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嘘ばかりの貴方を愛すなんて誰が出来るの?  作者: 夏見颯一


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1.【始まりは妹のタレコミ】

※この作品は後半がとてもカオスなコメディです。

他の作品とは違って謎はなく、コメディです。


 王都は何やら騒がしいとの噂を聞きますが、私の住む王都から離れたアステリア伯爵領は至って長閑なものでした。


 気分転換に窓を開けると、鳥の囀りの奥から牛の鳴く声。

 人間より動物の方が遥かに多い田舎貴族の領地ですから、これ自体は至って普通の事です。

 そんな間延びした牛の鳴き声を遠くに聞きながら本を広げる、このゆったりとした時間の流れがいつまでも続くように思えたのですが、


「お姉様の婚約者、聖女様の妹君の婚約者になっておりますよ!」


 王都から帰ってきた妹の話を聞くまでは。




 死因は記憶になく一切不明で、前世などほぼ語る部分のない何ら面白みのない転生をして、早18年。

 私は華やかな王都よりも領地を好んで、一年の大半を領地でのんびり生活をしています。

 実年齢に生前の年齢を足すと結構枯れた年齢になるからという訳ではなく、子供時代から細かく腹の探り合いが始まる貴族同士の交流に、早い段階で脱落したとはっきり言っても良いかもしれません。


 転生ものを読んでいると、前世の大人の知識を使って上手く立ち回れそうに思うのですけどね、そんなに甘いものじゃないのですよ。

 普通にぼんやりとした女子大学生でしかなかった私の中途半端な賢さで何が出来るというのでしょうか。出来る訳ありません。寧ろ子供社会に混沌をもたらしただけだったので、自主的に王都に行かないようになりました。

 その最終結果として、私には貴族令嬢になった感覚も薄いのですよね。


 じゃあ、田舎に引き籠もったら転生者の能力を生かして何かを作り出せるかと言えば、私は元々ダラダラ生きていた方です。これと言って何か革命をもたらす知識なんて欠片も持ち合わせてはおりません。

 それに、多くの知識を持って生まれた転生者は、この世界には過去にも現在にもそれなりにいたのです。

 精々私が出来たのは、彼らの作った物をちょこちょこ改良するだけでしょうか。それもほぼ職人さん任せなので、私の功績と言えるものではありません。


 ただ、実際のところ、これくらいが丁度良いかったみたいです。

 あまり活躍すると社会構造との軋轢と高位貴族達の欲望に巻き込まれ、命の危険に晒されます。非常に活躍した転生者は概ね非業の死を遂げているという話も聞くのですよね。

 この世界は思ったよりも危険に満ちております。


 転生しただけの私には何の義務もなく、当然監視もありません。

 今日は何の本を読みましょう?


 とても穏やかでのんびりとした空気に一息ついていると。


「お姉様!」


 ドタドタと廊下を音を立てて走ってきた妹は、ノックもなく私の部屋の扉を勢いよく開けました。

 そう言えば、今日は王都で生活している妹が帰ってくる日だった事を思い出しました。


 ちょっと活動的すぎる傾向がある妹は、父に矯正とばかりに、王都にある特に厳しいとされる淑女学校に入れられております。

 これで少しくらいは礼儀と常識を身に付けて帰ってくると思っていたのですが、どうやら無駄だったようです。

 行く前と全く変わらない姿に、私は眉を顰めました。


「エウリシア、部屋に入るときはノックをしなさいとあれ程……」

「礼儀の話は後で聞きます! お姉様の婚約者、聖女様の妹君の婚約者になっておりますよ!」


 王都の噂は田舎に届くまでは時間がかかります。

 聖女達が現れた事はギリギリ知っていましたが、妹が言う王都に広がっているニュースは今初めて知りました。



 取り敢えず一言で言うなら、最悪な気分です。









三話一挙公開です。

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