白金色の髪の少女ニコラ
ユリアからニコラを学院の初等部へ入学させようと考えていると、珍しく相談を持ちかけられた。
せっかく、ここでの生活に慣れ始めているのに、新たな環境を与えると混乱してしまうので止めた方が良いと助言した。本音は、学院での私の境遇を思ってのことである。
彼女はニコラに魔法を習わせようと提案したのよと言い、不機嫌になった。そして、私に考えろと振ってきた。
ニコラが魔法を学びたい気持ちも接していて十分に理解しているので、何か良い方策はないかと頭を巡らせる。ユリアに、とても受け入れそうにない提案をしてみることにする。
「クリスティーナにお願いしたいと思うのですが? それが嫌なら自分で教えてはいかがでしょうか」
「私は、ダンスレッスン等で忙しいのよ。そんな暇はないわ。まぁ、いいんじゃないかしら」
「本当によろしいんですね? 熱でもあるんでしょうか」
「私をおちょくるとは、いい度胸してるじゃないの。その条件を呑む代わりに、お願いがあるのだけれども」
どんな無理難題を押しつけてくると思えば、それは拍子抜けする物だった。何度も念押しで確認したがそれで良いという。
学院での昼食時間に、私は機会をうかがいクリスティーナにお願いしてみた。彼女は二つ返事で私の身勝手なお願いを了承してくれた。
彼女とローレンスに、最初はこの学院に入学させようとしていたのだと教えた。すると、ユリアのことを本当に優しい方なのねと言われた。私には、さっぱり分からなかった。
休日、ニコラと共にクリスティーナの屋敷に向かっている。ヨハンさんが自分の馬を貸してくれた。ご主人様が彼に贈った駿馬である。私は断ったが、気にするなと言ってくれた。
私は、ニコラを前に乗せて走らせる。私は自慢ではないが馬の騎乗には、いささか自信がある。ヨハンさんに幼い時より一緒に乗せてもらっていて、騎乗方法を教わった。
彼女は馬上から見える景色に興奮している。森を通っているときの木々の間から差す光、葉が揺れて出すゆったりとした音が、何て新鮮で神秘的なのだろう。
彼女の屋敷に着くと、ここでは見慣れた馬車が留められている。まぁ、そうだろうとは思っていたが、微かにそうでなければと淡い期待をしていた。
応接間に通されると、アンは紅茶を飲んでいる。ローレンスは片手をあげて挨拶してくれる。
私は彼女に挨拶するが、相変わらず無視を決めこまれている。私がニコラに自己紹介するよう促すと、彼女は挨拶を返す。
クリスティーナは笑顔で迎えてくれた。
「初めまして、ニコラちゃん。とても綺麗な髪の色をしてるね。その白金のような金髪素敵よ」
ニコラは恥ずかしそうに、私の背後に隠れる。クリスティーナが自分に視線を向けたのを察したようである。
「アンドゥー、会話の流れで今日の事をアンに話したら、ニコラちゃんに魔法をぜひ教えてあげたいそうよ。わざわざ予定を変更してくれたのよ。本当にアンって優しいのよ」
その言葉に私の顔は、引きつっていないか心配になる。
「そうなんだ、へぇーわざわざ申し訳ありません。アン様」
彼女は私の声は聞こえてないとばかり、紅茶は飲み進めている。
「ニコラちゃんのことは、アンにお任せしましょう。私たちはダンスの練習をしましょう。今日は私と一緒に踊りましょうよ?」
すると、ガチャンと音がした。アンがカップを受け皿に強く置いたようだ。彼女はクリスティーナを呼んで、耳打ちを始めている。
「アンドゥー、ごめんなさい。アンがこの間のことを思い出して、もしニコラちゃんに怪我でもさせたらメリーチ家に申し訳が立たないから、しばらくは私が教えたほうが良いんじゃないかって。良いわよね? アンドゥー」
「あぁ、そうだね」
「代わりにアンが踊ってくれるそうよ」
私は一瞬耳を疑い、もう一度確認してみたが聞き間違えではない。すると、クリスティーナはニコラを連れて庭のほうへと行く。アンは彼女たちを微笑みながら見送ると、ソファーに座る。
しばらく、彼女を見ているが一向に動く様子がない。ローレンスは、両手を広げてどうしたものだろういう感じである。私は意を決する
「あのぅ、アン様。ダンスはなされないのでしょうか?」
すると、彼女はローレンスを呼び寄せて耳打ちしている。
彼が私の元へ来て、彼女からの聞いたことを教えてくれた。この間のユリアとの対戦での負傷で、まだ体が痛むので踊れそうにないという。ローレンスと練習してくれないかとのことである。
「さぁ、アンドゥー」
彼が手を差し伸べてきた。そうするしかないようだ。しかし、彼には感謝しかない。
「剣術大会も近いのに申し訳ない。わざわざ予定をあけてもらて」
「かまわないさ」
私たちが練習を始めようとすると、彼女は小走りで庭のほうへと向かって行く。
私たちは、お互いを見て苦笑いする。
彼女は一緒に踊ってくれるとは提案してくれたが、教えてくれるとは言わなかったので止めることはできない。
「さあ、始めようか、アンドゥー」
「そうだね」
私たちは始めるが、息ぴったりといったところである。彼女は私たちに、もう教えることはないんだろうと言い聞かせるしかない。




