‐ 第45話 ‐ 最期の願い
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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
後ろから刺したのは、あたしが肉を噛み千切った男だった。あたしを刺すことができ、一安心したような顔をしている。何故だろう。
「それ、強力な麻酔が入ってますので、あなたみたいのでも多少は効くんです」
「……だから、何?」
「あなたと凱君、どちらかは持ち帰らないと流石にまずいので……」
あたしは自分に刺さった槍を自力で引き抜いた。もう声を上げることもなかった。
「え……痛くないんですか?」
「痛いに決まってるじゃん。教えてあげようか」
「ひっ」
自分の血の滴る槍を振りかざし、男に迫った。
すると男は手元のスイッチを押し、開いた床からいとも簡単に脱出した。
一瞬のことだった。
「ドクタータオ! 幹部の私より先に逃げるなんて……。ひぃ! 来ないで!」
女の方に迫り寄ると、工具箱の中身をあたしに向かってがむしゃらに投げつけてきた。
体や顔面に当ろうが、躱すことなくあたしは槍を振りかざした。
だが、突然眩暈が襲った。
立っていられず床に手をつき、頭を上げえることができなくなった。
「……あはは。麻酔が効いてきたんだわ……。今のうちに」
――ドンッ――
ヘリは大きく傾き、云う事を聞かないあたしの体は端まで吹っ飛んだ。
「ドクター奈須川! ローターを一つ撃たれました! このままでは落ちます!」
「私ももう脱出するわ」
「わ、我々は……」
「被害の及ばないところに飛ぶよう努力するなりしなさいよ! 大体あなた達…………」
意識が朦朧とする。あの女の声はもう聞こえない。ヘリはおかしな飛び方をしている。
最期の力で体を仰向けにする。
首をなんとか横に向けると、輝く広大な海が見えた。いつの間にかもう朝だ。
私の体は再生せず、このままヘリと共に岩場にぶつかり死ぬだろう。
ある日、自分が不思議な力を持ち、よくわからないでいたが、今はよくわかる。
あたしはこれで死ぬ。
だが、死んでもいいと思っていた自分はもういない。
あたしは生きたい。




