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思い立ったが、即なんとか


「時間としてはまだ早い、そう思うかもしれませんけれど――」


 決めたのであれば、すぐ動くべき、僕は部屋に戻るとミリティアにそう切り出していた。


「どうしたの、ヴァルク? 戻ってくるなり」

「いえ、ちょっと心境の変化とか色々ありまして」


 流石にこの場所で馬鹿正直に「悪魔が襲ってきて今後も危ないかもしれないので出来るだけ早く秘密を打ち明けたい」だなんて言う訳にもいかない。となるとどうしても不自然にならざるを得ず。


「心境の変化、ねぇ」

「え、ええ」


 ミリティアに見られつつぎこちなく頷くが、うまい言い訳が思いつかないのだから仕方ない。


「ミリティアを見て居たらムラムラしてきたので、目的地で思う存分――」


 とか、欲望方面の理由ならでっち上げでもミリティアを納得させられるかもしれないが、口にする勇気が僕にはない。そも、僕が臆病とか関係なくこの手のセリフを女性に向かって言える人物がいるとしたら、それはとてつもない勇者なのではないだろうか。


「……いいわよ。ヴァルクがただ『気分がどうの』で予定を変えたりする人じゃないことぐらい知ってるもの。私も覚悟を決めるわ」

「えっ」


 漏れた声は、あっさり承諾してもらえたからか、覚悟と言う謎の単語が後についてきたからか、自分でもわからない。


「ミリティア、それ」

「今日来たって訳じゃないのよ? この町にどんな施設があってどういう場所なのか、いくつかは見聞きして知ってるわ」

「えっ」


 ひょっとして、ミリティアはこれから行く場所がどういう目的に使われる場所であるのかすでに知っているというのか。


「ちょ」


 ともなれば、僕の発言は出来たら勇者だと思っていたモノとほぼ同じ意味として受け取られていたと見て間違いはないと思う。


「えーと」


 どうすればいいのだろう、これは現地で実は秘密のお話をするためでしたといっても収まる気がしないのだけれど。


「どうしたの、ヴァルク?」

「い、いえ。承諾していただけたなら、準備を始めないといけないな、と」


 動揺を隠そうとしつつ口で当たり障りのないことを言った僕は頭を全力で回転させる。どうすればこの状況を打開できるのか、と。




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