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ニーズおいちゃんは物知り。~その2~

『……それにしても、ちまっこいの、3歳と言ったか? それより幼くないか?』


 え?


『体格も、話し方も、どうにもワシの知る3歳児より幼い。なのに受け答えや態度が妙に大人びておる。だから御使い様だと言われるのだぞ』


 あー……。

 アストロ、この(ひと)は信用しても大丈夫?


『うん。どこの誰より信用できるよ。念話で話す?』


 念話! おいちゃんともできるの!?


『おいちゃん、ラナとぼく、念話繋げてー』


『なんじゃ、お主もできように。まぁいい、繋ぐぞ』




 -----------------------------


『繋がったか?』


「うわっ!! 頭の中でおいちゃんの声がする!」


『うん! 大丈夫そう! ラナ、思考遮断しないと全部聞こえちゃうから気をつけてね』


「はぁ!? あっ! もう遅いかも!」


『ほぅ? 随分流暢に話せるな? それがお主か?』


「げっ! そうだった! あーっと、改めまして、ラナです」


『ラナ、で良いか?』


「はい、それでお願いします」


『やはり見た目と思考は剥離しとるな』


「……はい、実は……」




 他の世界で死んだ事、自力でこの世界に渡って来た事、界渡りしたせいで、魂に魔力が溜まりすぎて普通に生まれることが出来なかったので、子どもの姿を与えられて、天界? から落とされた所をアストロに保護してもらった事等、一通りを説明した。


『神に、地上で何かを成し遂げよ、とは?』


「言われていません。傷ついた魂を休めてね、とは言われましたけど……」


『ふむ。ならば御使い様とは言えないな。御使い様は使命を帯びて降臨なされる。それがないなら……稀人か? ワシがこの世に降りてから、初めての事だから何とも言えぬ』


「はぁ……神様にも言われました。他世界から自力でこの世界に辿り着く事なんて離れ業だと」


『ラナって凄いんだね!』


「凄くないよ。意識してここに来た訳じゃないもの。気がついたら森の中で、でっかいわんこが居て、次に神様に会って……。自分の事ながら荒唐無稽だわ」


『わんこじゃないってば』


『ふむ。しかし、3歳児にしては身体も言葉も幼いので、実はもっと幼いのではないか?』


「分かりません。そもそも3歳児位と言われただけなので……言葉は、多分アストロと念話? で会話ができるので、困ってなくて、鍛えられてないんだと思います」


『あぁ、それはあるだろう。声に出して話さねば、ずっとそのままだぞ?』


「それは困るぅ!! 練習します!」


『うむ、それもそうだが、街に入るのに幼子とグラシャだけでは難しいかもしれんぞ』


「えっ! 何で!?」


『そもそも森に隣接しとるので、魔物が入り込まないように門番が居る。不審者も排除されるからのう』


 がーーーーん!!

「街に行ってお買い物作戦終わった……」


『ぼくとラナは不審者じゃないよ』


『神樹の森で、グラシャが居るとはいえ、幼子がひとりで生きてるのが不審だ。そもそも貨幣はあるのか?』


「かへい? あぁ、お金はないけど、アストロが魔石なら売れるって」


『幼児が魔石を売るなんて事をしたら、ぼったくられるし、何なら拐われるぞ』


 ひぇ!?

「やっぱり詰んだーーー!! 悲しくなってきた……」

 じわり……ぽとり……くすん……


『ああああ、いや待て! 泣くな!』


「泣いてない。目から汗が出てるだけ……」

 ぐすぐす……


『鼻からも汗?』


『グラシャ……お主、もちーっとデリカシーを持て』


『あ、そのグラシャって呼び方変えて? ぼくはアストロって名前があるんだ!』

 ふんすっ!


『そういえばそうだったな。アストロな』


『うんっ!』


「……グラシャってなに?」

 ずびっ


『種族名だな。アストロはグラシャ=ラボラスという種族だ』


「あぁ個体名がないから種族名で呼ぶのね」


『魔力で見るからねー。でも呼ぶ時は種族名だね』


「ふうん……。はー、あと何年待ったら街に行けるんだろう? 不審者に見えない年齢はいくつくらいなの?」


『そうさなぁ、15歳、成人していれば大丈夫だろう。もしくは大人と一緒になら、だな』


「そんな知り合い居ないし……、はー、後10年以上は無理なのか……」


『……人恋しいのか?』


「いえ、それはアストロが居るから大丈夫。食材や道具で欲しい物があって、それを探しに行きたかったんです」


『ラナっ! ぼくも! ぼくもラナと一緒なら寂しくないよ!』

 スリスリぺろぺろ


「あはは! くすぐったいよ!」


『食材……? 神樹の森にない物はないぞ?』


「え?」


『そもそも、街の食材は全て神樹の森が賄っておる。森の(ほとり)で採取する種類が全てだ。街で育ててるのもあるがの』


「なんですと!?」


『もしくは、願いの祠で願うか、だな。工程が複雑なものは無理だが、そうでなければ、ほぼできる。それを広げて作るも、人次第だな』


「は? いやでも、畑仕事はできないから、街で買おうとしたんですけど……」


『ふむ? ちなみに、願うのはなんだ?』


「沢山あるけど、最優先はお米と小麦粉と胡椒!」


『どれ……小麦はあるな。おこめとこしょう、とやらは見つからんので、願いの祠で願うといい。小麦粉とやらは、小麦を挽いたものであろ?』


「そうです!」


『挽くのは魔法でできるから、小麦があれば良いか?』


「はい! やったー!」


 空に小さな魔法陣が描かれたと思ったら、どすん! と大きな麻袋が落ちてきた。


「ひょっ!?」


『小麦だ。持って行くといい』


「は?」


 ちゃぷちゃぷしてた身体を乾かして、麻袋を開けると、まだ籾殻が着いたままの小麦がパンパンに入っていた。


「え、凄い!」


『願いの祠は神樹の森に数箇所ある。残念ながら全てが叶うわけではないが、願ってみるのも良いだろう』


「分かりました!」


『祠を探さないとだね! 明日から探そうか』


「うん!」


『ワシが教えてやれたらいいのだが、禁忌なのでな』


「大丈夫です。ありがとうございます!」


『そうだ、これをやろう』


 ふわりと目の前に現れた、これはペンダントトップ?


『革紐をつけて首から下げておくといい。ワシと繋がる』


「ありがとうございます! またお話し聞かせて下さい」


『ではな』





 -----------------------------


 大きな身体をお湯からざぶりと出して、なんの抵抗も受けていないようにふわりと浮かせて温泉から出ると、今までの大きさよりも、更に大きくなって飛び去って行ったニーズおいちゃん。


「しゅっごーい……」


『おいちゃんに会うのは稀だから、運が良かったね』


「ほへー……」


『ラナ、肌がポツポツしてる』


「え? あっ! とりはや!」


 幼子の身体は暑さ寒さに鈍感だ!




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