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お茶会

 折角だからということでライルさん達もお茶を頼み、席を共にすることに。

 座席が四人掛けだったため、隣にあったテーブルをくっつけると、全員席に着きお茶会のようなものが始まった。


 俺の左隣にエレナ、右隣にゼナ。

 正面の座席には右から順に、セリアさん、ジェシカさん、アベル、ライルさんといった並びで座っている。


「いやー、それにしても久しぶりだよね。 ユーキちゃん達は観光でここに来たの?」


 お茶を一口飲むと、ジェシカさんがそう尋ねてきた。

 一緒にパーティーを組んだ遺跡調査の護衛から数ヶ月は経っているので、三人の顔を見るのは本当に久しぶりだ。


「いえ、ここには――」

「護衛で来てるのよね?」


 俺の言葉を遮り、代わりに答えたのはセリアさんだった。

 まさしくその通りなので頷きはしたが、なんでそれをセリアさんが知っているのだろうか。

 そんな考えが顔に出てたようで、彼女はこちらを見て悪戯が成功した子供のような表情を浮かべるとウィンクを一つ。


あの子(ミリア)から聞いたの、ユーキさんが護衛でセルキナに行くって」

「なるほど、そうだったんですね」


 セリアさんはミリアちゃんと姉妹なんだし、そういった情報が伝わっててもおかしくない。

 そうして会話をしていると、ゼナが不思議そうにこちらを見ていた。

  エレナは今の家に移る時に顔を合わせたことがあったけど、ゼナはセリアさんのことを知らないんだっけ。


「あ、セリアさん。彼女はゼナ、一緒に冒険者をしている……妹みたいな子です」

「あぁ、この子が……初めましてゼナさん。私はセリア、よろしくね」


 右手を差し出しながら自己紹介するセリアさんに少し躊躇いを見せるも、握手に応じるゼナ。


「よろしくお願いします、セリアさん。……えっと、ところでユーキお姉ちゃんとはどんな関係なんですか?」

「んー、どんなって言われるとねぇ……」


 ゼナからの質問に複雑な表情を浮かべるセリアさん。

 彼女からすれば一時的な居候だったって所だろうけど、それを言うのは憚られるといった感じだろうか。

 ……あるいは古い友人の事を思い出しているのかもしれない。


「私が困ってた時に助けてくれた恩人なんだ、セリアさんは」

「そうなんだ?」


 ゼナの言葉に頷き返す。

 行き場も無かった俺を家に置いてくれたり、装備を整えてくれたりと、今でも強い恩義を感じているくらいである。

 まぁ、当のセリアさんは『そんな大層なことしてないわよ』と笑っているのだが。


 左隣では、一緒に戦ったこともある仲だからか、エレナが割と楽しげにアベル達と会話をしていた。


「ところで貴方達はどうしてここに?」


 そんなエレナの質問が耳に入ってきた。

 俺も気になっていた事だったので、お茶を口に運びつつ耳を傾ける。


「何でも最近山で魔物の動きが活発になっているらしく、それの討伐を依頼されたんだ」


 熱いものが苦手なのか、お茶を冷ましながら飲んでいるアベルからそんな答えが帰ってきた。


「山に棲んでる魔物くらい自由にさせてやればいいと思うんだけどね〜」

「いや、実害が出始めてるんだからそうはいかないでしょ」


 長い茶色の髪を一房摘んで先端を指でくるくると弄りながら呟くジェシカさんに、横からライルさんが窘める。

 それにしても山の魔物か……途中遭遇したハーピィを思い出すなぁ。


 両隣にいる二人もその事を思い出したのか、嫌そうな表情を浮かべていた。

 半人半鳥の魔物(ハーピィ)が放つ匂いはそれだけ強烈だったのだ。


「私はこの三人とはちょっとした縁もあったし、丁度暇だった事もあって一緒に来たの」

「セリアがいると私の出る幕が無いんだよねぇ。まぁ楽できるから良いけどさ……」


 ジェシカさんがセリアさんを見て溜息を吐く。

 二人はどちらも同じ魔法職なので、色々思うところがあるのかもしれない。


「ま、そんな感じでさっきまで魔物狩りをしてたんだ。――ちょっとミスもあったけどね」

「う……だからあれは悪かったって」


 やれやれと肩を竦めるライルさんと、ばつが悪そうにするジェシカさん。


「何かあったの?」

「戦闘前にジェシカが転んだ拍子に鞄から閃光玉を落としてな。驚いた魔物の群れがいくつか逃げちまったんだ」

「そんなことが……」


 エレナの質問にアベルがそう答えた。

 それにしても典型的なミスだなぁ。


「それで、逃げた魔物はどうしたんですか?」


 ふと気になった事を聞いてみる。


「何匹かは撃ち落としたんだけどね。残りは遠くに飛んでいっちゃって……」

「方角的にはここに繋がる道がある山へ向かってたけど、大丈夫だったかしら」


 ジェシカさんに続き、セリアさんがそう呟いた。

 それにしても、魔物が道のある山へ……ねぇ。

 ――あれ? それって……


「ちょっと、その逃げた魔物って――」

「もしかしてハーピィだったり……?」


 頭に思い浮かべていた事は両脇にいる二人も同じだったらしく、俺の気持ちを代弁したように尋ねた。

 もしそうであれば、普通なら低い山にはいないらしいハーピィがあそこに現れた事にも説明がつくが……


「そうだけど、よく分かったわね? ――まさか」

「そのまさかです」


 冷や汗を浮かべるジェシカさんに肯定の言葉を返すと、場の空気が二分化された。

 一方は目の前に座る――主に原因らしいジェシカさんに――冷たい視線を向ける三人組。

 もう一方は視線を逸らしたり、同情の眼差しや苦笑いを浮かべる四人組と言った様相である。


 セリアさんに詳しく教えてほしいと言われて事の顛末を説明したところ、割と驚かれると同時に四人からは深く謝罪された。

 まぁ故意でなかったのは分かっていたので、そこまで怒ってはいなかったのだが。


 ちなみに二人はジェシカさんがお詫びとして注文したデザートを食べてすっかり機嫌が良くなっている。

 ……なるほど、俺も今度から甘いお菓子でも持ち歩こうかな。



 お茶を飲み終わりそろそろ席を立とうかという時に、セリアさんから声を掛けられる。

「ユーキさん達はしばらくここに滞在するのかしら?」

「ええ、三日後に出発する予定なのでそれまではいますけど……どうかしました?」

「――ちょっとお願いがあるの」


 彼女の口から続いた言葉は、少し意外なものだった――

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