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無声凱歌  作者: 十田 實
◆ 第3章 ◆ 愛と破滅
43/87

‐ 第43話 ‐ 混沌

<R15> 15歳未満の方は移動してください。

この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

 また凱の叫び声が聞こえてきた。今のは尋常じゃない叫びだ。叫びたくても叫べないというような、悶え苦しむ叫び。


 早く助けなければ。

 あたしはやっとの思いで、掴んだ白衣の男の腕に噛み付いた。


「っあーー!」


 男は凱とは比べるまでもない素っ頓狂な叫び声を上げ、ヘリの中に倒れ込んだ。引っ張られる形で、あたしもヘリの中に入り込んだ。


 血の味がする。口の中に不快感があったので、床にそれを吐き出す。吐き出した塊は、恐らく男の腕の肉だった。それ程強く噛み付いたらしい。血の味は自分のではなく、男の血だった。


 男は腕を抑えながら、あたしが床に吐き出されたそれを見て呆然としている。凱は、何処だろう。


 ヘリの最奥部に、凱は力尽きたように倒れていた。

 凱の横には女が肩で息をして立っている。――奈須川美鈴だ。手にはペンチと、袋を持っている。


「はぁ……はぁ……。取り敢えず、これだけあれば……」


 奈須川が凱に何をしたのか、理解した。

 理解した次の瞬間には、あたしは奈須川に襲い掛かっていた。だが、奈須川は思いのほか腕力があり、互いの腕を掴み合う形で防がれた。あたしは男にしたように、奈須川の腕に思い切り噛み付いた。


「嫌ぁ! なんなの! これじゃあなた獣じゃない!」


 そう云って奈須川は腕を抑えたじろいだが、男ほど効果がないようだった。


「血が出てる……。痕になるわ。あぁ、私ったらこんなに汚れて……。最悪。最悪よ。最っ悪だわ!」


 ヘリから脱出するため、奈須川がぶつぶつと呟いている間に凱を抱きかかえた。

 凱の口元は血で溢れていた。

 痛かっただろうに。苦しかっただろうに。


 気を失う程の痛みを迷いなくこいつらは与えてくる。人間じゃないのはお前たちだ。お前たちが人間を主張するのなら、あたしは喜んで獣になる。


 ヘリから地上を見下ろすと、勇魚がケイトを抱え、走ってヘリを追っていた。

 とにかく、飛び降りよう。骨が折れようが肉が飛び散ろうが、あたしの体は何とかなる。もう何度も死んでいる。飛び降りさえすれば、勇魚が何とかしてくれる。


「…………っ!」


 飛び降りよう。そう踏み切ったとき、体に鋭い衝撃が走った。

 自分のお腹から、矛先が出ている。後ろから体を刺されたことを、それで理解した。凱に刺さっていた槍だ。


 凱をヘリの外へ放り投げた。勇魚ならきっと、何とかしてくれる。

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