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遺跡調査へⅠ

 今回の護衛任務は、他にも数名の冒険者に声が掛かっているらしい。

 普通に考えたらヒーラーだけじゃ護衛なんて無理だから当然か。


 クエスト詳細に書かれていた集合場所へ行くと、既に何人かの冒険者が集まっているようだった。

 俺達が近付いていくと、それに気が付いた冒険者が声を上げた。


「――お、銀の聖女が来たぞ」

「あぁ、あの一撃で暴漢を気絶させた子か」


 一撃で暴漢を気絶させた聖女?

 随分物騒な聖女もいるものだ、何処にいるんだろ?


「ユーキ、あなたの事なんじゃない?」


 辺りを見渡す俺を見て、エレナが突っ込みを入れる。


「え、いや聖女じゃないし」

「白銀の髪、ナンパしてきた男を気絶させた」


 髪の毛を指さしながら指摘される。


 えぇ……

 いや確かに投げ飛ばしましたけど。

 聖女なんて大層な渾名、貰った憶えも名乗った憶えもないんだけどなぁ。



「俺はアベル。俺たちのパーティーにはヒーラーがいないから助かるよ、よろしくな聖女様」


 冒険者の中でも大柄な男が名乗りながら右手を差し出してきた。


 全身に銀の甲冑を纏い、背中に盾と剣を背負ったその姿は、ゲームで言う壁役(ナイト)の姿を彷彿させる。


「よろしく。私の名前はユーキ――聖女じゃないよ」


 出された手を握り返しながら、一応訂正しておく。


「お、おう。――まさか握手を返してくれるとは思わなかった」


 少し照れたような顔でそんな事を言われた。


「? 求められたから応じたんだけど、そんなにおかしな事だった?」


 握手くらい普通だと思うけどな。


「彼こんな見た目だから、怖がられる事が多くてね〜 初対面の女性に握手を求めて、返されたのは初めてなのよ」


 そんな声と共に、アベルの後ろから黒衣を纏い大きな帽子を被った女性が歩いてくる。


「はぁい、私はジェシカ。魔導士(ソーサラー)よ」

「こんな見た目とはなんだ、こんな見た目とは」

「え〜?詳しく言われたいの?」


 自己紹介するや否や、言い争いを始める2人。


 ――仲良いなぁ。


「ほら、お前らやめろ。いい歳した大人が言い争いなんてみっともないぞ」


 そんな光景をエレナと共に生暖かく見つめていると、そう言って争いの仲裁に入る男性が一人。


「騒がしくてごめんな? 俺達は幼馴染で昔からこんな感じなんだ。あ、俺はライル、弓術士(レンジャー)をやってる。ユーキさんって言うんだよな?よろしく頼むよ」


 身体付きは細く長身で、尖った長耳と整った容姿、緑を基調とした服を着ているその姿は、まるで童話から出てきた妖精かのように見えた。


「よろしくライルさん。えっと、もしかしてエルフ?」

「そ、妖精族(エルフ)さ」


 おぉ、この世界にもいるのかエルフ!

 初めて会ったのが男のエルフなのは残念だけど、腹立つくらい美形だし、きっと女のエルフも美人なんだろうなぁ。


 まだ見ぬ女エルフに想いを馳せていると、ライルさんから質問が飛んできた。


「で――ユーキさんの隣にいる子は誰なんだい?」


 あ!そういえばまだエレナが名乗ってなかった。

 隣にいるエレナの肩を叩き、自己紹介するように視線で訴える。

 彼女は俺の視線を受け、面倒そうにしながらも口を開いた。


「私はエレナ。よろしく」


 もう少し愛想良くすればいいのに。

 こんな様子で大丈夫だろうかと少し心配になったが、アベルさん達は特に気にした様子は無かった。



 そうして全員の自己紹介が終わり、交流を深め始めた頃になってようやく依頼主の調査団が到着する。


 服装を薄茶色の動き易そうなものに統一された集団と合流し、腕章をつけたリーダーらしき男から軽く説明を受けた後、俺達は馬車で遺跡へと向かった。




 馬車に揺られる事数時間、目的の遺跡にたどり着いた頃には、だいぶ陽が傾き始めていた。


「椅子が硬くてお尻が痛くなった」

「――確かに少し硬かったかな」


 不機嫌そうに自分のお尻をさするエレナ。

 まぁメイヴィス家で使っていた馬車と違い、クッションなんて付いてなかったからね。


 車とかは衝撃を吸収する工夫がされているから、砂利道を走っても大丈夫だけど、馬車はダイレクトに衝撃が来るからなぁ。


「もう少しまともな馬車を用意出来なかったのかしら」

「まぁ我慢するしかないよ」


 言いたいことは分かるけどさ。

 次からはクッションでも用意した方がいいかもしれない。


 そんな会話をしているうちに、調査団は先に遺跡の入り口へと進んでいた。

 慌てて後を追い入り口へと辿り着くのと同時に、調査団長が話し出した。


「これより先は、未だ人の踏み込んだ事のない遺跡だ。何があるか分からない。各々、注意して進むように」


 そう言うと、今度は俺達冒険者のいる方へ顔を向ける。


「改めて、今回の護衛任務を受けてくれた事、感謝する。危険もあるかと思うが、よろしく頼む」


 そう感謝の言葉を口にしてきたのだった。



「よし、それじゃ頑張ろう」


 俺の一言にエレナが頷く。


「とりあえず前方にアベルとジェシカの2人、後方は俺とエレナちゃん、中心にユーキさんって布陣でいこうか」


 ライルさんの指示に従い配置に着くと、調査開始の声が聞こえ、アベルを先頭にして俺達は内部へと足を進めた。



 遺跡内には光源がなく、足元も見えない状態だった。

 ちなみに調査団は俺達の後方に着いてくる形になっている。

 先に俺達が安全を確認してから進む事になったからだ。


「暗くて何も見えんな。ジェシカ、灯火(イグナイト)を頼む」

「え〜、あんたが松明でも持ちなさいよ」


 アベルの言葉にジェシカさんが反発する。


「仮に敵がいた時に、松明落としたらまた何も見えなくなるぞ?」


 うん、まぁその通りだろうね。


「それはマズイわね――仕方ないなぁ。【闇を照らす光よ、欠片を以て我が周囲を照らしたまえ】――灯火(イグナイト)」


 ジェシカさんが詠唱し、灯火を発動させる。

 ――そういえばそんな内容だったっけ。

 詠唱しないで発動出来るから、面倒で覚えなかったんだよなぁ。


「よし、これなら見えるな」

「ユーキちゃんはどう?灯火使える?」


 前方は明るくなったが、俺達のいる場所までは届いていなかったため、ジェシカさんが後ろを向いて尋ねてくる。


「前に使えたから大丈夫なはず――灯火(イグナイト)」


 ――以前使った時より少し明るくなったかな?

 そんな俺を驚いた様子で見る仲間達。


「ちょ、ユーキちゃん詠唱は……?」

「私、なんか詠唱しなくても魔法使えるみたいで」


 俺の言葉に唖然とするジェシカさん。


「あの噂は本当だったんだね」


 と、後ろでライルさんが呟いた。


「あの噂って?」

「ギルド内で詠唱無しに魔法を使った子がいたって、一時期話題になってたんだ」


 エレナの疑問に彼が答える。


「まさか詠唱しないで魔法が使える子が本当にいるなんてね。俺も今初めて見たけど、未だ信じられない位さ」

「ユーキちゃんが魔術士じゃなくて良かったぁ。もしそうだったら、私の立つ瀬が無くなるところだったよ〜」


 俺としてはその方が良かったんだけどねと、心の中で呟いておく。

 仮に詠唱が必要だとしても魔術士が良かったなぁ……


「まぁ、詠唱無しで回復魔法を使えるヒーラーがいるなんて、むしろ心強いじゃないか」


 アベルの一言に皆が「確かに」と同意して、この話題は終わったのだった。

次回から本格的に遺跡探索が始まる予定です。

予定です。

大事な事なので2度(ry

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