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おいしい食卓
「おかえりなさい、みっくん。早かったわね」
にっこりと笑う益田玲子さん。
彼女は俺の母親の従妹であり、天空の母親である。
「玲子さん、どうしたの?」
「驚かせちゃった? 勝手口から入ったのよ。今日は天空が遅くなるから私が夕食を作るわ」
「そうなんだ。有難うございます」
「なあに? かしこまっちゃって。台所を借りて我が家の食事も一緒に作ってるんだからお互い様よ」
玲子さんはテキパキと料理を作っていく。
料理センスのない俺が言うのもなんだが、天空より手際よく見える。
実際いつもより30分くらい早く食事が出来上がった。
「うんまい!」
温かいフリカッセと香ばしいフラムクーヘンは絶品だった。
どちらもドイツ料理でフリカッセは鶏肉のシチュー、フラムクーヘンはピザのような料理だ。
玲子さんは留学経験が有ってそこで習ったのだ。
「こんなの毎日食べられたら幸せだなあ」
「食べられるわよ」
「?」
「私が天空に教えるから、そうしたらあの子みっくんの為に作るわよ……愛を込めてね」
「……」
玲子さんの微笑みの奥に何かを感じて俺は固まった。