ニーズおいちゃんは物知り。~その1~
分かってる。
自分の顔がへにょへにょになってるのは自覚してる。
見てないけど。
だけどね?
『……ちまっこいの、顔がだらしないぞ』
と、言われるのは心外です!
『お主、歳はいくつだ?』
「……たんたい」
指を三本立てる。
幼児語は聞き取りにくいからね。
『街の幼児とは、だいぶ違うの』
ぎっくーーん!
って、え、街の様子を知ってるの?
『ニーズは物知りなんだよ』
「ほへー!」
街か。
行ってみたいねー。
『ニーズ、いつか街に行きたいんだけど、どこの街がオススメ?』
『ちまっこいのと? そうさなぁ。川向うじゃなければ比較的穏やかではあるんだが、グラシャ連れならガイズナ国かレイズサイズ国なら大丈夫だろう、が、まさか今の体躯で行くのか?』
『ううん、流石に小型化するよ。人を驚かせたい訳じゃないし』
『それなら大丈夫だろう。しかし、街に行くのは、ちまっこいのを送り届ける為か?』
『え? ラナと離れる気はないよ? 世界が認めた従魔関係だもの』
『ほぅ! ワールドインビテーションを聞いたのか?』
『そうだよ! えっへん!』
『それはまた稀な事だの。よっぽど相性が良かったんだろう』
稀なのか! へぇー!
ニーズおいちゃん曰く、従魔契約をしてもワールドインビテーションが流れる事は稀で、大多数は聞こえないらしい。
アストロとは名付けで契約が結ばれたが、本来は魔石の媒体を使ったり、スクロールと呼ばれる魔法陣を使ったりするらしい。
それに、名付けだけで従魔契約が結べるなら、単なるペットとして飼われてる魔物とも契約されてしまうので、普通はアリエナイんだと。
知らんがな。
『なんと言うか……規格外だな』
まじまじと見られて、大変居心地がよろしくない。
笑っとこ。
えへへ♡
『胡散臭い』
「ちどい!」
ぷんすこ!
『ああ! いやいや! お主からただならぬ気配が感じられただけだ、気を悪くするな! がははははは!』
……鋭いってヤダわ。
ぷんっ!
『それでな、川向うの国には行くなよ。今は穏やかではない』
川? さっき反対側に降りたけど……?
『あの川は支流だから。本流は別にあるよ』
ほほぅ。
まぁ川幅5m位だったしな。
『ちーっと不穏な空気が流れておる。まぁ向こうに渡るのは困難だから大丈夫だろう』
『ぼく飛べるけど、それでも困難なの?』
『うむ。ワシ位なら行けなくもないが、魔障壁があるようでな。転移を使わねば難しいと思うぞ』
転移! こりゃまたファンタジー!
『そこのちまっこいのは見たところ加護持ちであろ?』
カゴ? フルーツ入れたりするのは持ってるけど。
『ラナ、そのカゴじゃない。ひゃははは!』
え?
『天上に住まう神の加護だ』
ん? ……あぁ! 加護! え? 加護持ってんの? 誰が?
『自覚なし、か』
自覚も何も、そんな御大層なのは見えませんけど?
『そもそも、お主、どこから来た?』
ぎっくーーん!
『空からだよ!』
ちょ!
『御使い様だと思うんだけど、違うって言うんだよ?』
『落ちてきたのは、お主か』
バレテーラ! 何で!?
『ワシは”見渡す”能力を授かっとるでな。大体の事は見えとるよ』
え、この竜、もしかして凄い人!?
『ニーズはユグドラシルの守護竜だからねー。この神樹の森全部が住まいだよ』
なんと!! そんなに凄い人だったのか!
やだ、そんな人に向かってぷんすかしちゃったわ!
『がはははは! そんな畏まらんでも良い! あまり知られてはいないしの。まぁグラシャも、その一端ではあるのだぞ?』
「えっ!? あしゅとよも!?」
『ぼくはまだだよ。成体になったばかりだし』
『そうさなぁ。いずれ、もっと時が流れてからになるだろうな』
そうなのか。
時が流れてからって、どれだけ先なんだろう……。
『ぼくはラナと、ずっとずーっと一緒に居るよ』
「……うん」
『あれ? ラナ? 何か汗凄いし、真っ赤だけど、大丈夫?』
「え? あ……」
のーぼーせーたー!
アストロがお湯の外に出してくれて、ついでに大きな葉っぱの上にお水を出してくれた。
ごきゅごきゅと一気飲みでい!
「ぷはぁ!」
と、砂利の上に大の字で転がる。
水を飲み干した後の葉っぱを大事なとこに乗せて隠す。
気遣いができるわんこだ。
とはいえ、丈夫に作られた身体なので、すぐに復活!
今度は腰まででちゃぷちゃぷ。
『ちまっこいの、幼児なのにだいぶ大人しいの』
『あらさーなんだもんね?』
ぐえっほ!! ゴホゴホ! ちょ!
バラさないの!
『そうなの? 分かった!』
『……何やら理由ありなんだな?』
「おとめのひみちゅ!」
『はぁ? ……がはははは! 分かった、詮索はしないでおこう』
空から落ちてきたって事が知られてる事にすら危機感を覚えるよ!
だってオカシイもんね!?
普通、人は空から落ちないからね!?
『あー、それで街へ行くなら、その魔力を引っ込めないと難しいぞ?』
「え?」
あ、ダダ漏れまんまだった。
『人は漏れるほどの魔力は持ってないからな』
マジか!
『マジだ!』
『なんじゃその、まじだ、ってのは。呪いの一種か?』
『本当か? って意味なんだって!』
『ほぅ、初めて聞くな。うむ、まじだ』
おいちゃんも新しいモン好きなの!?
『おいちゃん?』
あっ、勝手においちゃんと呼んでたのがバレた。
……おいちゃん=おじさんだよ。
『ニーズおいちゃん!』
『は? おいちゃん?』
アストロぉぉぉぉぉぉ!!!
『ニーズおじさん、ニーズおいちゃん!』
『おいちゃん……。ま、まぁ、2人ならそう呼んでも、いいぞ』
アストロの能天気さに、頭のてっぺんに届かない手で頭を抱える。
ユグドラシルの守護竜に、おいちゃん……。
ニーズおいちゃんが優しい竜で良かった……。




