんと選んでくれと。
修正したリストを送ると。★マークのついてるモノだけを選んでくれと。以上ですと」
うわ~機械みたいに抑揚なく喋ってるよ。表情も変わらないからすげ~不気味だ……。
「そ・そうか。判った。ありがとう」
アサイさんはそのまま泣き出した……。
無事10個中の1個で空間魔法4つをゲットできた。
けど、悪い事したかなぁ……。




