バレーボールとの出会い
「あれ?あの子、男子じゃない?」
「うん、男子だよね。」
観覧席で、そんな噂をされていた。
今日は、地元の市民体育大会の予選1日目。
俺は、いつもそんな噂をされており、今では全く気にならないようになった。
なぜ、そんな噂をされるかって?
それは、俺がいま居るのは、中学女子バレーボール大会の会場だからだ。
別に女子バレーボール部ということではない。
たまたま、部員が女子ばかりなだけだ。
俺は、西野大地。中1男子。
我がバレーボール部は、地元ではいつも上位に入る強豪と言われるチームだ。
ただし、女子だが。
昔は、男子バレー部もあったと聞いているが、今では性別に関係なくバレーボール部というものが1つだけ。
男子部員が入ったのは、3年前に1人いる。
その先輩は俺が入学すると共に、卒業してしまった。
ただ、俺がバレー部に入るキッカケというか、勇気を与えてくれた先輩である。
まだ、小学2年だった頃、母親がコーチをしている地元のジュニアバレーの練習について行って、体育館の片隅でボールで遊んでいた。
暇な時には、ボール拾いしたり監督さんやコーチ(母親だが)に球出しをしたりしていた。
監督さんは、俺の父親の大学時代の後輩だそうだ。
そう。我が家は全員バレーボールに関係が深い家族である。
父親は、大学リーグ4強と言われる名門東海商業大学出身で、今は母校で監督をやっている。
母親は高校を出てから、実業団でバレーをやり、ケガで引退後は親父と結婚して、バレーボールから離れていたが、数年前に地域のジュニアチームのコーチをしている。
俺には姉が2人おり、上の姉は今は中学でバレー部のキャプテン、下の姉はジュニアでエースをやっている。
俺が3年生に上がる直前に、いつものようにジュニアバレーの練習にいき、佐々木コーチとパスをしたり、レシーブをしていた時、コーチから
「大地、お前はなかなかボールさばきが上手だな。同い年の中では一番だ!」
と褒められた。
今まで、両親はもちろん姉ちゃん達にもバレーの事で褒められる事が皆無だったので、有頂天になり自意識過剰な性格の俺は、目の前がパッと明るくなり、この瞬間に本格的にバレーボールをやろうと思ったことを、今でも昨日の事のように覚えている。
後で考えたら佐々木コーチにやられたのかも知れないが。
だって、同い年の中で一番上手いと言っても、ここのジュニアチームは3年生からしか入部出来ないので、2年生は基本的にいないのだ。
3年生になり、晴れてジュニアバレーのチームに正式に入った俺は、誰よりも早く体育館に入り、床のモップ掛けから窓のカーテンを閉めたりボールを磨いたりしていた。
ネットは、支柱が重く小柄な俺には運ぶ事が出来ないので、高学年の子がやってくるのを待つしかないのだが。
ちなみに、そこのジュニアチームは俺以外は全員女子だ。
クラスの友達(男子)は皆が、野球だったり、サッカーだったりに入ってしまった。
1人だけ、相撲クラブに入ったツワモノもいる。