セルキナ
山を降り長い森を抜けてしばらく平原を走るうちに、遠目に見えていたセルキナの姿が徐々に大きくなってくる。
ここから見る限り、アルシールのように高い塀で囲まれているということもないようだ。
ガリスさんの話では都市の中心部には川が流れているとの事。
元々川沿いにあった街が交易によって人が増えて段々大きくなり、川の反対側まで広がり今の姿が出来上がったという。
そんな国の成り立ちからか、多種多様な種族が共生しているらしい。
今のところ妖精族にしか会ったことがないが、他にも種族がいるのだろうか?
淡い期待を胸にあれこれと考えているうちに馬車がセルキナへと辿り着き、大通りにある建物の前で停車した。
「到着ですね。ここまでの護衛、ありがとうございました。私はこれから商談がありますので、一旦ここで失礼します。出発は三日後の予定なので、それまではゆっくり休んでくださいね」
「わかりました。お言葉に甘えて観光でもしようと思います。ではまた三日後に」
集合場所と時間の確認をした後、ガリスさんと別れる。
そのままの足で宿屋の部屋を取り荷物を置くと、俺たちは早速街へと散策に出かけたのだった。
「わぁ、凄い人の数だねぇ」
「そうだねぇ」
隣で歩いているゼナが周りをキョロキョロと見渡して感嘆の声を上げる。
アルシールも中々人が多い所だが、セルキナの街はそれ以上の賑わいを見せていた。
そもそもの店の数がアルシールとは段違いに多い。所狭しと建物が立ち並び、そのほとんどが何かしらの店になっているようだ。
これが交易都市と呼ばれている所以だろう。
「これだけ店が多いと買い物も楽しそうだね〜」
「目的の物を探すまでが大変そうだけど」
「まぁそれも楽しみの一つよね」
なるほど、確かにそうかもしれない。
昔なら買い物なんて素早く済ませてしまう方がいいという考えだったが、今ではその過程も中々悪くないと思っている。
探しているうちに掘り出し物などが見つかる可能性もあるかもしれないし。
「それで、どこに行くか決めてるの?」
「いや、特には。適当に見て回ろうと思ってたんだけど」
初めてくる場所だし、とりあえずは散策ついでに店を巡るのもいいだろう。
そんな俺の言葉を聞いたエレナが、少し考えるそぶりを見せた後に口を開いた。
「ならまずユーキ、ローブを直すか新しいのを買いに行った方がいいんじゃない?」
「……そういえばそうだった。あれも直さないといけないよねぇ」
ゴブリンとの戦いで穴が開いてしまったローブはまだ直していないため、今はとりあえず私服を着ている状態である。
やはりローブを着ている時の方が冒険者っぽくていいと思うし、個人的にも気に入っているため早めに直しておきたい所だ。
……まぁ、三日後までに直せればいいんだけど。
「今は荷物に入れてきちゃってるから持ってないし、防具屋があれば後で修理を依頼するよ」
「そう? でもしばらくはゆっくり出来るんだし、そこまで急ぐこともないのかしらね」
その後ゼナを交えて雑談しつつ、あちこちの出店で買い食いしながら街を散策していく。
中央まで来ると、街を横断するように流れる川が流れていた。
ここに来るまでに見た河ほどではないが、中々に幅が広いようである。
川には対岸へと渡るための橋がいくつも架かっており、中心の一際大きな橋の上にはこれまた大きな建物が。
荷物を運ぶ人や水面を眺めているカップルの姿があったりと、多くの人で賑わっているようだ。
そしてその下でも荷物を積んだ船行き交い、岸に止まっている船では荷下ろしをしている。
「街の中心にこんな川があるなんて凄いね……!」
「だね、人もすごく多いし」
眼前に広がる光景を見てテンションが上がっている様子のゼナ。
これには全面的に同意だ。
「上方にいけばアルシール、下方には軍事国家のカーダナルがあるから、ここは特に栄えてるのよ」
「へ〜アルシールに続いてるんだ――というか、軍事国家なんてあるんだ」
元々地理に疎いこともあるが、そんな国があるなんて知らなかった。それにしても、軍事って付くと物騒な感じがするよね。
俺の言葉に頷き、再び口を開くエレナ。
「前にライルって人から魔族との戦いについて聞いたでしょ? その頃に魔族へ対抗するために建国されたって言われてる国ね」
「ライルさん! 懐かしいなぁ、元気にしてるかなぁ」
妖精族の弓使いの名前を聞いて更に機嫌が良くなったのは、川を見つめていたゼナだ。
同じエルフなのに偏見の目を向けられなかったのが余程嬉しかったのだろう。
それにしても、そんな話もあったなぁ……昔は魔王とか勇者がいたっていうやつ。
でも今は魔王も魔族もいないんだし、軍事国家を名乗る必要は無い気もするけど――まさか?
「その国、他の国と戦争してるとかないよね?」
「今はね――少し前まではやってたわ」
やれやれと肩を竦めて答えるエレナ。
魔族がいなくなったら人相手かぁ。争わずにはいられないのかな、人間って。
この辺はどこの世界も変わらないのかもしれない。
「話するのもいいけど、そろそろ向こう側にも行ってみようよ」
川を眺めることに飽きてきたのか、ゼナが声を上げる。
「そうだね。このまま立ち話を続けるのもあれだし渡ろうか。どうせならあの一番大きな橋にする?」
「構わないわよ」
「賛成!」
こうして意気揚々と前を歩くゼナに続くようにして橋を渡り始めるのだった。
橋を半分ほど進み、大きな建物の一階部分――橋が通っていて半分吹き抜け状態――に辿り着く。
どうやらちょっとしたカフェになっているようで、景色を楽しめるからか多くの客で席が埋まっていた。
「橋の上に店があるなんて凄いね〜!」
「そうね。中々見ないわ」
「少し休んでく?」
俺の言葉に二人して頷くと、ゼナが開いている席を確保し、エレナが飲み物を注文する。
なんというか、手際が良くて何もすることがなかったんですけど。
ゼナが確保した席に座りしばらくすると、従業員が注文した飲み物を持ってきてくれた。
白い陶器のカップに注がれている赤みを帯びた液体から、湯気と共に甘い匂いが漂ってくる。
「何頼んだの?」
「カバナティーよ。苦味と甘味が丁度いい塩梅で美味しいのよ」
「へぇ……」
聞いたことのないお茶だけど、エレナがおすすめするなら味は大丈夫だろう。
試しに一口飲んでみると独特な苦味が舌を刺激した後にほのかな甘味が口の中に広がる、癖になりそうな味だった。
「流石、エレナ姉が言うだけあって美味しいね」
「でしょ?」
「ちょっと独特ではあるけどね」
とはいえ苦味は残らないので、かなり飲みやすくなっている。
ビターチョコを食べた後にミルクティーを飲んだような感じに近いかもしれない。
「お嬢さん方、暇なら一緒に観光でもどうですか?」
三人でお茶を楽しんでいる途中、男性に横から突然声を掛けられた。
人が折角良い気持ちでお茶してる時に――一言文句を言ってやろうと視線を横へと移すと、そこには見知った顔が四人分。
「あぁっ! ライルさん!」
「やぁ。元気だったかい?」
「ユーキさん、久しぶりね。冒険者稼業が順調そうで安心したわ」
そう、そこには以前クエストでパーティを組んだライルさん、ジェシカさん、アベルさんの三人と……そして何故かセリアさんが立っていた。
更新が遅れてしまいすみません……
最近時間的な余裕が無いのと、他の要因も重なって執筆出来てませんでした。
次回はなる早に更新したいと思ってますが、もしかするとまた遅れてしまうかもしれないのでここで先に謝罪しておきます。
……一日が二十四時間しかないのって短過ぎません……?笑





