遺跡調査へⅡ
俺達は、灯火の光を頼りに暗闇の中をゆっくりと進んでいた。
光源はあっても何があるか分からない以上、石橋を叩いて渡るくらいの気持ちでいる方が良いと判断したからだ。
「――そういえば、ここってどんな遺跡なんだろうね」
ふと疑問に思った事を声に出してみる。
クエスト詳細には最近発見された遺跡、としか書かれていなかったし、詳しい事は知らされていないんだよね。
「この辺には大昔に癒しの力で栄えた都市があったみたいだけど、戦争で失われたって伝わってるね」
そんな俺の疑問に、ライルさんが答えてくれた。
「戦争?」
「うん。まぁ俺も詳しくは知らないんだけど、なんでも魔族との戦いがあったとか」
「魔族ねぇ――魔王とかいたりして」
「いたみたいだよ?勇者に滅ぼされたらしいけど」
冗談で口にしたんだけど……本当にいたよ魔王。
おまけに勇者もセットで。なんというRPG展開。
「魔王だの勇者だのって御伽噺じゃないの? 」
「さぁ? 今話したのは、あくまで言い伝えだからね。どこまでが真実で、どこまでが虚偽なのか、それを知るための遺跡調査なんだろうさ」
ジェシカさんの疑問に答えたライルさんは、そう話を締めくくった。
会話が途切れてから暫く進むと、正面に続く道と右手へと伸びる細道がある場所へと辿り着く。
「道が別れたか、どうする?」
「とりあえず調査団の人に確認してみようか」
俺はアベルの言葉にそう返すと、調査団長の指示を仰ぎに向かった。
「――先に右の方を調査するって」
「ん、じゃ行くか」
調査団長からの指示を受け、俺達は右の道へと歩を進める。
今までの広い通路とは異なり、人が三人並ぶのが限界という程の狭い道の先には、下へと続く螺旋状の階段が待ち構えていた。
「うぇ、階段かぁ。疲れるから嫌だなぁ」
「ジェシカ、年寄り臭いぞ」
「おいこら、誰がババァだって?」
前でまたもや言い争いを始める2人。
――なんというか、本当に仲がいいんですね。
そんな様子を眺めつつ、螺旋階段を降っていく。
視界が回るんじゃないかと思ったほど長く感じた階段も終わり、広い空間へと続く道に出た。
灯火だけではその全容を確認することは出来ないが、長方形の箱らしきものが左右に列をなしているようである。
「何ここ……なんか嫌な感じ」
エレナが不快感を示していたが、それは俺も同感であった。
何だろう、空気が重く感じる、というのだろうか。
「とりあえず進んでみましょう?」
ジェシカさんの言葉に頷くと、空間の奥へと向かう一同。
「あれは……?」
左右に木製の長箱が整列している通路の奥、行き止まりと思われる場所に、大きめの祭壇らしき物があった。
近付いてみると、祭壇と思われる物の上に人型のナニカが横たわっている……
――人骨だった
肋骨部分にナイフが挟まっており、周囲には黒い染みが付いている。
「なんだこれ……」
「何かの儀式の跡、なんじゃないかな」
「魔法陣?」
ライルさんが指差した祭壇のある床には、うっすらと魔法陣らしきものが描かれている。
「――悪趣味ね」
嫌悪感を露にするジェシカさん。
それは皆同じようで、一様に顔を顰めていた。
「後は専門家に任せればいい。早くここを出よう?」
エレナの意見に頷いて戻ろうとした時、背後から乾いた音が聞こえた。
――そう、例えるなら木材を床に落としたような
後ろを振り向くと、遠くの方に青白い2つの光が浮かんでいるのが見える。
「今、何か音が聞こえたよね?」
「ユーキ、あれ……」
エレナも気が付いたらしい。
青白い光はカラカラと音をたてながら、ゆっくりと近づいて来ている。
「皆、戦闘準備だ……」
ライルさんの声と、乾いた音が一斉に聞こえたのはほぼ同時だった。
「――スケルトンか!」
アベルが武器を構えながら叫ぶ。
青白い光はスケルトンの眼光に灯るものだったらしい。
最初は2つだけだったそれも、今は闇の中で無数に輝いていた。
「【風よ、刃と成りて敵を切り裂け】風刃! ――もう!これ、何体いるのよ!」
「さぁね! 少なくとも十や二十じゃなさそうだ!」
魔法を発動しながら叫ぶジェシカさんに、弓を射ながら答えるライルさん。
近付いてきたものをアベルとエレナで撃退する。
しかし、攻撃を受け崩れてもすぐに復活する骸骨。
カタカタと顎を鳴らすその姿は、無駄な行為だと嘲笑うかのようにも見える。
「これじゃキリがない……!」
槍を振るい正面の敵を突くエレナの側面で、別のスケルトンが武器を振り上げて近付いていた。
「――え?」
エレナもそれに気が付いた様だが、槍で敵を穿っている状態の彼女は動けないでいる。
ジェシカさんが呪文を唱えようとしているが、間に合わないだろう。
――このままじゃエレナがやられる
そう理解した瞬間、俺は咄嗟に呪文を発動させていた。
「聖なる矢!」
杖の先から放たれた光の矢は銀の軌跡を描き、武器を振り下ろそうとしていたスケルトンへと吸い込まれ、後ろにいた他の敵諸共消し飛ばした。
「エレナ、大丈夫?」
「う、うん。ありがとうユーキ」
無事を確認する俺の声に、そう返す彼女。
どうやら怪我はなさそうだ。
「全く――ユーキちゃんには驚かされっぱなしね」
「本当だね」
その様子を見ていたジェシカさんの言葉に同意するライルさん。
「しかし、このままじゃマズいぞ」
アベルの言う通りだ。
最初に迎撃を始めた場所からはだいぶ後退しており、壁際まで追い詰められるのも時間の問題だろう。
一気に殲滅する方法が一つある。
ただ、下手したら建物が崩れる可能性も――いや、このまま戦っても結果は変わらないか。
「入り口まで全力で戻ろう。私に考えがある」
戸惑う様子はあるものの、このままじゃやられるという結論に至ったようで、顔を見合わせると全員が頷いた。
「守護付与――これで少しはマシになるはず」
皆に防御魔法を掛ける。
どれだけ防げるか分からないが、以前空中から落下した際は即死を免れたくらいだ、それなりに期待して良いだろう。
「よし、行くぞ!」
アベルが先陣を切って突入する。
正面のスケルトンを斬り倒しながら進み、脇にいるものはエレナ・ジェシカさん・ライルさんで倒していく。
強引に進んでいるだけあって多少攻撃が掠めることがあったが、守護付与のお陰で軽い傷が付く程度で済んでいた。
スケルトンの波を裂き、ようやく入り口まで辿り着く。
「それで、これからどうするんだい?」
迫ってくる骸骨の群れを見ながら、ライルさんに尋ねられる。
「ここで迎え撃ちます。少しだけ耐えて、正面に敵を集めて欲しいんです」
そう言ってアベルに視線を向けると、笑って頷いた。
「次はどんなトンデモを見せてくれるか楽しみだ」
彼はそう言うと、スケルトンの方へと向きを変えて盾を構え直す。
「皆は彼のフォローをして。合図したら全員私の後ろへ」
そうして再びスケルトンと衝突した。
押し寄せる骸骨の群を相手にし始めて数十秒、ぼんやりとした青い光で正面の闇が埋め尽くされる。
――そろそろかな?
「皆、私の後ろへ!」
合図を受けて、全員一斉に俺の後ろへと下がった。
これから使うのは、前に緊急時以外は封印すると決めた魔法。
――崩壊しないと良いなぁ。
「聖なる光線!」
杖の先から放たれた太い光線は、真っ暗だった部屋を光で埋め尽くし、スケルトンの群を飲み込んでいったのだった。
気が付いたら100ptを超えていました。
ブックマークして下さった方、評価をしてくれた3名様、そして読者の皆様。
本当にありがとうございます。
拙い文章、内容ではありますが
これからも頑張って参りますので、どうかよろしくお願い致します。





