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久々のクエスト

「――久しぶりにクエストに行かない?」


 真夏のような暑さも幾分かマシになり、陽差しもだいぶ落ち着いてきたある日の事。朝食の後片付けをしていた俺に向かって、エレナがそう提案してきた。

 最近は暑さが原因ということもあって、全くクエストを受けに行っていなかったのである。


「ん~。前よりは涼しくなってきたし、久々に受けに行くのもいいかもね」

「でしょ? この後ギルドに行きましょうよ」

「それは構わないけどさ、エレナも少しは片付け手伝っても良いんじゃない?」


 台所で片付けをしている俺と、それを手伝うゼナ、そしてソファに座りくつろぐエレナという構図……なんか不公平じゃない?


「二人いるんだから、私が手伝う必要ないでしょ?」

「――だってさ、ゼナ」

「仕方ないよ、エレナ姉だもん」


 隣で黙々と片付けを手伝ってくれているゼナに話を振ると、彼女は肩を竦めてそう言った。


「ちょっと、どういう意味よ!」

「エレナはお嬢様だからね、って意味じゃない?」

「だって毎回片付けするの、ユーキお姉ちゃんと私だけだもん」

「う……」


 痛いところを突かれた、といった様子でエレナが口ごもる。

 実家では使用人なんかが片付けをしていて、エレナ自身が片付けをすることはなかったんだろう。


 とはいえそれが許されるのはメイヴィス家の中だけで、共同生活をしている現状でそんなことを続けていれば、自然とエレナに向けられる目は冷たくなるのも無理はない。


 実際に、最近はゼナのエレナに対する態度が若干冷たくなっている気がする。もちろん家事をしているとき限定で、それ以外は今まで通りであるのだが。


「まぁ、家柄上家事を手伝ったことがないのはしょうがないとしても――ここでは手伝わないとゼナに嫌われちゃうよ?」

「別に嫌ったりはしないよ? ただ、女の子としてどうなんだろうなぁとは思うけど」

「あ、確かに」

「うぅ……」


 女の子としてどうなんだろうっていうのは、俺も同意である。

 貴族で使用人がやってくれるとはいっても、最低限の事は自分で出来る方が良いんじゃないだろうか。


 まぁ世の中には主夫という言葉があるくらいだし、家事が出来ない女の子を全否定する訳ではないけどね。


「わ、分かったわよ――手伝えばいいんでしょ、手伝えば!」

「家事が出来るようになるのはいい事だよ? 私が保証する」


 何せ現在進行形で役に立ってますからね。一人暮らしで培った家事スキルが、こんなところで生きるなんて思わなかったけど。


 色々言いたそうにはしているものの、結局エレナも手伝い始め、三人で素早く後片付けを終わらせたのだった。



「あー!ユーキちゃん! 最近来なかったから心配してたんだよー?」

「ミリアちゃんゴメンね。暑かったからクエスト受けに行く気になれなくてさ」


 ギルドに着くと、ミリアちゃんが俺たちを出迎えてくれる。彼女の姿を見るのは久しぶりだ。


「そっかぁ、かなり暑かったもんねぇ――エレナちゃん、ゼナちゃんも久しぶり〜!」

「久しぶり、ミリア。元気だった?」

「ミリアお姉ちゃん、久しぶりだね」


 三人仲良く挨拶を交わしている。

 出会った当初は他人行儀だったゼナも、ミリアちゃんの人柄の良い明るい性格を知ってからは、彼女に懐くようになっていた。

 誰とでも仲良くなれるミリアちゃん、流石である。


「今日はクエストを受けに来たんだよね?」

「うん、何かいいクエストあるかな?」

「ちょっと待ってねぇ――あ、これなんてどうかな」


 そう言ってミリアちゃんが差し出してきたのは、商人の護衛の依頼だった。

 報酬は――金貨十枚!?


「この報酬、ちょっと多くない?」

「あ、やっぱりエレナもそう思う?」

「金貨十枚って、そんなに凄いの?」

「んっと、今毎日食べてるような食事を、一ヶ月続けても大量のお釣りが来るくらいだね」

「ええええ!?」


 報酬の凄さを知ったゼナが、驚愕の表情を浮かべる。

 それも無理はないだろう。メイヴィス家からの大量の資金を得て、感覚が麻痺しかけている俺でさえ異常だと思える報酬額なのだから。


「なんでこんなに報酬が良いのかしら、訳あり?」

「今年は特に猛暑だったから、冒険者さんが集まらなくて――それに隣国までの護衛だから長旅になるし、腕の良い冒険者をっていう話だから、報酬額も多くなってるみたい」


「長旅かぁ……それにしても腕の良い冒険者って事なのに、私達に依頼しても良いの?」

「国が依頼したクエストを達成して、宮廷療術士っていう肩書きを持ってる人がいるってだけで、充分過ぎると思うよ? ユーキちゃん」


 ん、そう言われるとそうなのかな?

 宮廷療術士に関しては、全くの有名無実なんだけど、周りから見れば大層な肩書きなのは間違いない訳か。


「まぁ良いんじゃない? とりあえず受けてみて、依頼主が断ればそれまでなんだし」

「確かに――受けるだけ受けてみようか」

「じゃあ手続きしちゃうけど、良いかな?」

「うん」


 依頼を受ける代表として俺のギルド証をミリアちゃんに渡し、彼女が手続きを済ませて受注が完了した。


「ユーキちゃんの事だから大丈夫だとは思うけど、無理はしないでね? ――エレナちゃんとゼナちゃんもだよ?」


 ミリアちゃんがクエスト詳細を手渡しながら、思案顔で声を掛けてくる。


「ありがとうミリアちゃん、気をつけるよ」

「まぁユーキがいれば問題ないわよ」

「そうだね、ユーキお姉ちゃんがいれば平気だよ」


 そんな彼女に、エレナとゼナが軽い調子で答える。

 ――君達二人には危機感が足りないよ?



 こうしてクエストを受注した俺達はギルドを後にして、依頼主に会いに行くことにした。


 依頼主の商人は恰幅の良い男性で、最初は女三人ということで怪訝そうな顔をしていたのだが、俺の胸元に付いていた宮廷療術士の証を見ると顔色を変え、すぐさま了承したのだった。

 肩書きってしゅごい。



 軽く打ち合わせをした後、出発は翌日の朝になるということだったので、一度家に戻り準備を整えることにした。


「とりあえず長旅になるらしいから、日持ちする食料と、テントと寝袋は用意しないとね」

「それから座布団も」

「座布団?」


 家への道すがら、持ち物について話し合っていると、エレナが声を上げて、ゼナが不思議そうな顔をする。


「前回は椅子が硬い馬車で移動する事になって、お尻が痛いって文句言ってたんだよね、エレナが」

「――あれはもう懲り懲りよ」

「あ〜。そういえば、遺跡からの帰りで言ってたような……」



 そんな話をしながら俺達は街中の店を見て回り、エレナが所望する座布団を含んだ必要な物を買い揃えてから、家に帰り明日の出発に備えた。

更新遅れまくりで本当に申し訳ないです・・・!

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