あなたを
「レオン!」
「……アリア様?」
振り返ると、そこには銀髪を乱しながら駆けてくるアリアがいた。
「なんで」
「レオンとヴィクトルが帰ってこなくて、そしたら戦ってるって聞いて。いてもたってもいられなくなって……! 私が無理言って連れてきてもらったの」
周囲を見渡せば、大勢の応援が来ていた。城の中で疲れ果てた兵士たちにかわって魔物たちに魔法を放ち、弓を打っている。
「私は怪我した人たちを治すから。レオンは一回休んで」
「……でも」
「でもじゃない。私が来たからにはちゃんと休んでもらうから。レオンは優しいから、責任を感じちゃうから、私がちょっとでも減らせるようにここに来たの」
「それは……」
♦♦♦
「アリア様! ちょっといいですわ?」
「メイベルさん。大丈夫? 息が凄いけど」
「大丈夫ですわ!」
アリアが兵士や町の人の治療を終え、城の部屋の中で休んでいた時、オレンジの髪を束ねたメイベルがアリアの元に訪れていた。
メイベルは息を整えて、ふぅと息を吐く。
「私、謝りに来ましたの。アリア様のこと、何にも分かっていませんでしたわ」
「えっと、どうしてそう思うの?」
「先ほど、アリア様のお友達の方とお会いしましたの」
「お友達……? レオン……黒髪の男の子のこと?」
「ですわ。私、アリア様のお友達になるようお父様に言われて……少しでもアリア様の事を知れればと、アリア様の部屋の近くでうろうろしていたレオンさんにアリア様はどのようなお方なのか。お話を聞いたのですわ」
メイベルはドレスの裾をつかんでいる。
私はメイベルさんにどういった理由があったにしても、孤立していた私に最初に話しかけてくれたことにとっても感謝している。だから申し訳なく思う必要はない。でも、レオンが私のことをどう言ったのか。どう思っているのか。知るチャンスだ。
「……なんて言ってた?」
「アリア様はとても優しくて、誰でも助けようとする。アリア様は強いから、助けられなかった責任を一人で背負ってしまう。そして、アリア様はそれでも誰かを助けようとするから、傷ついてしまう。だから、俺が――ってここは内緒にするように言われていたんですわ!」
「……そっか、うん。ありがとう」
その先の言葉は何となく分かる。でも、ちょっとだけむかつく。誰に対しても優しくて、守ろうとして、いつか離れて行ってしまいそうな彼だから。
♦♦♦
あなたが私を守ろうとするなら、私はあなたが死んでしまわないよう、その負担を取り除こう。
「だから、助けに来たよ」
「アリア様……分かりました。少し休みます」
「うん」
二日目はなんとか過ぎ去り、三日目の昼。
「やった! やったぞぉ……!!!」
あちこちから歓声が上がったのは、圧を放っていた蛇が音を立てて地面に倒れる姿が見えたからだ。昨日から姿を見せないヴィクトルが、ついに倒したのだ。
「やった! やったねレオン!」
「はい! アリア様!」
互いに手を握りしめあう二人。涙をためるアリアに、レオンは一度深呼吸をして、
「アリア様、この間の返事をしてもいいですか」
「……うん」
わずかに目を下げるアリアに、レオンは膝をついた。
「俺をアリア様の騎士にしてください。あなたがすべて背負うなら、俺がその分守ります。そうすれば、大勢の人を助けられる」
「――っ、よろしくね」
私が全部助けようとしたら、レオンは私を守ってくれる。ただ、それだけだったのに。
レオンのためにみんなを助けただけなのに。
心が罪悪感でちくちくと痛むと同時に、跳ね上がる喜びを感じていた。
手で口元を抑えて、跳ね上がる口角を隠す。涙を浮かべて、レオンの目を向けさせる。
「私の騎士になっても、友達のままだからね」
レオンと主従の関係を結ぶ。それも悪くない。でも、距離が遠ざかるのは嫌だ。
だから私は、レオンが私に愛想をつかさないように。
これからも、人を助けよう。
でもいずれ、私達が成人した時には……
私だけの特別にしてみせる。




