転移者と転生者と魔王の娘
生徒が誰もいなくなった学園。ただ俺とルリは自分たちの1年Sクラスにいる。目的は俺がこの教室にある人物を呼んだから。
廊下のほうから足音が聞こえる、そして扉は開かれた。
「どうして、ハクヤ君とルリさんがここにいるんすか?」
やってきたのは一年Sクラス第9位の蒼井将太だった。
「手紙、見てくれたんだろ?まぁ書いた通り将太と話がしたいんだよ」
「なるほど、あの手紙の送り主はハクヤ君だったんすね。いやぁ驚いたっすよ、僕と話がしたいって内容がご丁寧に日本語で書かれてたんすから」
俺が渡した手紙を持ちながら教室の扉を閉める。若干警戒はしてるようだが、俺たちの近くの椅子に座った。
この教室に将太を呼び出したのは俺で、必ず来てもらうために、日本語で文字を書いた。まぁ転移者と交流を持ちたかったというだけなのだが、含みがある方が来てくれるんじゃないかって思惑はあったが。
「一つ確認したいんすけど、二人とも転移者って事でいいんすか、名前とかは日本人っぽくないっすけど」
「いや、俺もルリも転移者ではない、何ならルリは完全にこの世界の人間だ」
「...は?」
俺が答えると一瞬の間の後、将太が呆けたような声を出した。
俺と将太が『日本』って単語を出すたびにルリは首をかしげていた。
「じゃ、なんでハクヤ君は日本の文字がわかるんすか?」
当たり前の質問だ、転移者ではないのに日本のことは知っている、疑問に思わないわけがない。
「まず、俺は転移者じゃなくて、転生者なんだよ、だから日本の知識もある、わざわざ呼び出したのは、この事をあまり多くの人に知られないようにする為なんだ。まぁルリがこの場にいるのはその秘密を知ってる人だからだよ」
俺の話を聞いて将太はポツリとつぶやいた。
「なるほど、転生者っすか。この世界に転移者は多数いるっすけど、転移者の存在は聞いた事がない。ハクヤ君はその秘密を隠してるんすね」
「そういうことだ」
その後も俺と将太はお互いのことを話していった。
将太が転移してきたのは二年前の事で、こっちの世界には姉と一緒に来ていた事。
アレスと出会っていろいろやってもらった事。
この世界での生きるすべを学んだ事。
そして一緒に来た姉がもう長く持たない事。
「ねぇ将太のお姉さんがもう長くないってどうゆう事?」
俺はその件については将太が言うまで聞くつもりはなかったが、ルリがあっさり聞いてしまった。
まぁたしかに気にならないわけではない。聞けば将太のお姉さんは花蓮さんというらしく、将太の二つ年上らしい。
その年齢でどうして?とは思うが詳しく聞かなくても、何かがあったのは事実だと思う。花蓮さんの話をする将太の顔は少し辛そうだった。
ちなみに将太は今年で17歳でこっちに来たのは15歳の頃だらしい。
俺を含めたこっちの世界の人間達は13歳になる年に学園通えるようになるが、異世界人は別で、通いたい人間が通うシステムになっている。たいていの異世界人は冒険者になるらしいが、将太みたいな例外はいる。
将太は暗い雰囲気を漂わせ静かに語りだす。
「姉さんはこの世界に来て半年でかなり凄い治癒術士になったんすよ。それで当時、勇者と名乗る人のパーティーに参加したっす。まだ僕はまともに戦えもしないで生活の資金を稼いでいたのは姉さんだったっす。勇者も元日本人で一緒にいるうちに姉さんは勇者に惚れてしまったらしいんすよ。そして事が起きたのは約一年前っす、勇者パーティーは【バジリスク】討伐という高難易度クエストにほとんど情報なしで挑み、結果クエスト失敗。姉さんは勇者を守るために【バジリスク】のブレスを受け、家に帰って休んでから目覚める事はなかったっす」
「なるほど、将太のお姉さん、花蓮さんを苦しめてるのは【バジリスク】が与える状態異常ってことね」
【バジリスク】この世界ではSSランクの魔物として知られている。硬い鱗で全身が覆われてて普通の武器では、まともに傷つけられない魔物。【バジリスク】の一番の脅威は、奴が放つブレスにある。ブレスを受けると、状態異常 麻痺 になり魔法も使えないし動きもかなり制限される、さらに数時間後には、状態異常 猛毒 も追加され常に全身に激しい痛みが襲い掛かってくる。そこから一定時間経つと状態異常 衰弱 も重なりいよいよ意識が戻らなくなる。本来ならここまで状態以上が重なれば普通は帰らぬ人になるが、何かしらの方法で、この状態でも生きてるとさらにもう一つ悪い状態以上にかかってしまう。最後の一つは前例がほとんどないためどんな状態以上かはわかっていない。
「なぁ、【バジリスク】のブレスを受けたのは一年前間で違いないよな?」
「間違いないっすよ、まぁ約一年前っすけど」
「?流石にそれはおかしくないかしら」
瑠璃の言う通りだとしたらおかしい、【バジリスク】の状態異常になって、完治しなければ一ヶ月以上生きた前例は記録にない。だが花蓮さんは状態異常が治ってないのに未だに生き続けている。まぁ将太の話を信じるなら長くはないらしいけど。
「姉さんは転移する時、スキル〔自然治癒〕を貰ってるんすよ、だからまだ死んでない。...て事だと思うっす」
瑠璃と俺の疑問を将太は説明してくれてくれた。
神からもらったスキルがあっても完全回復してないのは不思議だが、まぁそれだけ【バジリスク】が脅威って事だろう。
【バジリスク】の厄介な点は状態異常を治すことが相当難しいというところ。並大抵の魔法や薬では治らず、麻痺の状態を治すだけでも超級の回復魔法じゃないと直らない、さらに猛毒、衰弱は帝王級の回復魔法が必要になってくる。つまり魔法で治す事はほぼ無理に等しい。
「猛毒状態の時にハルモニー、は使わなかったの?」
「もちろん使ったっすよ、でもなぜかダメだったっす」
ハルモニーはほとんどの状態異常が治る高級な回復薬で【バジリスク】でも猛毒状態までなら治す事ができる、はずなのだがどうやら治らない事もあるようだ。
「なぁ将太、とりあえずお前のお姉さんの状態をみしてくれないか?必ずとはいえないが、できる事はするよ?」
俺の言葉を聴いて将太は考える。そして少ししてから、申し訳なさそうに言った
「わかったっす、今から家まで案内するっすよ、姉さんの事よろしくっす」
それから俺たち3人は学園を出て将太が住んでる家に向かう。
そして想像を絶する秘密が明らかになった。
将太「それにしても、何でルリさんがシオン君と一緒にいるんすか?」
ルリ「それは私達が付き合ってるからよ」
将太「え、まじっすか!?」




