EP.8 『ガードウォリアー』パルナ
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開店前のチヨばあちゃんの錬金商店の店内ではチヨとリサが開店準備を終えて一息ついていた。
「それにしてもブラットポーションと複合ポーションがこんなに高級品だったとは思わなかったわ…ティアスさんには悪いことしちゃったかしらねぇ…」
チヨが見つめる机の上には十数枚の金貨が積まれており、先日の緊急討伐依頼で出た負傷者を治したポーション代として開店前にギルドマスターのティアスが持ってきた物だった。
「そう言えばラマスの冒険者達も傷を治すのに色の薄い低級のポーションを何本も使ってたぐらいだからね。僕は今までポーション自体使わなかったから知らなかったけど、まさかここまで高価だったとは思わなかったよ…」
「ギルドに卸しているポーションの他にもお店の新商品として売り出そうと思っていたのだけれど、よした方が良さそうねえ…」
「僕もその方が良いと思う。相場で売ってもこの村じゃ買えるのはギルドぐらいだろうし、下手に安く売ったりなんかしたら後々面倒な事になりそうだしね」
その後はいつも通り店を開け、接客がてらリサに初めて会った人達に紹介をしたりして、客の流れが落ち着いたころに店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ…あら、確かパルナちゃんだったかしら?もう身体の具合は大丈夫?」
店を訪ねて来たのは先日チヨとリサが助けた『ガードウォリアー』のパルナであった。
「は、はい!頂いたポーションのおかげでいつもよりも調子が良いぐらいです…!そ、その…先日はきちんと言えなかったので改めてお礼を言いに来ました…」
「そんなこと気にしなくてもいいのよ、それより今後ともご贔屓にしてちょうだいね」
「も、もちろんです!チヨさんの作る食べ物はどれも見たことも無い物ですけど、安いのにとっても美味しくて力が湧いてくるんです!えっと…先日言っていた新作のお菓子があればひとつ下さい!」
パルナはお菓子をひとつ買うと店内に備えられたテーブルで食べ始め、チヨは自作の緑茶を湯飲みに淹れてパルナに出す。
「あ、ありがとうございます!ずずっ…はぁ~」
「パルナちゃんも緑茶にいつの間にか慣れたみたいで良かったわ」
パルナは両手で湯飲みを持ち、日本人と遜色の無い緑茶の飲みっぷりだった。チヨがパルナにお茶を出し終えその場を去ろうとしたが、パルナが立ち上がりチヨを呼び止めた。
「あ、あの…!えっと、リサさんはいらっしゃいますか…?」
パルナがリサに何やら話がある様子だったので、リサを呼ぶためチヨは店と奥の部屋を分けている暖簾を開くとそこにはちゃぶ台の置いてある部屋で座布団を枕にして昼休憩で寝ているリサの姿があった。
「リサちゃん!パルナちゃんがお話があるみたいよー!」
「わっわっ!お休み中なら無理に起こさなくても…」
しかしチヨの声で目を覚ましたのかリサはもぞもぞと動いた後に体を起こしたが、リサの美しい金髪は座布団を枕にして寝転がっていたためぼさぼさになっていた。
「う~ん…えぁ…?パルナちゃんって…?あぁ!確かあの時の『ガードウォリアー』の子か!よいしょっと…こんな格好でごめんね、僕に話って何かな?」
パルナは想像していたリサとは真逆の雰囲気に驚きつつも緊張した面持ちで口を開く。
「えっと…わ、私に戦い方を教えては頂けないでしょうか…!」
パルナの話とは狂剣姫と呼ばれている『バーサーカー』のリサに戦い方を教わりたかったようだ。パルナの顔は真剣そのもので強い意志のような物をリサは感じた。
「うーん…ラマスで活動していた時にもパルナちゃんみたいに戦い方を教えて欲しいって人は何人も居たんだけど全員断っているんだよねー」
リサがラマスの街で活躍をして狂剣姫と言う二つ名で有名になると、弟子にして欲しいだの、戦い方を教えて欲しいだのと言った人が実際現れていた。
「り、理由を聞いても良いですか…?」
「嫌味に聞こえるかもしれないけど僕の力は努力して手に入れたって感じじゃないからさ、他人に教えるなんて資格は無い気がするんだよね」
リサはチヨと同じようにこちらの世界にやって来た時から『バーサーカー』の力を持っており、思いのままに操る事が出来た。そんな自分が日々を懸命に生きている他人に教えるなどと言う偉そうな事をするのには抵抗があったのだ。
「まぁ…何より声をかけてくるのが男の人ばっかりで下心丸出しだったって言うのが断ってた決めてだけどねぇ~」
「あはは…リサさんお綺麗ですもんね…」
「でもパルナちゃんは僕に下心がある訳じゃないでしょ?どうして僕に戦い方を教わりたいのか聞いても良いかな?」
パルナはしばらくの間黙り込んで考え込んで俯いていたが、意を決したように顔を上げて話だした。
「私は元々ここから離れた小さな村の産まれで周囲に危険な魔物や獣など出る事の無い平和な村でした」
そこまで話してパルナの握る拳に力が入るのをリサは黙って見守る。
「そんな村が突然オークの群れの襲撃に遭ったんです。その時にはもう『ガードウォリアー』の力は持っていたみたいでオークの攻撃から身を守るのはただの木の板でも簡単でした。でも、足がすくんで何人も目の前で襲われている人たちを見ている事しか出来なかったんです…」
「…」
「その後は緊急討伐で駆けつけてくれたティアスさんのおかげでそれ以上の被害にはなりませんでした…そんな私に出来る事なんて何も無いかもしれませんけど、せめて私の盾が防げる範囲の人達にはあの時みたいな事にはなって欲しくないんです…」
パルナは中々に壮絶な経験をしており、強さを求める理由には十分だった。
「もうパルナちゃんは十分強いと思うな…」
「そんな事無いです!私には攻撃スキルは使えませんし、防御スキルだって全然…」
そこまで話したパルナの頭にリサはポンと手を乗せた。
「僕が言ったのは気持ちの話、パルナちゃんはオークよりもずっと強いオークファイター相手でも逃げ出さずに『ガードウォリアー』として盾役を最後までこなしていたじゃない?」
「はい…それでも、もしあの時私だけだったら食い止められずに村に被害が出ていたかもしれません…」
リサは少し困った様子で頭をかくと、パルナの顔を両手で持ち上げて目を合わせた。
「パルナちゃん、僕は盾を使った事も無いし、本当に知識も経験も無い、パルナちゃんみたいな子に教えられるような人じゃないんだ。でも、僕のおばあちゃんなら大盾の経験もあると思うし、何より人生経験も豊富だから安心して教えて貰えると思うよ?」
リサの口から急に出たおばあちゃんにパルナは驚きを隠せないようすでいた。
「お、おばあちゃんですか…!?でもそのお方はどこに…ん?チヨばあちゃんの錬金商店って…まさか?」
「そ、ここに居るよ」
リサは暖簾をどかし、店番をしている定位置に戻り正座でうつらうつらとうたた寝をしているチヨを指さした。
「えぇ!?チヨさんがリサさんのおばあちゃん!?」
パルナからは想像出来ない大きな声が店に響き渡り、チヨの鼻提灯が割れた。
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