05-07.仲間たちの帰還
「「「何卒! 何卒!!」」」
うげ……また来た……。
今はリリスも居ないのに。
「滅ぼそう」
「ダメだってば」
もう。この女神様は。一応は彼らも信者だからね。そうは見えないかもだけど。
「けどどうするの? シアとベルタも居ないじゃん」
逆に言えば、そのお陰で彼らは公爵家の敷地にすら入れてはいないのだけれども。
でも煩い。しかも今日は輪をかけて。民衆まで引き連れてきた。もはや教会騎士たちも止めるつもりがないようだ。あの強硬派枢機卿が実権でも握ってしまったのだろうか。
「放っとこう。どのみち出来ることないんだし」
「まいっか」
ネメちゃんが防音結界を張ってくれた。快適だぜ。
「~♪」
ネメちゃんは鼻歌まで歌い出した。ソファに座る私の膝に頭を乗せて、ゴロゴロ転がりながらお菓子を摘んでいる。
なんて悠々自適なんだ。こんな姿を見られたら増々支持率下がりそう。公爵が敵に回る日もそう遠くはないのかもしれない。
「マカロン好きだね」
「うん♪ 好き~♪」
私が甘やかすよりトロトロになっている。悔しい。
「エコー♪ あ~ん♪」
「あ~ん♪」
はむはむ。
「ふふ♪ くすぐったい♪」
ネメちゃんの指ごと食っちまったぜ。
「おいし?」
「うん♪ 美味しい♪」
「ふふ♪」
イチャイチャ。ラブラブ。
「あ。出てきたよ」
ネメちゃんが指さした先に転移門が開き、モニカ、ティア、アッシュが帰ってきた。
「エコーさぁ~ん……」
ばたり。モニカがソファに倒れ込んだ。
随分ヘトヘトな様子だ。体力お化けのモニカがこれって相当だよね。いったい何があったんだろう。
「……強かったんです。ただひたすらに」
なるほど。ダンジョンボスが。よく皆無事で帰ってきてくれたね。
「せめて聖剣があれば……」
そっか。魔剣しかなかったね。ネメちゃんに新しいのでも作ってもらえばよかったね。聖剣なら魔物特攻も乗るし。
「ボスは? 完全に倒しちゃったの? その子もフィリアスだったんでしょ?」
「いえ。竜種です」
あ、そうなんだ。
「しかも何故か神聖属性を纏っていました」
だからか。魔剣は逆に相性悪いし、ティアの攻撃も有効打になりにくい。アッシュもそれは同じだろう。本当によく勝てたものだ。リリスも相当頑張ったのだろう。
「リリスは出てこれないの?」
「ええ。はい。かなり無茶をしましたので」
あらま。
「今のエコーの身体では休息に適していないので、このまま私の身体で休むそうです」
なるへそ。そういう弊害もあるのか。この無機物の身体には。お菓子食べられるのに。
「ネメちゃんがリリスを癒してあげるのはどう?」
「やめといた方がい~よ~」
だそうだ。
「けどコアはちょーだい」
「はい。こちらです」
ティアの手の平にコアが出現した。
ティアはそれを恭しくネメちゃんに差し出した。
「うん。まあ十分かな。褒めてあげる。よく頑張った」
「「「はい!」」」
おお。ネメちゃんが女神様っぽいことしてる。
「けどエコーならチョチョイのちょいだったね♪」
「一言余計」
「え~」
「いいから。早くやっちゃって。外の煩いのなんとかしないとゆっくりお話も出来ないでしょ」
「それもそっか」
ネメちゃんはコアに意識を向けた。
それから程なくして、一人の少女が現れた。なんか私に似てる……というかそっくりだ。だいぶ幼いけど。フィリアスってそういう生み出し方も出来るんだね……。
「エコツー♪」
「はい。マスター」
えぇ……。
「ダメ。名前考え直しなさい」
「なんでよ!?」
「なんでも」
「エコーツヴァイ!」
「エコー要らないでしょ」
「いるの!」
「ツヴァイちゃん」
「はい。マスター」
「ちょっと! マスターは我でしょ!」
「ところでツヴァイってどういう意味?」
「数字の二!」
「却下」
「自分でも呼んでたじゃん!」
「そんな意味だと思わなかったもん」
「今の流れで他に何があるっていうのさ!」
それはそう。
「『リブラ』は如何でしょう」
この都市を任せるから? なんだか名前まで縛るのは可哀想な気がするけど。
「もう決まり! リブラ! 契約!」
「はい。マスター」
この子、「はい。マスター」しか言わないんだけど。大丈夫?
ネメちゃんの眷属となったリブラは暫くの間意識を失っていた。リリスの時もそうだったけど、フィリアスが初めて神の力を受け入れるには大きな負担が伴うようだ。
それでもリリスの時よりは随分早かった。あの時は半日くらい眠っていたし。たぶんネメちゃんが上手く制御してあげたのだろう。なんだかんだと優しい女神様なのだ。ネメちゃんは。




