第44話 今流行りの詐欺DM相手に割と本気で遊んでみた話
まいど!
東雲明です。
昼間の命懸けの推し活、もとい病院通いが効いたのか、わたくしの麗しき美声が戻りつつあります。
いやあ、長かった。
鼻声プリンセスとして地獄フィールドをさまよい、薬という名の推しグッズを抱えて帰宅し、ようやく人間らしい声を取り戻し始めたわたくし。
このままいけば、将来アニメ化した時に主題歌を自分で歌うという、冷静に考えると夢だけは銀河規模の計画にも、再び一歩近づいた気がします。
まあ、その前にまず本編を書けという話なんですけどね。
さてさて、今回はちょっと楽しい……いや、楽しいと言っていいのか。むしろ怖いのか。怖いのに、なんでちょっと楽しくなっているのか自分でもよくわからないお話がございます。
皆さま、最近よく見るではありませんか。
詐欺DM。
「あなたのアカウントに問題があります」
「認証が必要です」
「このままだと凍結されます」
「こちらのリンクからログインしてください」
みたいな、令和の妖怪みたいなやつです。
昔は井戸から貞子が出てきましたが、今はDM欄から怪しいリンクが出てくる時代です。
来る〜、きっと来る〜、奴が来る〜♪
はい、ここで実年齢がにじみ出ましたね。
でも仕方ない。あの曲は反射で脳内再生されるんです。もうこれは世代の呪いです。
で、わたくし、正直ちょっと油断していたんですよ。
「いやいや、わたしのアカウント、ブルーマークついてますし?」
「さすがにそういう怪しいDMは来ないのでは?」
「来たとしても、こっちは日々AIとデュエルしている身。そこらの詐欺DMごときに負けるわけがない」
などと、謎の自信をまとっておりました。
この時点でかなり危ないですね。
詐欺DMより先に、自分の慢心を疑った方がいい。
しかし、一昨日。
来たんです。
奴が。
DM欄に、すうっと。
貞子のように。
いや、井戸からじゃなくて通知欄から来ましたけど。
スマホの画面に、見慣れない怪しい文面。
「おお……これが噂の……!」
普通なら即ブロック、即通報、即終了です。
ですが、その時のわたくしは違いました。
風邪で弱った体。
戻りかけの美声。
伸びたり伸びなかったりするPV。
そして、常にエッセイのネタを探している創作者の業。
この四つが重なった結果、わたくしは思ってしまったのです。
「これ、エッセイネタにできるのでは?」
やめなさい。
普通にやめなさい。
でも思いついてしまったものは仕方ありません。
もちろん、怪しいリンクは踏みません。
個人情報も渡しません。
パスワードも入力しません。
そこはちゃんと大人です。
でも、返信だけなら?
相手を困惑させるだけなら?
ということで、わたくしは割とガチ目に返信してみました。
「問題なのは、書籍化・漫画化・アニメ化の打診メールが来ないんですが?!」
はい。
相手からしたら、たぶん一番困るやつです。
向こうはおそらく、こちらを不安にさせたいわけです。
「アカウントが危ないですよ」
「すぐ対応しないと大変ですよ」
「こちらのリンクから確認してください」
みたいな流れに持っていきたいわけです。
そこに突然、
「書籍化漫画化アニメ化の打診が来ないんですが?!」
です。
知らんがな、ですよ。
向こうからしたら本当に知らんがなです。
詐欺師もびっくりです。
「え、そこ?」
「いや、こちらアカウント認証詐欺部門なんで」
「出版関係は担当外です」
みたいな空気になったかもしれません。
もちろん、実際にそんな返信は来ていません。
結果はどうなったか。
既読無視です。
はい、完全なる既読無視。
詐欺DMにすらスルーされる女、東雲明。
悲しい。
いや、悲しくはない。
むしろこれで正解です。
だって相手からしたら、なんのことかわかんないんですよ。
こっちは割と本気で「書籍化の打診まだですか?」という魂の叫びを送っているのに、向こうはたぶん無差別にテンプレを送りつけているだけ。
もしかしたら人間ですらない。
Botかもしれない。
そして、そのBotに向かって、書籍化漫画化アニメ化の夢を叩きつけているわたし。
ここまでくると、どっちがBotなのかわからなくなってきます。
向こう「アカウントに問題があります」
わたし「書籍化の打診が来ません」
向こう「……」
わたし「漫画化もまだです」
向こう「……」
わたし「アニメ化したら主題歌は自分で歌います」
向こう「……」
完全にこちらの方が怖い。
詐欺DMのはずが、途中から夢の圧が強すぎる作家志望者の独演会になっている。
たぶん相手のシステムも困ったと思います。
「このユーザー、不安を煽る前に自分の夢で勝手に燃えている」
「リンクを踏ませる隙がない」
「むしろこちらが相談を受けている」
そう考えると、既読無視も納得です。
詐欺DMを撃退したというより、相手がそっと距離を取っただけかもしれません。
怖がらせたのは、向こうではなく、わたし。
めでたしめでたし。
……いや、めでたしなのか?
でも、ふと思ったんです。
これ、最近わたしのところに来ている騒音のクレームとか、意味不明の脅迫とかにも、ちょっと応用できるのでは? と。
もちろん、深刻に受け止めるべきところはちゃんと受け止めます。
でも、毎回こちらが心をえぐられて、必要以上に怯えて、脳内で事件化して、ひとり反省会を開催して、さらに二次会まで開いてしまったら、こちらのメンタルが先に閉店ガラガラです。
なので、過度に反応しすぎず、騒ぎすぎず、AIBotのごとく、
「分かりました〜。気をつけまーす♡」
くらいのテンションでいったん受け流す。
そして、裏ではちゃんと社長に報告。
確認してもらう。
表ではふんわり。
裏では記録。
これぞ令和の強かな生存戦略。
名付けて、東雲明式・にこにこBot対応です。
「分かりました〜気をつけまーす♡」
「確認してもらいまーす♡」
「社長に共有しまーす♡」
この三段活用。
相手からしたら、たぶん一番やりにくい。
怒らせようとしても怒らない。
怯えさせようとしても怯えすぎない。
でも、ちゃんと報告はする。
そして最終的に、
「あ、これ確認されるやつだ」
と思わせる。
静かに強い。
見た目は鼻声プリンセス。
中身は記録を残すタイプのBot。
いや、なんだそのキャラ設定。
書いていて自分でもだいぶ嫌です。
でも、自分の身は自分で守る。
これが東雲明の強かな生き方です。
詐欺DMにも、謎クレームにも、意味不明な脅しにも、必要以上に踊らされない。
ただしエッセイのネタにはする。
ここが大事です。
転んでもただでは起きない。
DMが来たらネタにする。
騒音クレームが来たらBotになる。
書籍化の打診が来ないなら、詐欺DM相手にまで訴える。
たぶん方向性は間違っています。
でも、今日もわたしは元気です。
美声も戻りつつあります。
あとは書籍化漫画化アニメ化の打診メールが来るだけです。
詐欺じゃないやつでお願いします。
では、またです!




