その装備は呪われているようだ
あれから予想通りにエレナから追及された。
経緯を説明すると「そういうことなら」と納得してくれたが、彼女が俺のことを『ユーキお姉ちゃん』と呼んだ瞬間、固まっていたのは何でだろうね?
正直、一番不安だったのはライルさんとの対面だった。
同じエルフということもあり、何か言われるんじゃないかと心配していたけど、大変だったねとゼナの頭を撫でている様子を見ると、杞憂に終わったようだ。
彼曰く、そういった風習が嫌でエルフの里を出た、とのこと。
他の二人も悪印象を抱いた様子はなく、笑顔で受け入れてくれた。
とまぁ、これが今朝起きた出来事である。
現在、俺達は遺跡内を進んでいた――もちろん彼女も一緒だ。
昨日のように大量の敵とは遭遇していない事と、魔法を使えるゼナという仲間が増えた事もあり、安定した進行となっている。
――というか、俺ほとんど何もやってないや。
後衛が三人になり、ほぼアウトレンジで倒していっているので、たまにかすり傷を負う前衛2人に回復を掛ける程度である。
なんか悔しくて、途中聖なる矢を撃ってみたら「もしもの時のために温存しておいて」と怒られた。
攻撃を禁止され、味方を回復する必要のない癒し手さんはこの通り後方で置物状態ですよ? いや、良いことなんだけどさ……
そんな調子で、調査再開から数時間は経過しただろうか。
巨大鼠やら大蜘蛛といった無駄にでかいモンスターを倒しながら進んで行き、ある空間の前に辿り着いた。
中心には光る石――クリスタルらしき物が浮いている台座があり、その周囲には崩れた木片と本が散らばっているようだ。
隅の方にはよくわからない器具のような物が置いてある。
「どうやって浮いてるんだろう、あれ」
「分からないなぁ。もしかしたら、それを研究していたのかもしれないね」
確かに研究所っぽい雰囲気をしている気がするし、ライルさんの言葉通りかもしれない。
そんな会話をしながらクリスタルに近付き、散らばっている本の一つを拾い上げて中身を見てみる。
「ユーキお姉ちゃん、何が書いてあるの?」
興味津々といった様子で、ゼナが尋ねてくるが……
「ごめん。何語で書いてあるか分からないから、読めないや」
「そっかぁ……」
残念そうに呟くゼナ。
なんだろう、アラビア語みたいな感じの文字で書かれているようで、全く理解できない。
「これ、古代言語だね」
同じく隣で本を広げていたライルさんが呟く。
「ライル、読めるか?」
「いーや、流石に無理。専門家じゃないからね」
「ライルなら読めると思ったんだけどなぁ」
幼馴染三人が会話をしている中、エレナが俺の袖を引いていた。
「ん? どうしたの?」
「ユーキ、あれ」
エレナが指差した方の地面に、なにやら光を反射している物が見えた。
「――指輪?」
近寄って拾ってみると、透き通った綺麗な宝石のような物が付いた指輪だった。
なんとなく人差し指にはめてみると、サイズはぴったりと合うようだ。
「わ――綺麗」
ゼナが俺の指にはまっている指輪を見て声を上げる。
エレナも、口にはしなかったが指輪を見る目が輝いているのを見るに、同じ事を思っているのだろう。
「これも一応資料になるかもしれないから――あれ?」
指輪を外そうとしてひっぱるも、抜けない。
その様子を見ていたエレナとゼナも指輪を引っ張ってみるも、やはり外れない。
え、まさか呪いの装備的アレですか?
今の所変わった事はないけど、参ったな……
――よし。
「エレナ、ゼナ。この指輪は無かったことにしよう」
「ユーキ?」「ユーキお姉ちゃん?」
俺の提案に戸惑った様子で、2人が同時に声を上げる。
「後先考えずに指輪を嵌めた私が悪いのは間違いないんだけど、バレたら後々面倒な事になりそうだし」
まぁ指輪がそこまで重要な資料になるとは思えないけど。
「ユーキがそう決めたなら、私は従うけど……」
「私はユーキお姉ちゃんの言う通りにする」
二人がそう返してくれたため、指輪の件は秘密という事になった。
あれから調査団が部屋を調べると、色々な資料が出てきたようだ。
一刻も早く解析したい物があるという事で、今回の遺跡調査は終了となり、俺達は今アルシールの門前にいた。
アベル達と挨拶をして別れ、三人で家へと向かう。
「それにしてもユーキ――その指輪どうするの?」
俺の右手を見ながら、エレナが聞いてくる。
「んー、今の所害がないみたいだし、様子見かなぁ」
「ユーキお姉ちゃんに似合ってるから、そのままでも良いと思うよ?」
「そう?ありがとね」
ゼナの頭を撫でると、嬉しそうに破顔する。
その様子をエレナが面白くなさそうに見ていた為、一応エレナの頭も撫でておく。
「――別に撫でて欲しいなんて思ってないわ」
なんて言いつつも、顔は緩んでいるようだった。
食材を買って帰り、家に着いてからゼナの歓迎会を兼ねた料理を振舞う。
焼き魚と野菜スープという簡単なものではあったが、美味しいと言いながら夢中になって食べるゼナを、エレナと二人でほっこりしながら眺めていた。
食事を終え、部屋をどうするかという話になった時、「ユーキお姉ちゃんと同じ部屋がいい」というゼナの一言に「なら私も同じ部屋にするわ」とエレナが言い出し、話し合いの結局全員が同じ部屋を使う事になった。
俺の精神衛生上よろしくはないけど、嬉しそうにしている二人を見ているとそんな事は言い出せないよなぁ。
――何はともあれ、これから賑やかになりそう
そんなことを思いながら、食事の後片付けに励む俺なのだった。





