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人は過ちを繰り返す


「こう、思うんですけどねやっぱり現実って物語とは違いますよね」


 そう同意を求めた僕の目は酷く遠くを見ていた。ダーハンまでの道は危険と無縁で、あっさりダーハンにたどり着くと、ミリティアと女装した僕はあっさりダーハンに入ることを許され、取った宿での宿泊は三日目となっていた。当然の様に一つの部屋でベッドも一つ。


「そうね、冒険活劇染みたところがあるとしたら、街を出たときのあれぐらいよね」


 相づちを打つミリティアはどことなく嬉しそうで、確かにミリティアの言う通り、ここのところ危険とは無縁だ。追っ手の姿を見かけたりもしていないし、自重はしているがひょっとしたら観光ができてしまうのではと誤解しかねないぐらい何もない。うん、ミリティアからすれば。


「ですよね、後はムレイフさんが合流するだけですけど」


 ミリティアに応じつつ視線だけはここじゃないどこかに放り投げてる僕にとっては毎夜毎夜が精神面での死闘である訳だが。人によってはヘタレと言うかもしれないが、ただ欲望に流されてミリティアにナニカしてしまうのはためらわれた。言うならば、その先に進んでしまうことに恐怖を覚えたのだ。


「いや、そもそもそういう状況じゃないですよね」


 と理性は指摘する。いちゃつくなら完全に安全が確保されてからにしろとも。


「だいたい――あ」


 更に言葉を探そうとして、ふと気づく。僕はミリティアに秘密を打ち明けただろうかと。


「確か宿では聞き耳を立てられるかもしれないと――」


 ダーハンまでの道で話すつもりでいて、ミリティアに密着して身体のにおいを嗅がれ。


「あーっ」

「ふぇっ?!」


 忘れていた、ここのところの夜の生殺しもあるが、こう、自分との闘いに気をとられるあまり、完全に打ち明けるのを忘れていた。


「話すなら、ムレイフさんがいない今のうちしかないッていうのに」

「ヴァ、ヴァルク?」

「誰かに聞かれたくはないですし、この宿でと言うのもちょっとあれですよね」


 僕は唸りつつひたすら考える、どこでなら打ち明け話ができるかを。


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