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迷いと不安


「草は踏み倒した跡が残ってますし、辿ってこればミリティアも合流は可能。しかもここは人の背丈を超える草だって生えてますし」


 万が一こっちに追手が来たとしても、逃げ隠れする場所には事欠かないと来ている。無事ムレイフさんとの落ち合い場所にたどり着いた僕は、街の入り口の方を警戒しつつミリティアがやってくるのを待っていた。


「ムレイフさんはやることが色々あるはずですから、たどり着くのはどう考えてもミリティアの方が先……」


 出迎えた僕は選択を強いられる。秘密をミリティアに話すか、話すとしてどれをどこまで話すか。


「ムレイフさんと合流したら、二人っきりの機会がどれくらいあるかわかりませんし」


 フロント公爵の暗殺計画について知ってしまい、阻止に動いていた件はムレイフさんにも話してしまったことだしミリティアにも打ち明けていいと思う。


「となると」


 問題は僕の技能についてだろう。駆け落ちを敢行するつもりのミリティアと僕はほぼ一蓮托生と言っていいと思う。僕に誘拐され、脅迫されて言うことをきかされていたという逃げ道がミリティアにはまだ残ってはいるが、実家に逃げるつもりなら、飲食店であんなことをする必要はなかったのだ。


「誰かを信じるのも怖いですけど」


 それでもミリティアだけは疑いたくない、ただ。


「秘密を打ち明けて、ミリティアが暴走しないかどうかが……」


 不安要素であり、そっちはかなり怖い。行動力があるのは現在進行形で逃避行に至っていることで実証済みである。


「うーん、当分黙ってる方が無難な気がしてしまうんですけど、どうしたものでしょうね」


 遠くなる視線。


「っ、気のせいですか」


 風が草を揺らして騒がせ、我に返ってそちらを見るもミリティアはおらず。


「そう言えば」


 ふと思い出すのはストレージに入ったままの技能書。


「盗人の疑いを持たれるのも嫌でそのままにしてましたけど、宝の持ち腐れですよね。どうせ追われる身になるなら使ってしまうのも手、かな?」


 そうすれば、何かあってもミリティアや自分の身を守れるかもしれないし。使ってしまってもまた技能で取りだすことができれば再利用も可能なのだ。


「ただ、ムレイフさんやミリティアに使ってもらうとしたら……聞かれますよね、入手方法」


 まだ誰もやってこない中、僕は再び唸るのだった。


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