17話 漁港な世界1 7/11
「せいな、次の番号をお願いできますか」
「うん。読み上げるね」
駅の近くのチェーンホテルに宿を取ったつくよとせいなは、夕食を済ませた後、ロビーの公衆電話を使って問い合わせを続けていた。
旅行中にはぐれてしまった友人を探しているということにして、あかりとこゆきらしき泊まり客がいないか、宿泊施設に電話を掛け続けているのだが――
更に数件の問い合わせが空振りに終わった後、ホテルに貸してもらった分厚い電話帳を閉じたせいなが、小さな声で告げた。
「……この町の旅館やホテルの番号、さっきので最後だったみたい」
「そうですか……ありがとうございました、せいな」
受話器を戻した後、つくよはせいなに一礼する。
「結局、二人がどこに泊まってるか、判らなかったね……」
「また明日頑張りましょう。手伝っていただき、助かりました」
「ううん」
電話帳の表紙を見つめながら、せいなが続ける。
「これに載ってないような、小さい旅館とか、新しい民泊とかを使ってるのかな……?」
「そうかもしれませんね」
考え込んでいる様子のせいなに、つくよは穏やかな声で言った。
「今日はもうお風呂に入って、ゆっくり休みましょう。明日、町の人に聞き込みをすれば、二人のどちらかの足取りくらいは掴めるかもしれません」
「そうだね……これ、返してくる」
「判りました」
せいながカウンターの前へと歩いていき、人気のないロビーに、呼び鈴の音が響き渡った。
ホテルの従業員に電話帳を返してきたせいなが、エレベーターを呼んで待っていたつくよのそばまでやってくる。
「お待たせ。部屋に戻ろう……」
「ええ」
ケージに乗り込み、扉を閉まった後、せいなが呟いた。
「……ホテルの人、私たちくらいの年恰好でも、全然気にしないで泊めてくれたね身分証の提示とかも、求められなかったし」
「まあ、日本と良く似ていても、ここはお題の為に用意された世界なのでしょうし……その辺りに関しては、いつものゆるい感じになっているのでしょう」
階数表示のランプが動くのを、二人で見つめる。
「……つくよは、この世界のどこからスタートしたの?」
「私は……駅の近くの商店街に立っていました。少し道を間違えてしまい、山の中を歩いていましたが」
「なんか……つくよらしいね」
苦笑いした後、せいなは続ける。
「自分は、山の上の灯台にある、展望デッキにいたんだ」
目的の階に到着し、二人並んで廊下を歩く。
「すごく、きれいな景色を見れたんだ……山とか、町とか、海と空とか……みんなにも、見せたかった。バスの本数もすごく少なくて、こたつ部屋のテレビでよく見かける、路線バスの旅みたいだった……」
「せいなは、この世界を満喫していたようですね」
「うん……つくよは、どうだった? 楽しいもの、何か見つけた?」
「私は……」
すぐに思い浮かんだのは、最初に立っていた商店街で見かけた、魚屋の看板だった。




