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ニコラの可能性

 二人で一通りの練習を終え、やることがなくなっている。クリスティーナの用意してくれた紅茶とお菓子を味わっている。


 私はニコラの様子を見に行こうと彼に提案する。彼は快く了承してくれる。庭にに行くと、クリスティーナがニコラに指導してくれている。


 アンは気の木陰で膝を抱えて、嬉しそうに見学している。目が合うと、すぐに視線をそらせてくれる。


 ニコラの表情は次第に曇ってきている。魔法の習得なんて、一朝一夕で出来る物ではない。その事は彼女には話した。それでも思い通りに、いかないのが悔しいのだろう。


 クリスティーナは、これには困ったという表情を浮かべている。私はアンを確認しながら、彼女たちに近づいていく。


 せっかく教えてもらっているのだから、そんな顔はしないと諭す。ゆっくり時間をかけてと説得している。しかし、彼女は今にも泣き出しそうな顔になっている。


 もう、お手上げ状態で私が泣いてしまいたい気分である。すると、私に魔法を見せて欲しいと言い始める。どうやらユリアと一緒にいるので自分が実は使えると疑っていたらしい。


 何度も使えないとは言ってある、しかし、良い機会かもしれない。私が魔法を使えないことを証明できれば、諦めてじっくり魔法習得をしてくれるはずである。


 でも、使えもしない魔法を彼女たちの前で披露するのは、大変気恥ずかしい。特に詠唱するのが嫌である。アンの前では出来れば、やりたくない。でも、やるしかないと心に決める。


「ニコラちゃんは治癒魔法に興味があるみたいで、一刻も早く習得したいみたいなの」


 ユリアの魔法を目撃したので、てっきり攻撃魔法を習得したいと思っていたので意外だった。彼女に読み聞かせているのは、攻撃魔法か防御魔法の項目である。


 帰ったらユリアに治癒魔法の専門書を貸してもらえるようお願いでもしてみよう。


 ニコラから魔法書を借り、治癒魔法の項目を探している。どれが良いのかさっぱり分からない。


 すると、クリスティーナがクスクス笑っている。すると、これが良いんじゃないかしらと勧めてくれる。


「じゃあ、ニコラ。今からやってみせるよ」


「うん」


 体中が熱くなってきている。やはり、恥ずかしさから躊躇してしまう。


「アンドゥー、どうしたの?」

「僕は早く見てみたいんだけどな」


「ちょっと待ってください」


 神経を集中させようと視線を移すと、その先にはアンがいて口角が上がっている。先程と違い視線を逸らさないので、こっちがそうする。


「じゃ、始めます」


「早く見てみたいわ」

「じらさないでくれよ」


 私はアンが涼んでいる木に向けて手をかざし、目を閉じ呼吸を整える。


「大地に宿る精霊たちよ。我に力を授け賜え、そしてこの者の傷を癒やし賜え。降り注げ癒やしの雫よ」


 ゆっくり目を開けたが、手から何か出ている様子はない。周りを見てみる。


 ニコラは目を見開いており、クリスティーナは笑いを必死に堪えているように見える。ローレンスは微笑みかけてくれている。


 アンは、冷たい視線を送ってきてくれている。どうやら彼女に対して手を向けたのが、お気に召さなかったらしいようだ。


「一応確認だけどどうだった?」


「残念だけど何も起こらなかったわ」

「僕も何も見えなかったね。魔法らしきものは」


 ニコラに視線をやると首を横に振っている。その表情は残念そうである。


「ほら、ニコラ。やっぱり魔法使えないんだよ。これからは、ゆっくりとクリスティーナさんから習っていこう」


 すると、彼女は頷く。これで良かったと思っている。だが、彼女に魔法の適性があるのか私には分からない。もし習得できなかったときのことを思う。何とも言えない気分になる。


 そうこうしていると、アンがニコラのほうへ近づいていっている。クリスティーナに耳打ちし、彼女がニコラに伝えている。


 どうやら指導して下さってくれるみたいである。


 私には、どうしようもない事であるのでローレンスの元へ行く。少し離れた所から、それを一緒にながめている。


「ニコラ、魔法習得できるかな?」


「ゼロではないんじゃないかな。でなければ彼女が、あんなに熱心に指導はしないと思うよ。彼女くらいの実力者だし、何かを感じ取ってるんじゃないかな」


「なるほど、それもそうだね。さすが、ローレンスだよ」


「褒めてもらってうれしいよ」


 ニコラの表情も次第に緩やかになってきている。私もなんだか安心してきているのを感じている。


 アンが直接ニコラの耳元で囁いている。かなり気になる光景だが、彼女の声はこちらには届かない。後で聞いてみることにしよう。


 彼女は、こちらに向けて手を振っている。私も振り返す。ローレンスが、そうすると彼女は恥ずかしそうにして俯いている。

 

 指導が終わると彼女は、こちらに駆けよってこようとしている。しかし、ローレンスに気づくとその足を止める。


「行ってあげなよ」


「なんか悪いね、ローレンス。照れてるみたいだ」


「それは光栄なことだね」


 彼女に近づき、アンに何を言われたんだいと聞いてみる。二人だけの秘密だと教えてくれなかった。


 アンとクリスティーナにお礼を言ったが、アンには案の定無視される。彼女は部屋に戻ると、二人の間にニコラを座らせて談笑している。


 二人とも彼女の髪に触れて、珍しそうに眺めている。ニコラは照れくさそうに、彼女たちを見ている。


 帰りは途中まで、ローレンスと帰ることになった。彼女はその提案に頷いてくれた。


 クリスティーナに挨拶を済ませ、屋敷を後にすることにする。

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