表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無声凱歌  作者: 十田 實
◆ 第3章 ◆ 愛と破滅
45/87

‐ 第45話 ‐ 最期の願い

<R15> 15歳未満の方は移動してください。

この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

 後ろから刺したのは、あたしが肉を噛み千切った男だった。あたしを刺すことができ、一安心したような顔をしている。何故だろう。


「それ、強力な麻酔が入ってますので、あなたみたいのでも多少は効くんです」


「……だから、何?」


「あなたと凱君、どちらかは持ち帰らないと流石にまずいので……」


 あたしは自分に刺さった槍を自力で引き抜いた。もう声を上げることもなかった。


「え……痛くないんですか?」


「痛いに決まってるじゃん。教えてあげようか」


「ひっ」


 自分の血の滴る槍を振りかざし、男に迫った。

 すると男は手元のスイッチを押し、開いた床からいとも簡単に脱出した。

 一瞬のことだった。


「ドクタータオ! 幹部の私より先に逃げるなんて……。ひぃ! 来ないで!」


 女の方に迫り寄ると、工具箱の中身をあたしに向かってがむしゃらに投げつけてきた。

 体や顔面に当ろうが、(かわ)すことなくあたしは槍を振りかざした。


 だが、突然眩暈が襲った。

 立っていられず床に手をつき、頭を上げえることができなくなった。


「……あはは。麻酔が効いてきたんだわ……。今のうちに」


 ――ドンッ――


 ヘリは大きく傾き、云う事を聞かないあたしの体は端まで吹っ飛んだ。


「ドクター奈須川! ローターを一つ撃たれました! このままでは落ちます!」


「私ももう脱出するわ」


「わ、我々は……」


「被害の及ばないところに飛ぶよう努力するなりしなさいよ! 大体あなた達…………」




 意識が朦朧とする。あの女の声はもう聞こえない。ヘリはおかしな飛び方をしている。


 最期の力で体を仰向けにする。

 首をなんとか横に向けると、輝く広大な海が見えた。いつの間にかもう朝だ。

 私の体は再生せず、このままヘリと共に岩場にぶつかり死ぬだろう。



 ある日、自分が不思議な力を持ち、よくわからないでいたが、今はよくわかる。

 あたしはこれで死ぬ。

 だが、死んでもいいと思っていた自分はもういない。

 あたしは生きたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ