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11 おまけ:王太子殿下、地下組織で世の理不尽を知る

「我が娘の話によると、今回の発明は既に異世界との通話に成功しているようですわ」


 王家の謁見の間で、ヴァランシエール侯爵イゾルデは優雅にそう告げた。

 報告によれば、エレオノーラの抱える研究者の中に、革新的な発明家がいるらしい。


「…これは、また。どれも使い方次第では強力な兵器となりかねないな」


 渋面を作り、国王は低く唸り声を発した。

 ヴァランシエール侯爵家の跡取り娘であるエレオノーラについては、これまでもいくつかの功績を上げており、王家においても注目の次世代有望株である。


「ほほほ。妹に夢中で、気が回っておりませんの。そういうところが、まだ未熟なのですわ」


「…未熟というのは、成長の余地があるということだ。王太子(うちの)も『伸びしろ』だらけだ」


 二人は顔を見合わせて笑った。重厚な雰囲気の中、それは少しだけ「親」の顔をのぞかせていた。とはいえ、一瞬で為政者の顔に戻ると再び報告内容の精査に入る。


「王家の監視の下、研究は秘匿情報として扱おう」


「仰せのままに…」


 厳しい顔で二人は頷きあい、この会談を終わらせたのだった。


 ――そして。


「アレを革新的と片付けていいのだろうか」


 馴染みとなった『天球の灯(スフィア・ランタン)』の双子座の魔導士たちから聞いた話とは、だいぶ研究の印象が異なる。国王から監視役に選ばれた王太子クロヴィスは、思わず笑ってしまった。


「あー。じゃぁこれまでみたいに、ここに来る理由をこじつけなくてよくなったってことか。良かったな、殿下」


「殿下、俺たちのこと大好きだもんね。すぐ会いに来ちゃうもんね~」


 勝手知ったるとばかりに資料室に居座るクロヴィスを、リンとガイがニヤニヤと揶揄う。


「いつもだって、ちゃんと仕事だ。失礼なやつらだな」


 不貞腐れたように口をとがらせて、紅茶に口をつける。ほんの少しだけ図星だったのかチラリと覗く耳がわずかに赤い。


「今回は『異世界との交信機』を開発したと聞いたが…」


 話題を逸らそうと、本題に入るとリンが不機嫌そうに眉をしかめた。


「殿下、リンにはまだその話は禁句」


 ガイは困ったように笑った。クロヴィスは少し首をかしげるが、すぐに納得したような顔で頷いた。


「ああ、今回も無報酬か。しかし赤字精算ではなかったんだろう?」


「俺はね」


 赤字じゃないなら良いのではないか、と言わんばかりのクロヴィスもどうかと思うが、ガイはそこには触れずに肩をすくめた。


「リンは慰謝料の支払いで、めっちゃ赤字」


 クロヴィスが目を丸くした。慰謝料の支払いとは意外である。誰にどんな被害を及ぼしたところで慰謝料の支払いなど踏み倒しそうなのに。


「あの女、絶対『高慢』って言ったの根に持ってんだよ!リリアーヌへの慰謝料が法外すぎんだろ!!」


「リン!『あの女』とか『リリアーヌ』とか言ったらまた請求来るよ!」


 クロヴィスはその発言から、請求主を察して納得した。リンの暴言を必死でガイが阻止しようと試みるが、焼け石に水である。


 ガイの制止など全く聞いていないリンが、バンと請求書を叩きつけた。その請求書を覗き見たクロヴィスが瞬きを繰り返す。…確かに、恐ろしい桁数ではあるが。


「貴族の女性を傷つけたのであれば、妥当では?」


 一瞬、部屋の空気が止まった。リンとガイの目に同時に殺意が宿る。――この王族様(おぼっちゃま)め。


「てめぇ、ここを出禁にするぞ」


「貴族の傲慢さを見たね。俺たちとは住む世界が違いすぎるね」


 急な絶縁宣言に、クロヴィスはビクリと狼狽えた。目の色が本気すぎて怖い。左右にリンとガイが立ち、肩に手を回される。


「なぁ、王太子サマ。俺たち超絶貧乏なんだよ。大抵いつも無報酬だからさ」


「殿下、世の中ってものすごい理不尽にできてるんだよ、知ってる?」


 二人が耳元に口を寄せてくる。訳の分からない圧力にクロヴィスは体を硬直させた。

 そして、リンとガイは左右から同時にささやいた。


「「金、貸して…?」」


 まさかの王族をカツアゲである。クロヴィスは生まれて初めてチンピラのカツアゲというものを体験した。


「…これが、世の中の理不尽か…」



 王太子としてはまるで不要な経験を積み上げたクロヴィスをよそに、同じ頃、地下のさらに奥ではもう一人の問題児が別の意味で世界を揺るがしかねない研究に没頭していた。


「…音声を拾えるようになったのは大きいな。例の少女がゼノス帝国の聖女サクラだったのは驚きだが」


 カイルの足元には、膨大な資料と数式のメモが散乱している。

 真夜中、度々現れる少女が『こちら側』の世界の魔力を内包していることが分かったのは最近のことである。


「『こちら』と『あちら』に共通する魔力を、安定的に鏡に流し込む媒体の開発は必須条件か…」


「白雪姫」という物語には、その後、繋がることはなかった。おそらく聖女サクラの魔力が「あちら」の世界で変則的な現象を起こしたのだろう。


 カイルの関心は、ただ「安定した会話」が行える装置の開発にしか向いていない。


 聖女サクラの魔力が、いまだ彼女の中に残っているという事実は、報告には上がっていなかった。


 それが今後にどう影響するのか――

 まだ、誰も知らない。

今回のお話はここまでです。ありがとうございました。

文章の書き方を実験的に少し変えてみました。ウェブ小説って難しいですね。

私はすぐ修飾過多になるので、色々練習中です。


次回のお話は身内を攫われてぶち切れるリンとガイの話かなーと思っています。

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