真相
「一言でいうなら黙って見ていられなくなったからだ」
わかりやすすぎる理由であり、納得できる理由でもあった。
「圧倒的優位にありましたもんね」
あのアークデーモンの主であり目の前の最上級悪魔を人質にとるとブラフをかまさなければ、生殺与奪はあのアークデーモンに握られていたはずであり、その状況を作り出したのもあの悪魔の油断が原因だ。だからもう任せておけないと断じたとしても不思議には思わない、が。
「それだけが理由ではありませんよね? というか」
「その通りだ」
「えーと、僕まだ質問してないんですけど?」
確認しようとした僕の問いの前に最上級悪魔が肯定を返し、僕はもやもやしつつそれを指摘した。わかってはいる、時を司るのだから未来予知よろしく僕が何を質問しようとしたかを知っていたのだろう。
「ですが、その通りということは僕の予想が正しかったということですよね」
「ええと、ヴァルク、どういうこと?」
「んー、簡単に言ってしまいますと、この人、というか最上級悪魔は味方、僕の言うことを聞いてくれるということです」
「はぁ?」
ミリティアがあっけにとられるが、考えればわかることだ。
「正確には未来の僕の味方、というか部下ですね。技能で取り出したモノは完全に僕の支配下に置けるというのが僕の技能の恐ろしいところですから」
未来の僕はこの最上級悪魔が封印された本を完全な状態で取り出し、封印されていた悪魔までも支配下に置いたのだろう。
「それで、時間をさかのぼれる力を利用して過去の自分を助けるためにあなたを差し向けた」
「そこまで見抜くか。だが俺の主、つまり未来のお前は過去の自分の危機感のなさやら何やらを危惧していた。追手も差し向けられていた訳だしな」
「それって……」
「ええ、アークデーモンを差し向けたのも僕の危機感をあおったりして活を入れるためだったと、そういうことですね」
同時に僕へもっと熱心に技能の熟練度を上げさせるためとかおおよそそんなところじゃないだろうか、未来の僕の狙いは。