片付けを始めて
「紙の人形は場所を取りませんし、荷物に紛れ込ませればいいとして」
優先して処分すべきは熟練度が足りず紙屑として取り出されてしまった品々か。
「壁が防音なら断末魔が上がっても大丈夫なはずですし」
もっとも、そうそう断末魔を上げるような紙屑が混ざっているとは思えないが。
「いっそのこと本は前の客の忘れ物って態でカウンターに突き出すというのも一つの手かもしれませんよね」
燃やしてもまた出てきてしまうと考えるなら、アリな気もする。ミリティアにはもうバレてしまったことだし。
「ヴァルクはそれでいいの?」
「いいのも何も、今までも厄介者でしかありませんでしたから」
取り出す際のハズレを取り除けるという意味でも焼却処分以外の消失とならない片の付き方はむしろありがたく。
「男性ってああいうモノに興味があると思っていたのだけれど」
「興味がある人が皆無とは言いませんけど、少なくとも僕に未練はありませんよ?」
仮に興味と未練があったとしてもミリティアの前で堂々とそれを言えたらある種の勇者であり、僕ではないナニカだろう。
「何にしても宿泊ではなく休憩でこの部屋は借りたわけですし」
利用できる時間にだって限りはある。
「限界まで技能を使えればいいんですけどね」
何が出てくるかわからない僕の技能では、出てきたモノの処分にどれだけの時間を要するかが不明であり。
「時間的余裕は取っておきませんと。僕の方はだいぶ身体の方も技能がなじんできたみたいですから、慣らしもかねて本を運んだりで身体を動かしてみようかと」
「そう」
「ええ。ミリティアはそこでゆっくりしていてください」
思い返せばこの部屋を借りる代金だってミリティアが出しているのだ。本に関しては僕が技能で出したモノだから片付けるのも僕なのは当然として、肉体労働や雑務は買って出るぐらいしなくてはならないだろう。例えば、ミリティアが部屋の利用時間が終わっても歩けないなら、背負ってゆくだとか。
「力仕事も冒険者ギルドを利用するようになって色々やりましたからね」
経験はきっと力になっていると思う。