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エピローグ 魔法少女への判決

 事件から三年後の二〇一〇年、世間では京一郎が脚本した新たな台本による『魔法少女ジャンヌ・ピュア 現』が放送された。それは、今までの勧善懲悪を基準とする魔法少女アニメとは違い、「現実世界に魔法少女が現れたら世間は彼女たちをどう扱うか」という事を主軸にした正義の意味を問う力作であり、主演した三上友代、海端香穂子、才原和歌美、福島恵梨香、そして中木悠介らの熱演もあって後に社会現象となる大ヒットを引き起こした。


 そんな新アニメが世間の話題をさらっていた同年十二月、東京地方裁判所は殺人容疑で起訴されていた野鹿翠に対する判決を下した。

 死刑か無期懲役か。度重なる精神鑑定で何度も延期されていたその判決に全国が注目したが、判決の法廷において被告人席でどこか遠い視線をした翠相手に、裁判長は以下のような判決文を読み上げたという。


『……事件における計画性、その後の隠蔽工作行為などから、被告人が事件当時心神喪失状態だったとは認められない。自分の事を「魔法少女」と称し、すべての行為を「正義」と称して正当化しようとするなど被告人の言動に反省の態度は微塵もなく、また今後も心の底からの反省が行えるとは到底思えない。遺族の感情、及び社会的な影響を考慮すると、第一の犯行当時被告人が十八歳だった事を考慮したとしても、本件は極刑をもって臨む他ない。よって、次のように判決を下す次第である』



『被告人を、死刑に処する』



 その後の事を記しておこう。

 野鹿翠の死刑判決に対して弁護側は即日控訴し、審理は東京高裁に持ち込まれたが、高裁は原判決を支持して控訴棄却。弁護側はなおも最高裁に上告するも、事件から五年後の二〇一二年、最高裁は原判決を支持して上告を棄却。ここに声優……ある意味では「魔法少女」だった野鹿翠の死刑判決が確定した。

 翠は東京拘置所に収監されたが、独房の中では逮捕前と打って変わって終始静かな様子だったという。刑務官の話ではまるで憑き物が落ちたかのようで、時折涙も流していたとの事だった。だが、その真意は最後まで誰にもわからなかった。


 事件から八年後の二〇一五年。寒さが一時的にぶり返してきた三月下旬、東京拘置所において「魔法少女」こと野鹿翠の死刑が執行された。享年、二十九歳。

 死刑執行に立ち会った刑務官によると、彼女の最後の言葉は、次のようなものだったという。


 私は、何も間違っていなかったはずなのに……

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