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魔性狩り【一章完結!】  作者: カーネルシトラス
狂言/般若

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第9話 作戦会議

 私は、東京駅で浜野に電話をしたのち、予定時刻から少し遅れて渋谷でバイト仲間である知恵に会ったのだが急用ができてしまったと伝えた。


「全然気にしないで!2時に文京区にいればいいんでしょ。じゃあお昼くらい一緒に食べよ。急に誘ったのは私だし用がある中で来てくれてありがとね」


 知恵は笑顔で答えてくれた。


 本当に、私は友人に恵まれていると思う。


 デパートの1階にあるフルーツパーラーで軽く話をしながら昼食を取った。私の都合で予定をキャンセルすることになったので時間ぎりぎりまで知恵の話を聞いていた。将来の話だったか、人間関係だったかの相談を受けていた気がする。正直、ここに来るまでに起こったこととこれからのことで頭がいっぱいで何を話したか覚えていない。


 私が会計を済ませて別れる際に知恵は笑顔で見送ってくれた。約束を無碍にして本当に申し訳ないなと思った。なので絶対に埋め合わせをすると約束して駅に駆けていった。

 

 私はデカデンティア探偵事務所に向かって歩いていた。なんでこんなアクセスの悪いとこにあるのだろうか。悪態をつきながら、薄暗い階段を上り探偵事務所のチャイムを鳴らした。


「どうぞ」


 浜野の声が聞こえたので中に入る。浜野は以前と同じように椅子に座り煙草をふかしていた。前と違うのは部屋に流れているのが音楽ではなくてニュース番組だった。


「今朝、千葉県流山市で起きた殺人事件の現場に来ています。昨夜、殺害されたと思われる家主の坂上夫妻ですが、動機になるようなものがあるかどうか警察は捜査中とのことです」


 ブラウン管テレビから、ニュースの音声が流れる。テレビに映し出された被害者の名前は確かに祭の両親だった。


「清水さん、身を引くなら今のうちだ」


 椅子に深く座り煙草の煙を浜野は吐き出す。


「どういう意味ですか。祭のことをあきらめろと?どうして!」

「説明できる理由はない。だがね、これはあまりにも胡散臭すぎる。この件、これ以上踏み込むにはあなたの助けが必要だ。”だから”、坂上祭は生きていた。いつかまた会えるかもしれないということでここらへんで手打ちにしないか」


 浜野は今までと違い敬語を使わず話しかけてきた。正直私は何を言ってるかわからなかった。


「何も説明になってません、浜野さん。何があったんですか?」

「坂上夫妻の殺人はおそらく祭さんの失踪に関連がある。探偵らしい証拠は出せないがこれは信じてもらっていい。それでだ、これ以上探るってのは殺人鬼を追いかけることになる。いとも簡単に人を殺すような”存在”を追いかける覚悟はできるか?その牙をいつこっちに向けるかわからない奴を追いかける覚悟を」

「殺人鬼って。もしも、もしもですよ?浜野さんの言うように祭の両親を殺したやつが失踪に関係したとしたらなおさら追いかけるべきです。祭の身に危険が降りかかるかもしれない。そうじゃありませんか?」


 私は反論した。浜野は煙草を咥えたまま黙っていた。


「これは、僕のカンに過ぎない。でも言わせてもらう。ここからは地獄になるぞ?」


 殺人犯を追いかけるのは確かに大変だろう。だが、地獄というのは言い過ぎではないのだろうか。殺人犯を日々追いかける刑事は大変ではあるだろうが毎日地獄を見ているとは言えないだろう。それとも坂上夫妻殺人事件について浜野は何か知ってることがあるのだろうか。


 ため息をつきながら浜野はこちらを向いた。


「坂上祭の行き先にどこか目星は?」


 そう問いかけられた。スマホの画像フォルダから駅で撮った祭と男の画像を見せながら話す。


「祭は東海道新幹線に乗って行きました。新大阪行きです。どこに行ったかは正直わかりません。でも、両親の殺人事件が関係があるとしたら」


 思い当たることがないわけではなかった。坂上家を恨むものがいるとしたらあそこに違いない。そう私は思った。


「大橋村かもしれません。」

「あんたらの故郷か。それでなぜ?」

「祭が大橋村から出ていった理由について詳しくは聞いていないんですけど、大橋本家との衝突だったと思うんです。あ、大橋本家っていうのは私のおばあちゃんの家系で、大橋村を古くから取り仕切っている家だったんです。といっても、大地主とかでもないし住民が10から20人くらいの小さな村の中だけでのお山の大将みたいな。それが嫌で出ていったって昔祭の両親から聞いた覚えがあります。でも、本当に大橋村かは。自信はありません」

「同じ奴だ。」


 浜野はスマホの画像を見て、そうつぶやいた。


「今なんて?」

「こっちの話だ。それで大橋村ってのはどこにある?」


 浜野はスマホの地図アプリを開きながら聞いてきた。


 インターネットで地名を検索したが、うまく探せなかったため記憶を頼りに場所を探す。地図の地名に小さく大橋村の名前があった。


「2、3日時間をくれ」


 浜野はそう言った。


「良いですけど、どうして?」

「大橋村にいってこの目で見てくるんだよ。」


浜野はそう答えた。


「私も行きます」

「いや、まずは僕と知り合いだけで見に行きたい」

「どうして?」

「顔見知りじゃないほうが都合がいいこともあるんだ」


 私は浜野の言葉を信じることにした。


 


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