完成されすぎたもの
「本来は試練としてもう暫くお前たちを警戒状態に置かせるつもりだったが、看破されてしまっては仕方ない」
時を司って未来を確認できるということは、ここで自身がネタばらしをしなければ僕がどういう行動をとるかもこの最上級悪魔にはわかっているのだろう。だからこそ、元の計画をそのまま進めるのは無意味と方針転換したのだと思われ。
「それで、ここからどうするかを聞かせてもらっても?」
「ふむ、なるほど。『自身の考えがない訳ではないが未来を知る相手の案より良いモノとは思えない』か。確かに案を出さずに俺に聞くのももっともだな」
「何でもお見通しですね」
納得されなければ、最上級悪魔の口にしたことを僕が口にしていたと思うがこう、なんと言うかこちらの言わんとすることを先読みされるのは話が早いが同時に少々微妙でもあり。
「安心しろ必要な状況だからこそしているが、過去の主のプライベートに踏み込むつもりはない。それで未来を変えてしまうのもまずいしな。緊急事態でなければ僕や俺がトイレに突然などということも以降はない」
「あー、はい」
それを聞いて安心すべきか、緊急事態ならあり得るのとツッコムべきなのか。
「わざわざ言及するということは、そのうち緊急事態が起こるってことですよね?」
「ああ。まだ先だが、フロント公爵の暗殺を防いだ人物をフロント公爵の手の者が探している件とか、主の家庭教師、チャバンだったかの危機とかな」
「は? 先生の?!」
暗殺を防いだ人物を探すという方はまだわかるが、先生の危機というのは寝耳に水だ。
「安心するといい。家庭教師の危機の方はまだずいぶん先だ」
「えーと、先といわれてもあるとわかってると微妙に気になるんですけど? いえ、まぁ何事もなく解決するということはわかるんですけどね」
相手は時を司る最上級悪魔。時を渡って危機自体をぶっ潰すことぐらい容易だろう。たぶん、解決できるからこそこの時点で僕に明かしたという訳でもあるだろうし。
「って、あるぇ?」
ひょっとしてこの悪魔、万能すぎてもう僕に危機など訪れないのではないだろうか?