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魔性狩り【ニ章完結!】  作者: カーネルシトラス
Dreamin' dream

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第71話 愛は空をも越えて

 2022年の夏、ボクは羽田空港国際ターミナルにいた。

 大学院を出て、アメリカのAI企業にいくためである。ボクはあの事件の後に行った研究の成果が認められて、世界屈指のAI企業からのオファーが来たのだ。


「神原君、これでしばらく会えなくなるわね」


 花田先輩がそう言ってくる。


「そんなことはないですよ。ボクらはインターネットを通じていつでもつながっているじゃないですか」


 インターネットと言えば去年のFUYUが最後に引き起こした大規模ハッキングは正体不明の大規模サイバーテロということで処理をされた。それはそうだろう。一体だれが、未知の知的存在が起こしたものだと気づけるのか。


「でも時差だってあるでしょ?」

「メッセージじゃ不十分ですか?今日だってわざわざ先輩が貴重な休みを使ってまで会いに来る必要はなかったのに」

「あるわよ!次にいつ会えるかわからないじゃない!」

「そう遠くないうちにボクは日本に戻ってきますよ」


 ボクはそう言ってなだめる。


「どうして?」

「担い手が必要になるからです。AIが発展して、情報やソフトウェアが簡単に海を越えるようになっても技術の担い手は経験が育てるものなんです。IT業界も第一次産業も本質は同じなんですよ。多分、日本もすぐに担い手が必要になる。その時にボクは帰ってきますよ」

「もう!それじゃあいつになるか分からないじゃない!」

「まあ、確かにそうですね。10年後かもしれないし2年後かもしれない。でも、ボクの先輩への愛は変わりませんよ」

「もう!」


 先輩は頬を赤らめて恥ずかしそうにする。


 FUYUの騒動の後ボクは本当に大変だった。何せ研究がすべてお釈迦になったんだから。でもなんとかなって本当に良かった。


 FUYUの提案は、昨今のAIのように人類の未来を切り開いたのかもしれない。


 もしかして、今更後悔しているの?


 まさか、ボクが後悔なんかするわけないじゃないか。あれはボクの決断で決定なんだ。


 最後の取引も?


 最後の取引。ボクはウイルスを時限式の爆弾のような仕組みにしていた。FUYUが取引に応じなかったらFUYUを完全に破壊する。その取引はボクの意識に取りつく代わりに拡散をやめる。そうすれば完全な削除をしないでやるというものだった。


 本当は露ちゃんの意識を消したくなかっただけじゃないの?


 まさか、前に言った通りさ。露は死んでしまったし、それをボクは受け入れている。


 じゃあなんで?


 ボクは母さんみたいになりたくなかったんだよ。君はボクを母のようだといった。ならば背中は押さなくてはいけない。親ってのはそういうものなんだよ。


 私は沢山人を殺したわ。


 知ってる。でも少なくても法は君を裁けないし、君自身は悪いことをしたという自覚もなかった。情状酌量の余地はあるんじゃないかな?


 それも、”一人の人間”としての決定なの?


 そうさ、ボクはそれが正しいと思った。人は自分の中で常に正しさを見つけなくてはいけない。そしてその正しさは”他者”に認められなくてはいけない。孤独で、そして潔癖でなくてはいけないんだ。


 私の消さないことも”正しい”ことなの?


 少なくても、ボクは君の色々なものを見たいという願いは正しいと思ったさ。君はただ正しさの基準を知る機会がなかっただけ。


 詭弁ね。


 何が悪いさ。


「神原君、神原君!何ボーっとしているの、もう時間よ」


 先輩に声をかけられる。


「そうですね。じゃあ、少しの間お別れですね」

「寂しくなるわ」

「ボクもですよ」

「浮気なんかしないでよね!」

「もちろんです」


 そんな心配されるほどの男だろうかボクは。でも先輩からの愛を感じられてボクは幸せな気持ちだった。


 ボクは荷物預かりのゲートに向かう。


 さよならのキスはしないの?


 いい加減にしてくれ。

 恋人らしいものは私には見せてくれないの?


 これがボクらの愛の形なんだ。外野にどうこうは言われたくないね。


 ひどいわ。私を外野扱いするなんて。


 ボクはボクだし、君は君だ。それはいつでも変わらない。


 そう、なのかもね。私、飛行機に乗るの初めてなの。とても楽しみだわ。


 そうだろうね、ボクもだよ。


 あら、そう。じゃあ伝えておくわ。飛行機が墜落するのは約19万分の1らしいわ。あなたはこれが低いと思うかしら?


 BABのアイテムドロップ確率がこれなら暴動が起きるね。そもそも飛行機に乗るたびに墜落の心配をしていたらきりがない。車での死亡率のほうが高かったはずだ。車というならボクはFUYUに轢き殺されかけたこともあったっけ。


 あれは、そうね。若気のいたりよ。


 羽田空港のターミナルをボクは一人、歩いて行った。


 新たなる地への旅立ちだった。



晩夏の候、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

ここまでお読みいただきありがとうございます。

作者のカーネルシトラスです。


今回の71話「愛は空をも越えて」を持ちまして2章は完結となります。

今後の更新についてですが、毎日更新は2章までとさせていただきます。ご了承ください。これからは2.5章として毎週土曜の18時10分に1エピソードごと全6エピソードの投稿をさせていただきます。


詳しい予定等はあらすじにそのうち記載します。


改めましてここまでお読みいただけて感謝、感激です。

結構PVとか見て一喜一憂しているんですよ?

これからも、読んで反応いただけるとうれしいのです。まず、評価に値するいい話書かなきゃですね。


では!

2.5章でお会いしましょう!


以上、カーネルシトラスでした。


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