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王子と聖女と悪役令嬢ときどき僕~王子には僕が溺愛している妹に見えるようです~  作者: 藤井めぐむ
3章

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37/80

37:妹の様子は確かにいつもと違いました

フレデリク・エクヴァル(アスタに惚れてる先輩)


金土日と2本ずつ上げて、月曜にはシグを再登場させたいです。

 殴られて熱を持ってる頬以上に、突き刺さる視線が痛かった。まあ、殴られた頬を見られているのだろうから、これもまた殴られて痛いの範疇にいれてもいいのかな? なんて、ベルトルドはぼんやりと考えながら、聖女殿の大広間の片隅でアストリッドを待っていた。

 ホールの奥には聖木をかたどったステンドグラスがあり、その前に立つのは初代聖女マルギットの像だ。天井にはマルギットが聖木を見出した時や、初めて花の魔鳥が飛び立ったの時のこととか、初代の英雄と二代目聖女の物語とか、物語が絵で綴られてる。




 物見高い人が多いのか、刺激に飢えているのか、次から次へと遠巻きにベルトルドを見てコソコソ囁きあう人たちは入れ代わるのに、肝心のアストリッドはなかなか現れなかった。

「いやいや刺激っていうなら、きのうの魔鳥騒ぎの方が刺激が強かったよねぇ」

 独りごちて、恥ずかしい気持ちを紛らわせるように、ベルトルドはすべすべの床を蹴ってみる。それに――。




 ニーナのことをシグヴァルドは口止めしていたが、アストリッドの口ぶりだと聖女殿の人たちも一部始終を見ていたのではないだろうか。なのにたかだか顔を腫らしただけのベルトルドを代わる代わる見に来るなんて、なんだかのんきそうだ。

 上層部は知っていても下は知らないとかそういうことなのだろうか。それにしたって上の方の緊張感は、全体に伝播しそうなものだが。

「ベル」




 ようやく聞き慣れた声が聞こえてきて、ほっとしてベルトルドは顔を上げた。ベルトルドもびっくりしたが、相手はもっと驚いたようだった。

「……っ! なんだその顔は‼︎」

 声にならない叫びをあげて、アストリッドとともに現れた男は、駆け寄ってくるとベルトルドの肩を掴む。そのまま前後に揺さぶろうとした男を、アストリッドが肩を掴んで静止する。




「フレッド先輩、揺さぶるのはやめたげて。殴られたんだったら首を痛めてる可能性があるから」

 ベルトルドとアストリッドの間で何度も目を往復させて、フレデリクが言葉にならない様子で口をぱくぱくさせた。

「どうしたのその顔? ベルも男の子だったんだなあ。友情は深まった?」

 頭の中でどんなストーリーを描いたのか、アストリッドはニヤニヤと笑った。




「単なるとばっちりだよ」

 むぅと唇を尖らせたベルトルドに、アストリッドはあららと苦笑する。

「それは災難だったね」

「おま……おまえたち、なんでそんなにのんきなんだ!」

 双子は目を見交わして、それからフレデリクに目を戻すと二人して小首を傾げる。




「まあ、今更騒いでも殴られる前には戻れませんし」

「男の子なんだから、ケンカのひとつくらいするでしょ」

 ねぇと再び顔を見交わした双子に、フレデリクは嫌そうに顔を歪めた。

「助けが必要なときは呼べと言ったはずだぞ」

「ええっと、でもどこにいるかわかりませんし」

 助けてもらった時はフレデリクが自主的に現れたのであって、ベルトルドが探したことはない。ましてやアストリッドと一緒にいるなんて思いもしなかった。ラウラの勘は少しだけ当たっていたらしい。




「先輩はどうして、聖女殿にいるんですか?」

 ただアストリッドの態度はやはりいつもと変わらず、ラウラの心配は取り越し苦労に思える。妹のことを横目で気にしつつフレデリクにそう問うと、彼は一瞬だけ苦い表情した。

「ディンケラ子爵のお供だ。都に帰ったとき、宰相閣下に昨日のことを報告するためにな」

「そうでしたか」




「おまえこそどうしてここに? おまえたちは仲が悪いんじゃないのか……?」

「私たちがですか? またどうして?」

「二人で話してるとこなんか、見かけたことなかったし、わざわざ別に暮らしてるんだろ。一緒にいるのも嫌なんじゃないのか?」

 そんなふうに思われてたのかと、ベルトルドは驚く。

「いえ、家庭の事情で別れて暮らしているだけで、仲が悪いなど思ったこともありませんが。妹が昨日家に戻らなかったと聞いたので、今日は侍女に頼まれてお弁当を持ってきただけです」

「侍女に頼まれた?」




 複雑な顔をしたフレデリクに頷いて、ベルトルドは袋の中の弁当をアストリッドに渡した。

「ラウラが心配してたよ」

「連絡はしたんだけど、悪かったね。ああ、そうだ、ベル。昔持ってた猫の人形、どこいったか覚えてる? あれ、近いうちに必要になりそうなんだ」

 アストリッドが急に言い出した内容に、ベルトルドはゆっくりと瞬いた。

 子どもの頃、祖父の部下に買ってもらった、()()()()()()()()()()()()()()()()

 アストリッドを見つめて、ベルトルドはうん、と頷く。




「わかった。準備しとくよ」

「人形?」

「猫のぬいぐるみですよ」

 フレデリクの問いかけに、ベルトルドが答えた。

「そんな可愛らしいものを持ってるんだな?」

「いいえ、ベルのですが」

 なんだか少し嬉しそうだったフレデリクの顔が、アストリッドの返答に、すんと真顔になった。双子を当分に見下ろして、首を傾げる。




「それでなにするつもりなんだ?」

「ベッテにあげようかと。気落ちが激しいようだから」

「そのへんで買えばいいだろ?」

「まあそれもいいですが、ベルの、特注なんですよ。結構大きい」

 腕を広げてサイズの表現したアストリッドは、ね、とベルトルドに同意を求める。まあ子供の頃には大きいように感じたが、今見ると、きっとそんなに大きくは無いだろうが、ベルトルドは話を合わせて頷いた。




「女の子って人形とか好きでしょう? 気がまぎれるかなと思ったんですが、ダメでしたか?」

 何故そこでフレデリクの許可が必要なのか、余人の目には奇異に映ることをわかっていないのか。彼はちょっと悩んで、見せてくれるならいいとアストリッドに鷹揚に頷いて見せた。

「ああ、あと、ラウラが()()()()()()()を気にしてたんだ」

「ウィッグって、前にベルトルドがつけてたやつか?」

「そうです。あれうちのメイドが大事にしてるんですよ。使ったあとに手入れしていないのを気にしててさ、アレ、どうしたっけ?」




 一つ一つに口を挟んでくるフレデリクに、アストリッドは頷いて、ベルトルドに向かって小首を傾げる。それが誰の手元にあるのか、彼女はよくわかっているはずだ。なのにわざわざ話題に出してくる意味は考えるまでもなくて、ベルトルドもなにも知らないふりで答える。

「シグヴァルド殿下に取られたんだ。取り返してくるよ。いつまでがいい?」

「そうだな……露払いまでにはラウラに渡してやってくれる?」

 わかったと応えたベルトルドに、アストリッドはフレデリクとともに戻っていった。

なかなかシグが出てきませんがもう少しお付き合いくださいませ

次のシグのとこはいちゃ甘になってる……はず!(笑)


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