17話 漁港な世界1 10/11
「あかりとこゆきも、まだ自分たちのこと、探してくれてるんだろうね……」
「恐らくは……ただ、今回のお題の達成は、少々難しいかもしれません」
海に視線を投げたつくよは、小さく嘆息した。
「少々悔しいですが……たまには、こういうこともありますよね」
「そうだね……でも、自分はこの世界、面白かったよ。つくよは?」
楽しそうに訊ねてきたせいなに、つくよは頷き返す。
「私も、今回の世界はとても楽しめました。帰ったら、何か料理でも作りましょう。そろそろお昼ですし……」
そこまで言ったつくよの背後から、懐かしい声が飛んできた。
「つくよー! せいなー!」
二人は、防波堤の内側に広がる内湾を振り返る。
「いやー、結構歩いたけど」
クーラーボックスを肩から提げたこゆきが、のんびりした声で呟く。
「見つからないもんだねー。そろそろ二十四時間になるみたいだしー」
「まだちょっとだけ時間あるし、うちは諦めてないよ!」
釣り具の収納されたバッグを持っていたあかりは、大きな声を上げた。すぐ近くにコンビニがあったので、外から時計を覗いてみる。11:57だった。
朝早くに旅館を出て、町を大きく一周した二人が戻ってきたのは、漁港の入り口であった。
昨日と同じように空は快晴で、気持ちの良い風が海から吹いている。
「それにしてもホントに気持ちのいいところだね!」
焦る気持ちも忘れ、あかりは大きく深呼吸をする。
「町歩きも楽しかったし、ご飯もおいしかった! 今度は四人で、こんな感じの世界を旅行したいな!」
良い気分で青空を眺めているあかりの服を、こゆきが軽く引っ張る。
「……ねー。あかりー。あそこにいるのって、つくよとせいなだよね」
「え!?」
こゆきが指差している方向を慌てて見る。
昨日こゆきが釣りをしていた防波堤の上に、黒髪の和服姿の女性と、パーカーの女の子の背中が見える。
「って……あれ間違いないじゃん!! おーい!!」
大声であかりは呼びかけるが、二人には届いていないようだ。目の前には多くの漁船が停留している湾内の海が広がっており、港内を大きく迂回しなければ、二人の立つ場所に辿り着けそうにない。
そして時間は、2分も残されていないはずだ。
隣に横にいたこゆきが、何も言わずにあかりの腕から釣り具のバッグを引き取った。
「こゆき?」
「先に行ってて。ゆきもすぐ追いかけるから」
あかりを信頼する様子でそれだけ言ったこゆきは、防波堤に向かって走り出した。
「……うん! 行ってくる!」
満面の笑みでこゆきの背中にそう声を投げ、あかりは自身の能力を発動させた。
「絶対無敵、発動!!」
そう宣言した瞬間、身体の内側で力がみなぎり、身体が軽くなっていくような感覚に包まれる。




