出発の為に
「それじゃ、この通りの出口で合流するということで」
僕は通りを歩きつつ出口を示して言った。朝食を食べた後、宿を出た僕達は変装用の品やら食料、旅に必要なモノを購入するために商店の並ぶ通りへとやって来ていた。
「わかったわ。じゃあ、私はこっちのお店ね」
「ええ、お願いします。僕は食料とかを購入しておくので」
変装用の衣服や小物の購入は裁縫のできるミリティアに任せることにした。僕の身体のサイズについては、朝着替える時についでに測ってもらったので、丈夫だと思う。
「さてと」
そして食品を確保するためミリティアとは別方向に歩き出す僕だが、次の目的地であるダーハンまでの移動は丸一日もかからない。念の為保存食も購入するつもりだが、通常の食料にしろ保存食にしろ、三日分も四日分も買い込む必要はなく。
「ありがとうございましたー」
「まぁ、こうなりますよね」
サクッと買い物を終えると、先ほど示した合流場所へと向かう。買う必要のあるモノが少なかったのも理由の一つではあるが、さっさと終わらせたのには理由がある。
「ミリティアを待たせてナンパでもされたら面倒なことになりますからね」
護身の意味ではミリティアの技能は強力だが、ナンパしてきた相手の無力化には明らかに過剰だし、周囲の人間がバタバタ倒れれば人目を集める。その光景を街を脱出した犯人と結び付けられてしまうと追手がこちらに集まってくることも考えられてよろしくない。
「それを防ぐには僕が先に用事を済ませて待ってる必要がある訳で」
ミリティアと違って異性を引きつけるようなナニカを持っているわけでない僕なら、異性からナンパをされることもない。
「いや、ちょっと悲しくなったりはしますけどね」
技能も対外的にはゴミで貴族の家を追い出された僕に異性を引きつける要素何てあるはずもないので、しかたないといえばしかたないのだが。
「そう考えると、奇跡というか」
ミリティアが僕を慕ってくれている理由と言うのが、彼女には申し訳ないがわからない。
「とはいっても面と面と向かって尋ねる勇気なんてないんですよね」
ただ、慕ってくれていることだけは僕にだってわかる。こうして駆け落ちまでしているのだから。




